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ビジネスより功績を優先 頂上決戦で感心した米大リーグの始球式の人選/寺尾で候


ワールドシリーズ第5戦で、松井秀喜が始球式を務めました。この試合では、1981年以来43年ぶりとなるヤンキースとドジャースの対決が行われました。試合前の始球式では、メジャーリーグの歴史と伝統を重んじる姿勢が強調され、過去の名選手たちが登場しました。特に、1981年のワールドシリーズで活躍したスティーブ・イエーガー捕手とオーレル・ハーシュハイザー投手の姿が印象的でした。始球式では、ドジャースのフェルナンド・バレンズエラに敬意を表して彼の番号「34」が追悼され、感動的な演出がなされました。このような伝統ある始球式は、日本のプロ野球でも参考にされるべき点が多いとされています。日本では、スポンサーや広告主が始球式を行うことが多い中、このような歴史や功績を尊重する姿勢はファンに好評です。

ワールドシリーズ第5戦 ヤンキース対ドジャース 始球式を務める松井氏(撮影・菅敏)

<寺尾で候>

日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

   ◇   ◇   ◇

米大リーグのWシリーズの全試合を民放がライブで中継したのは異例のことだった。フジテレビが地上波で生放送した。朝はメジャーリーグ、夜は日本シリーズで“野球漬け”の日々だった。

ロサンゼルス・ドジャース対ニューヨーク・ヤンキースは素晴らしい戦いだった。このままメジャーリーグが“日常”になっていけば、日本球界を取り巻く状況を含めた立ち位置はさらに難しくなってくる。

ドジャース大谷翔平の「40本塁打&40盗塁」を現場で見たのは夏だったが、あの勢いのまま世界一に上り詰めた感が強い。大谷だけが取り上げられがちだが、東西の名門対決らしいシリーズでもあった。

両球団のWシリーズは1981年以来43年ぶり。ドジャースは攻守にわたって随所に“ドジャース戦法”が生きていたし、ヤンキースの所作からは伝統を感じずにはいられなかった。

今回の頂上決戦で感心した一つは、始球式に登場する大リーグの人選だ。長い歴史を紡いできた先人に畏敬の念を示し、いかに伝統を重んじているかが伝わってきた。

それは初戦から感動的だった。10月22日にはドジャースの名投手フェルナンド・バレンズエラが死去していた。43年前の対ヤンキースのWシリーズで、世界一に貢献したメキシコの英雄だ。

そのマウンドに現れたのが、同じ81年の舞台でWシリーズMVPのスティーブ・イエーガ捕手、88年アスレチックスとのWシリーズでMVPに輝いたオーレル・ハーシュハイザー投手だ。

日米野球の平和台球場で、南海ホークス佐々木誠がハーシュハイザーから右翼席にライナーで本塁打を打ち込んだ光景を思い出した。佐々木は主力に、ハーシュハイザーもサイヤング賞受賞の名投手になった。

今回の始球式で登場したハーシュハイザーは、ボールを投げるのかと思ったら、バレンズエラの永久欠番になった「34」がマウンドにペイントされたところに埋め込むようにささげるのだった。

始球式の歴史は、明治時代にまでさかのぼる。日本では1908年(明41)に早大創設者の大隈重信が、早大対大リーグ選抜と親善試合を行った際に投げたのが始まりのようだ。

米大リーグでは、2年後の1910年、現職で第27代大統領ウィリアム・ハワード・タフトが、ワシントン・セネターズのアスレチックス戦で始球式を行ったのが最初とされる。

そして、ニューヨークの始球式では、ヤンキース一筋で、通算3465安打を記録したデレク・ジーター遊撃手、ヤンキース黄金期を支えたポール・オニール外野手らが続いた。

第5戦に登場したのは09年WシリーズでMVPの松井秀喜だった。やはりゴジラにはニューヨークがよく似合う。とにかくレジェンドが登場するさすがの演出だった。

日本のレギュラーシーズンの始球式は、スポンサー、広告主、タレント、会社の社長さん、宣伝するための出演がほとんどだ。大リーグがビジネスより功績を優先するのは、野球界を支えてきたOBへの敬意の証しだ。

そういえば、日本シリーズ初戦の始球式に登場したのが、1998年に監督で横浜を日本一に導いた権藤博。これは良かった。お立ち台に立つボギャブラリーに乏しい選手風にいえばサイコーで~す!

試合前の始球式を楽しみにしているファンは多い。球団からネットでリリースされる大物の登場予告をチェックしている。逆にがっかりさせられる日も多いという。メジャーから見習うべき点はありそうだ。

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