<日本生命セ・パ交流戦:ソフトバンク1-4阪神>◇16日◇みずほペイペイドーム
アッパレだ。プロ3年目の阪神前川右京外野手(21)が自身初のグランドスラムを放った。
「日本生命セ・パ交流戦」のソフトバンク戦で「5番左翼」で出場。初回に右翼へ今季2号となる放物線を描いた。高卒3年目以内の満塁本塁打は球団では92年新庄剛志以来。「父の日」の一戦で、連敗を止める特大の決勝アーチだ。チームは首位広島が敗れたため、ゲーム差は3に縮まり、1日で2位に再浮上した。
◇ ◇ ◇
前川はバットを美しく宙へと投げ、そのまま右腕を突き上げた。その間に振り切った打球はあっという間に右翼席に吸い込まれた。これがプロ初の満塁弾。中野、渡辺、佐藤輝。笑顔の先輩たちに迎えられて生還すると、21歳の若武者は白い歯をこぼした。
「最近、先制点を取れていなかったので、何としても点取ろうと思って打席に入りました。打った瞬間、いったと思ったのでうれしかったです」
完ぺきだった。初回、1死から四死球で一、二塁の好機。4番佐藤輝が右前打で続き、満塁の好機を迎えた。「落ち着け、落ち着けと思いながら、自分でメンタルコントロールできました」。ソフトバンク先発石川の3球目、147キロ直球をフルスイングだ。
5月31日ロッテ戦(ZOZOマリン)でのプロ初本塁打以来、出場13試合ぶりの2号。球団の高卒3年目以内の満塁本塁打は、現日本ハム監督の92年新庄剛志以来32年ぶりとなった。「高校生以来かな」という満塁アーチが決勝打。岡田彰布監督(66)も成長株の活躍に「今がレギュラーポジション取る、そういう過程じゃないか?」と目を細めた。
家族の節目に快音を響かせる孝行息子だ。父、栄二さん(52)の誕生日だった5月16日の中日戦(バンテリンドーム)では安打を放った。この日の「父の日」もきっちり結果を残し、お立ち台では「母の日はプレゼント渡したんですけど、父の日は…渡していないので、これをプレゼントにしたい」とニヤリ。さらに試合後、こまめに連絡をくれるという父へ「もうちょっとメリハリをつけて連絡してほしいです」とまさかの注文で笑いまで誘った。
チームの連敗は2で止まり、パ・リーグ首位独走中のソフトバンク相手に3タテを阻止。交流戦最終戦となる18日の日本ハム戦へ向け、甲子園に戻る。スターへの階段を上る背番号58は「今日のことは忘れて、またセンター中心に低い打球を打っていきたい」と気を引き締める。これからも勝利に導く一打を追求し続ける。【村松万里子】