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FRBは2024年中に2回の利下げを実施する可能性があるか?


※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • ディスインフレの進展:米国のディスインフレの更なる進展を示唆するより多くのデータが発表された―これは7-9月期に、FRBによる利下げが行われることを意味すると考えられる
  • 決算シーズン:全体的に前向きな決算シーズンになるとみられる。S&P500種指数構成企業は、2022年1-3月期以降で最も高い前年同期比利益成長率を達成すると予想される
  • 経済イニシアチブ:英国労働党新政権は、グリーン投資とインフラ開発支援のため、数十億ポンドの国家ウェルスファンドの設置を発表

米国のディスインフレがFRBによる7-9月期の利下げにつながり得る

米国経済、特に消費の弱含みを示唆する更なる兆候

銀行を皮切りに、4-6月期の決算シーズンが開始

英国新政権が経済支援のイニシアチブを開始

では、これは投資家にとって何を意味するのか?

今週の注目材料

米国のインフレに関する最近のデータからは-不完全ながらも―ディスインフレのプロセスが勢いを増している様子が見て取れます。私は、米連邦準備制度理事会(FRB)が7-9月期中に利下げを実施すると予想しており、2024年中に1回より多くの利下げが実施される余地があると考えています。しかしそれは、今週投資家の関心を集めている数多くのトピックの1つに過ぎません。

米国のディスインフレがFRBによる7-9月期の利下げにつながり得る

先週は、米国のディスインフレの進展を示す更に多くのデータが発表されました―これは、FRBによる利下げ実施が早まる可能性があることを意味すると私は考えています。

6月の米消費者物価指数(CPI)は前月比で0.1%低下、前年同月比で3%上昇、コアCPIは前月比で0.1%上昇、前年同月比で3.3%上昇し、予想を下回りました1 。これは非常に大きな進展と言えます(2023年6月のコアCPIは前年同月比で4.8%上昇 しました)2 。インフレ率はFRBの目標値の2%には達していないものの、それに向けてかなり急速に推移しています。加えて、米生産者物価指数(PPI)は前月比で0.2%上昇、前年同月比で2.6%上昇、コアPPIは前月比で0.4%上昇、前年同月比で3%上昇しました3

このデータを基にして概算すると、来月のコア個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率は前年同月比で2.6%前後を維持する可能性が高いでしょう。これは、FRBが今年1回のみの利下げを見込むとした6月の「ドットプロット」(FOMCメンバーによる金利予測分布図)に盛り込まれた、2024年末のPCE価格指数の予想上昇率を下回っています。私はこのことは、2024年中に1回より多くの利下げが実施される余地があることを示唆しているとみています。またこれが、6月の米雇用統計で、平均時給がより穏やかな伸びを示した後のデータである点に留意する必要があります。

FRBにとって考慮すべきもう1つの重要な要素は、消費者のインフレ期待です。7月のミシガン大学消費者インフレ期待(速報値)によれば、インフレ期待は低下を続けており、明らかによくアンカー(安定的に維持)されています。1年先のインフレ期待は2.9%に低下し、5年先のインフレ期待も低下しました4 。FRBが目標とする水準には届いていませんが、歴史的に見れば正常な水準にあると私は考えています。例えば1年先のインフレ期待について言えば、20年前の2004年7月は3%、10年前の2014年7月は3.3%、5年前の2019年7月は2.6%でした5

常々申し上げているように、ディスインフレの道のりは不完全であり、全てのデータがディスインフレのシナリオに沿うわけではありません。1つ懸念されるのは、コンテナ輸送運賃です。40フィートのコンテナの輸送コストを追跡するDrewryの世界コンテナ運賃指数(WCI)の総合指数は、ここ1年で劇的に上昇しました。足元では5,901ドルで、2023年7月上旬の1,474ドルから上昇しました。これは2021年9月の10,377ドルというパンデミック時のピークは大きく下回るものの、それでも2019年の平均レート1,420ドルと比べて315%も高い水準です6 。これは、紅海での紛争、港湾の生産性低下、コンテナ供給の減少など、いくつかの異なる要因によって引き起こされた模様です。

米国経済、特に消費の弱含みを示唆する更なる兆候

米国の失業率が1月の3.7%から6月には4.1%へと大幅に上昇しただけでなく、ミシガン大学消費者調査における消費者センチメントが更に悪化し、7月には66.0と4ヵ月連続での低下となりました。これは、2023年11月以来で最も低い水準です7 。注目に値するのは、所得水準の下位3分の1に属する消費者が最も痛みを感じているという点であり、この層のセンチメントは、中位3分の1に属する消費者よりも著しく低くなっています。

各企業の決算説明会からは、消費が弱含んでいることが示唆されています。例えば、ペプシコのラモン・ラガルタCEOは、「米国では、一部の消費者が明らかにより厳しい状況に置かれている…」と述べました8

銀行を皮切りに、4-6月期の決算シーズンが開始

まだ始まったばかりではありますが、私は、全体的に前向きな決算シーズンになるとみています。S&P500種指数構成企業の4-6月期の利益成長率は9.3%と予想されており、実現すれば、2022年1-3月期以降で最も高い前年同期比利益成長率となります9 。また、4-6月期に行われた業績下方修正も、通常この期間に行われる下方修正の水準に比べれば小さいものでした。

主に銀行を皮切りに、決算報告が開始されています。預金を維持・獲得する上でより高い金利を支払わねばならなくなったことから、銀行の純金利収入は悪化しました。私は、この状況が続くのではないかと予想しています。また銀行の貸倒引当金は増えていますが、これは今後、更なる逆風を予想していることの表れと考えられます。

英国新政権が経済支援のイニシアチブを開始

英国労働党新政権は、経済成長への注力をすぐさま示すため、民間投資を大幅に呼び込むことを目標に掲げて、多額の公的資金を投入した「英国戦略的開発ソブリン・ウェルス・ファンド」を設置しました。

この数十億ポンドの国家ウェルスファンドの目的は、企業投資を通じて英国経済を成長させることです。政府は港湾、製造業、再生可能エネルギーなどの分野で「直ちに」投資が行えるよう、既に73億ポンドの資金を割り当てました。

これは、私たちが2024年後期のグローバル市場見通しで指摘した大きなトレンド―特定の産業や経済活動に的を絞ることで経済を形作る産業政策の活用―の一環と言えます。国際通貨基金(IMF)が説明しているように、産業政策への関心が高まっている背景には、各国政府が「領土、資源、新技術の主導権をめぐる地政学的な緊張や対立の激化と相まった…複合的な危機の影響に対処するための効果的な手段や戦略」を求めていることや、「気候変動の緩和・適応戦略に対する、まだ応えられていない一般からの要求」に応えようとしていることなどがあると考えられます10

以上をまとめると、経済及び国家安全保障に関する懸念から、各国は産業政策を手段として用いる可能性がはるかに高まっていますが、私はこれは、成長をサポートし経済を形作る上で、関税の活用よりもはるかに好ましく、より効果的だと考えています。米国が産業政策を活用して、半導体製造施設の建設支援を行っているのを見ればよく分かるでしょう。

これは投資家にとって何を意味するのか?

ディスインフレ・トレンドを無視してはいけません。公表されたデータを見る限り、私は、FRBは間違いなく7-9月期中に利下げを実施するだろうとみています。その見方に変わりはありませんし、データがより説得力を増している今となっては尚更です。中小型株やシクリカル株は、今年後半の景気の再加速を織り込むと予想されます。

米ドル安が進むと予想され、外国株には追い風となるでしょう。私は特に、英国株、カナダ株、新興国株について前向きに見ています(欧州株のボラティリティは買いの機会をもたらす可能性があります)。いずれもバリュエーションが魅力的であり、より大きなシクリカル・エクスポージャーを持つ上、利下げというカタリスト(誘因)が控えています。

そして、グローバルな緩和が加速しそうな今、高めの債券利回りを確保し、投資適格債や地方債へのエクスポージャーを増やすことが理に適うのではないかと私は考えています。

ただし私は、バリュー株や小型株、非米国株など他の分野に資金を振り向けるために、テクノロジー株から資金を移動させるよう提案しているわけではありません。むしろデータからは、多くの投資家が、金融緩和の恩恵を戦術的に受けそうな分野に資金を投入するために、現金に大幅にオーバーウェイトし、余剰現金を積み上げていることが示唆されています。

これが私の基本的シナリオですが、中央銀行、特にFRBが十分迅速に利下げに着手しなかったことによるリスクもあります。非常に現実的な可能性として、金融政策の長く可変的なラグが既に米国経済に大きなマイナスの影響を与えており、これが深刻な景気後退につながる可能性が考えられます。そのようなシナリオでは、市場は景気後退を見越して「リスクオフ」のスタンスに移行するでしょう。

これは決して私の基本シナリオではありませんが、今後数ヶ月のうちにどこかで売りが出る可能性はあると考えられます。しかし、以前にも申し上げたように、私はいかなる売りも短期で終わり、買いの機会を提供するだろうと考えています。

今週の注目材料

中国共産党の第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)は、通常5年ごとに開催される重要なイベントで、当初は昨年末に開催される予定でしたが、7月15日に開始されました。財政支援を要する地方政府に対する資金供給のための財政制度の見直しなど、様々な改革が示されると予想されます。不動産関連施策も予想されますが、不動産分野は価格低下と在庫増加に直面していることから、これは決定的に重要となります。戸籍制度の改革も取り上げられる可能性が高く、これにより中国国内での移動が拡大する可能性があることから、都市部の住宅需要に拍車をかけ得ます。税制改革も行われる可能性がありますが、これは地方政府の土地売却収入の減少を相殺するのに役立つでしょう。また、一部の債権が満期を迎えた地方政府への支援施策も強化される可能性があります。

中国の4-6月期の国内総生産が年率4.7%と予想を下回ったことは注目に値します。しかし、これは比較的一時的と考えられます。(おそらくは今週の3中全会で発表される)政策的支援の強化や、好調な輸出の継続により、今後数ヵ月の成長が下支えされるでしょう。

欧州中央銀行(ECB)も今週会合を開催予定ですが、ECBは今後の利下げについて非常に忍耐強く臨むとの発言から、利下げは行われないと予想されます。

公表日指標等内容
7月15日中国GDP地域の経済活動を測定
7月15日中国小売売上高小売セクターの健全性を示す
7月15日ユーロ圏鉱工業生産鉱工業セクターの経済の健全性を示す
7月16日ドイツZEW景況感今後6カ月間のドイツの景況感を測定
7月16日米国小売売上高小売セクターの健全性を示す
7月16日米国NAHB住宅市場指数住宅市場の健全性を示す
7月17日英国CPIインフレの動向を示す
7月17日英国PPI(生産者物価指数)生産者に対して支払われるモノ・サービスの
価格変化を測定
7月17日米国建築許可件数住宅市場における需要を示す
7月17日米国住宅着工件数住宅市場の健全性を示す
7月17日米国鉱工業生産鉱工業セクターの経済の健全性を示す
7月18日オーストラリア失業率労働市場の健全性を示す
7月18日英国失業率労働市場の健全性を示す
7月18日ECB金融政策決定会合金利の道筋を発表
7月18日米国景気先行指数景気循環の重要な転換点を先行して示す
7月19日日本CPIインフレの動向を示す
7月19日英国小売売上高小売セクターの健全性を示す
  • 1.出所:米労働統計局、2024年7月11日
  • 2.出所:米労働統計局 米国労働統計局、2023年7月12日
  • 3.出所:米労働統計局 米国労働統計局、2024年7月12日
  • 4.出所:ミシガン大学消費者調査(速報値)、2024年7月12日
  • 5.出所:セントルイス連銀調査部、2024年7月12日
  • 6.出所:Drewry、2024年7月11日
  • 7.出所:ミシガン大学消費者調査(速報値)、2024年7月12日
  • 8.出所:ペプシコ決算説明会、2024年7月11日
  • 9.出所:ファクトセット業績見通し、2024年7月12日
  • 10.出所:“The Return of Industrial Policy in Data”、国際通貨基金ワーキングペーパー、2024年1月

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

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