<明治安田J3:鳥取0-5今治>◇10日◇第36節◇Axis
元日本代表監督の岡田武史氏(68=日本協会副会長)がオーナーのFC今治が、初のJ2昇格を決めた。敵地でガイナーレ鳥取に5-0で完勝し、勝ち点67。2試合を残して3位カターレ富山との勝ち点差を9に広げ、自動昇格圏の2位以内を確定させた。2度のW杯指揮を経て14年に経営参画してから10年。国内5部相当の四国リーグからJFL、J3と駆け上がり、W杯フランス大会で共闘した教え子の服部年宏監督(51)とともに目標の「J1で優勝争い」へ前進した。
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岡ちゃん今治がJ2に到達した。現地で見届けた岡田会長は「ホッとしたよ」と思わず笑顔。四国リーグ2年、JFL3年、J3は5年を要し「甘くなかったけど、苦労した分、進歩した」と敵地に詰めかけた約500人と喜んだ。低予算でブラジルから22年に獲得し、瀬戸内海で育てた26歳のFWビニシウスがハットトリック。過去1分け3敗だったアウェー鳥取の鬼門を破り、次の扉を開いた。
日本に初のW杯切符をもたらした98年フランス大会に、DFで招集した教え子の服部氏を今季、監督に起用した。開幕4連勝…しかし4~5月に4連敗。一時は11位まで沈んだ。今季も無理か…。不安がよぎった中、岡田氏は経営の傍ら、練習にも顔を出した。美しく崩す「岡田メソッド」の理想はあっても「基礎が足りなければ勝てない」と助言。ボール争奪など原点から見直させ、昇格後「服部監督には誰よりも聞く勇気と決断力があった。立て直してくれた」と称賛した。
14年、今治の運営会社から株式51%を取得。横浜F・マリノス監督時代にJリーグ2連覇、代表では10年W杯南アフリカ大会で16強入りした指導者から、クラブ経営者に転じた。15年に宣言した目標「25年にJ1で優勝争い」には間に合わなかったが「23年にJ1基準スタジアム建設」は実現。20億円の借り入れも含めて自前で総工費40億円を調達した新本拠は、直近10戦負けなし(8勝2分け)と聖地化し、J2初昇格の力にもなった。
社員6人、縁のない港町で庭木の枝切りなど、ご用聞きから始めて認知してもらい、現在は社員35人、コーチ45人、選手36人を抱える。「食わせていく義務がある。やめてやる、と開き直れる代表監督と違う重圧」と闘った10年間。68歳になったが、今春開校のFC今治高で学園長も兼ねるなど行動力は衰えない。地方創生でJ2へ「より資金格差が顕著になる中、どう1年目からJ1昇格を狙うか」。夢があるから、すぐ次を考えられる。【木下淳】
◆FC今治 1976年(昭51)に大西サッカークラブとして設立。12年にJ3愛媛の下部組織から独立し、現名称に。14年10月、岡田氏が運営会社「今治.夢スポーツ」の株式51%を取得してオーナーになる。16年にJリーグ百年構想クラブ。かつては駒野友一や橋本英郎も在籍した。クラブカラーは青。所在地は愛媛県今治市高橋ふれあいの丘1の3。矢野将文社長。