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「神様からの授かりもの」=小川スカウト部長が英断―千賀滉大、豪腕の原点(下)


 2010年秋。ソフトバンクが愛知・蒲郡高の右腕、千賀滉大投手の調査に本腰を入れたのは、ドラフト会議を約1カ月後に控えた時期だ。指名候補は固まっていたが、当時の小川一夫スカウト部長(現ゼネラルマネジャー補佐)が動いた。長い付き合いのある野球用品店経営の西川正二さん(故人)にもらった千賀の情報。「アマ球界には、まれにプロのスカウトレベルで選手を評価できる人がいる。だから(西川さんの)電話を無視できなかった」。信頼できる情報筋だった。  スカウト3人を蒲郡に派遣。練習していた千賀の映像を撮影するなどし、それを確認した小川さんに迷いはなかった。「見た瞬間に素晴らしい才能だと思った。もし愛知大会を見に行っていたら、(その時点で)獲得を決めていた。神様からの授かりもの、と言えた」  翌年からの3軍制導入を視野に、育成選手を多く指名するという球団の方針とも合致。「見る人が見れば、千賀はすごいと分かる。そういう人の目に触れていなかっただけ」と小川さん。ドラフト当日、育成4位で千賀の名前が呼ばれた。  先見の明があった西川さんと、それを信じた小川さんの英断。2人の縁があって、隠れていた逸材候補がプロの世界に導かれた。やがて球界屈指の剛腕へと成長。「億を稼ぐ投手」になった。そう予言していた西川さんは千賀が入団1年目の11年秋、63歳の若さで他界。活躍を見ることも、対面すらも果たせなかった。  自ら発掘した無名の高校生が今、メジャーで羽ばたこうとしている。天国で西川さんは何を思うのか。店を継いでいる長男の史時さんが想像する。「『俺の言った通りやろ』って言っていますね。でも、さすがにメジャーまでは想像できなかったと思う」。育成出身初の大リーガー。出発点には、確かな眼力を持つ「恩人」の存在があった。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕2018年のフレッシュオールスターゲームでコーチを務めたソフトバンク2軍監督(当時)の小川一夫さん。スカウト部長時代に千賀滉大投手の獲得を指揮した=同年7月、青森・弘前はるか夢球場 〔写真説明〕プロ野球交流戦で力投するソフトバンクの千賀滉大投手=6月10日、福岡ペイペイドーム
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