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春節にもう服は新調しない シンガポールで古着交換の新ビジネス

  • 2021年02月18日 09:43:00

【シンガポールAFP=時事】シンガポールの技術系企業に勤めるスーアン・チュンさん(35)は、以前は春節(旧正月)の15日間はずっと日替わりで新しい服を着て出社していた。この期間に服を新調してスタートを切る慣習があるためだ。(写真はシンガポールの「ファッション・パルピット」で古着を試着するスーアン・チュンさん)
 だが、今年は古着と決めている。店で自分の古着と交換して入手した。チュンさんのお気に入りの「ファッション・パルピット」では、ファストファッション(最新のデザインで大量販売する低価格の衣料品)が環境に与える影響を懸念している顧客向けのサービスを提供している。
 国連環境計画(UNEP)によると、ファッション産業は全世界の炭素排出量の最大1割を占めており、衣類は製造から輸送、消費者による洗濯まで、さまざまな過程で炭素を排出している。
 チュンさんが最近、ファッション・パルピットに持ち込んだのはワンピース数着と、そろいのブラウスとスカートだ。店のスタッフが査定して、チュンさんのアカウントにポイントとして還元する。そのポイントを使ってチュンさんは17点を手に入れた。そのうちの1着、黄色と緑の服は春節の初日に着る。「縁起のいいパイナップル」に似ているからだという。パイナップルは繁栄の象徴と見なされ、シンガポールでは春節の贈り物や飾り物の定番だ。
 「子どものときから親に、春節になると服をすべて新調するように言われて育ち、服を大量消費するのが当たり前のようになっていた」とAFPに語ったチュンさん。以前の自分なら、春節に親族の家を訪問する予定がなくても15日分の服を確実に一新していたはずだと話す。
 「自分が持っている服の半分以上は、一度も袖を通したことがないものばかりだった。それでも着るものがないと思っていた」と振り返る。「以前の私の消費習慣は常軌を逸していました」
 古着の交換サービスを知ったのは5年前。今では、「自分にとって初めてのものであれば、それで十分」だと言う。

■「古着は不潔」から「古着はクール」に
 ファッション・パルピットでは、年会費として599シンガポール・ドル(約4万8000円)を払えば、服は何度でも交換できる。現在、チュンさんが持っている服の80%程度は同店で入手したものだ。
 「古着交換のおかげで私のファッションはカメレオンみたいにころころ変わるようになったけれど、環境に配慮できるようにもなった」
 当局によると、小国シンガポールが2019年に排出した繊維製品や皮革の廃棄物は16万8千トンに及ぶ。ボーイング747型機の400機分を超える重さだ。
 フィリピン人服飾デザイナー、レイ・パディット氏がファッション・パルピットを設立したのはほぼ3年前。自分の業界が環境に与える影響と縫製作業者の劣悪な待遇を知ってからだ。
 「シンガポールでの問題は、過剰消費と廃棄物」と同氏はAFPに語った。
 「私たちが提供したいのは、ドレスアップをしながら、衣服を通して自己表現もできる場。でもそうすることで、地球も懐もいためてほしくない」
 ファッション・パルピットの会員は現在1500人を超え、事業も黒字になってきた。会員向けのワークショップでは、古着の繕い方やアップサイクル(価値を付加して再利用)する方法も教えている。扱っている商品は、大衆向けのカジュアルな衣服から、ハイエンドのプラダのバッグやクリスチャン・ルブタンの靴までさまざまだ。
 シンガポールでは、こうした常設店以外に単発の古着交換会やボランティアによる月1度の交換の集いも開かれている。
 だが裕福な都市国家シンガポールでは、古着業界は生まれたばかりで、新しい服を買うのではなく交換するよう世論を動かすのはまだ難しい。古着を扱う店は、アジアでは欧米ほどの人気はなく、誰が着ていたか分からない服は災いをもたらすという迷信を信じるか、不衛生だと考える人も多い。
 それでも、環境に対する意識が高まり、ソーシャルメディアを通じて商品を販売する新しいリサイクルショップがはやるなど、シンガポール人の消費傾向は変わってきたとパディット氏は指摘する。
 「古着についての認識がだんだん変化してきている」とパディット氏は言う。「古着は汚くもないし、いまひとつの商品でもない。クールなものなんです」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/02/18-09:43)
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