<明治安田J1:町田3-0東京>◇9日◇第36節◇国立
FC町田ゼルビアがFC東京に3-0と完勝し、優勝へわずかな望みをつないだ。黒田剛監督が手塩にかける堅守がよみがえり、5試合ぶりの無失点。6試合ぶりの白星となった。MF白崎凌兵、FWオ・セフン、相馬勇紀の得点で圧倒した。今季4度目となる国立開催で初勝利を挙げ、翌日に試合を控える首位神戸に勝ち点4差、2位広島に同2差とプレッシャーをかけた。
◇ ◇
迷いが消えた。果敢にボールを追い、セカンドボールを回収して攻撃につなげた。前半15分にエリキのアシストから白崎が先制点。後半4分には相馬のクロスを白崎がスライディングで折り返しオ・セフンが押し込んだ。3点目は夏の電撃移籍後、結果が出せていなかった相馬がCKから直接決めた。9試合目にして町田での初得点だった。
9月14日のアビスパ福岡戦以来、6試合ぶりの勝利とマルチ得点。鬱積(うっせき)したものを一掃した。黒田監督は「果敢にプレーしている姿が目に焼き付く。これぞ町田の魂なんだというのを身をもって表現してくれた」。久しぶりに心から笑った。
J2から昇格1年目、異端の挑戦者。徹底した堅守速攻で今季リーグの中心にいた。怖いもの知らず。だが首位に立ち、追われる立場となると次第に守りに入った。9月21日のホーム北海道コンサドーレ札幌戦から勝てないトンネルに突入。大一番と目したサンフレッチェ広島との首位決戦に完敗、続く川崎フロンターレ戦は1-4という惨敗。自信は揺らいだ。失われゆくチャレンジャー精神。柏と辛うじて土壇場のPKで引き分け、そして最下位の鳥栖に敗れたところで、ようやく目が覚めた。
この1週間は非公開練習で守備を見直した。一貫した4バックからFC東京戦は3バックに変更し、3-1-4-2と中盤の並びも変えた。相手を囲い込み、ボールを奪い切ることに執着した。「点が取れない、失ったらどうしよう、そんな個人の迷いがあった。縮こまっていた」と昌子が言う。
サッカーとはメンタルが左右するスポーツであり、チームとはまさに生きものということだ。優勝の可能性が一気に下がり、失うものはなくなった。吹っ切れた。
「可能性はゼロじゃない。それが1%かもしれないけど、プロである以上あきらめてはいけない」
鹿島で優勝を知る主将はそう気勢を上げた。【佐藤隆志】