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世界経済に暗雲が立ち込める


OECDは、2025年と2026年の世界のGDP成長率を引き下げ、米国やメキシコ、カナダの成長見通しも下方修正しました。これは、一部の国で企業・消費者の心理が弱含んでいることを受け、貿易政策の変化が世界経済に影響を与え、インフレが上昇する可能性があるとの警告に基づいています。FRBはスタグフレーションのリスクを意識し、成長率の下方修正を行いましたが、BOEはインフレ再燃のリスクを重視しています。一方、ドイツは防衛とインフラへの支出増強を進め、中国も消費拡大に焦点を当てています。これらの財政刺激策が株式市場に影響を与える可能性があります。しかし、政府支出の削減が続くかどうかは、今後の主要な関心事となります。

※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

〔要旨〕

  • 世界経済の成長:OECDは、2025年と2026年の世界のGDP成長率見通しを引き下げた
  • 米国の見通し:FRBは、2025年の米国の成長率見通しを引き下げ、インフレ率と失業率の見通しを引き上げた
  • ドイツの財政支出:ドイツ議会は、防衛およびインフラ支出のための1兆ユーロもの借入が可能となる基本法改正案を可決した

OECDが世界経済の成長率見通しを引き下げ

FRBの見通しは経済成長への懸念を反映

イングランド銀行はタカ派的なトーン

ドイツは防衛とインフラへの支出増額に向けて歩を進める

中国は消費拡大に重点を置く

今後の展望

注目の日程

経済協力開発機構(OECD)は世界経済に暗雲が立ち込めているとの見解を示し、米国では米連邦準備理事会(FRB)がスタグフレーションのリスクが高まっていると示唆し、イングランド銀行は世界的な不確実性からタカ派的な姿勢を取っています。一方、ドイツと中国は、株式市場のセンチメントを改善させる可能性がある財政刺激策の強化に踏み出しました。先週分かったこと、そして私が次に注目していることは以下のとおりです。

OECDが世界経済の成長率見通しを引き下げ

先週月曜日、OECDは経済見通しの改定の中間報告を発表しました。 そこでは、雲行きが怪しくなっていることが指摘されています。これまで世界経済は堅調さを維持してきましたが、最近の経済指標からは世界的な成長見通しの鈍化の兆候が示され、一部の国では企業・消費者の心理が弱含み、経済政策の不確実性を示す指標が世界中で著しく上昇しています。 これらを受け、成長見通しに一定の見直しが加えられました。

当該中間報告においてOECDは、

  • 2025年の世界の国内総生産(GDP)成長率見通しを3.3%から3.1%に、2026年については3.3%から3.0%に引き下げました1
  • 米国の成長率を、2025年が2.2%に、2026年が1.6%まで鈍化すると予測しました。これらはそれぞれ、前回見通しの2.4%、2.1%からの下方修正となりました1
  • メキシコ経済を今年はマイナス1.3%と予測し、前回見通しの1.2%成長から大幅に修正しました1
  • カナダの成長率を今年と来年、0.7%に減速すると予測し、両年とも前回見通しの2.0%から大幅に下方修正しました1
  • 2025年の中国のGDP成長率見通しを4.7%から4.8%に上方修正しました。2026年の成長率見通しについては、前回同様4.4%としました1

最も重要な点は、OECDが、貿易政策に重大な変化が起こっており、それが続けば世界経済の成長に打撃を与え、インフレの上昇を招く恐れがあると警告したことです。これは、特に長期化した場合に、関税戦争が世界経済の成長を損なう可能性があることを思い起こさせる貴重な警告です。しかし私は、はるかに大きな問題は政府支出の劇的な削減だと考えています。今後、これについて注意深く見守っていきたいと思います。

FRBの見通しは経済成長への懸念を反映

先週水曜日、FRBは政策金利の据え置きを決定しましたが、これは事前に予想されたとおりでした。私は、最新の「ドットプロット」(FOMCメンバーの今後1年及びその先の金利予想をチャート化したもの)と記者会見から何が分かるかに注目していました。

ドットプロットでは成長率見通しが下方修正され、インフレ率と失業率の見通しが上方修正されました。明らかになったのは、スタグフレーションのリスクが高まっているということです。 FRBはまた、中央値で今年0.5%の利下げを予想しています。 これはハト派的な傾向を示唆しており、FRBがインフレの再燃よりも成長への負の影響をより懸念していると考えられます。

このテーマは記者会見でも浮き彫りとなりました。パウエル議長は、今や有名となった「一過性」という表現を用い、インフレの再燃の可能性を否定しているようでした。(関税が短期的なものであれば、持続的な物価上昇を引き起こす可能性は低いとの意見には私も同意します。第1期トランプ政権の関税による物価上昇が一時的なものだったことは記憶に新しいところです。)また、パウエル議長は雇用創出が低調となっていることを改めて警告しました。これまでは、解雇も比較的低水準だったためバランスが取れていましたが、仮に解雇が増加するようであれば、不均衡が生じ、失業率の上昇につながるでしょう。私が見るところ、明らかにFRBは成長についてより懸念しています。

イングランド銀行はタカ派的なトーン

イングランド銀行(BOE)も先週の会合で政策金利の据え置きを決定し、予想よりもタカ派的な姿勢を示したように見えました。最も重要なのは、BOEが世界経済における不確実性の大幅な高まりを認めたという点です。

成長とインフレの両面のリスクを認識しつつも、 BOEは(FRBとは異なり)インフレ再燃のリスクをより懸念しているように思われます。これは、最近BOE当局から聞かれた声とも呼応しています。デビッド・ラムズデン副総裁は数週間前の講演において、賃金上昇率の増加に伴い、インフレ上昇のリスクが高まっていると警告しました2

中央銀行当局にとって難しいタイミングであり、BOEの考え方も理解できます。私は、BOEが今年の金融政策の方向性について柔軟に対応する意思を明確に示したことを評価しています。英国で見込まれている予算削減が実行に移されれば、成長への逆風となり(インフレにはいくぶん下方圧力がかかり)、BOEはFRBのように、インフレの再燃よりも成長を懸念するようになるでしょう。そうなれば、現在予想されているよりも大きな金融緩和政策が必要になる可能性が高いと考えられます。今後の展開に注目しましょう。

ドイツは防衛とインフラへの支出増額に向けて歩を進める

ドイツの議会は先週、基本法改正案を可決し、防衛およびインフラ支出のための1兆ユーロの借入に向けた道筋を整えました。これは、ドイツの経済成長に負の影響を与えてきた長年の規律的財政からの劇的な転換となりました。このことが財政政策や欧州株に対する継続的なセンチメント改善に与える影響は計り知れません。

中国は消費拡大に重点を置く

中国では今年、さらなる財政刺激策が講じられるでしょう。1-2月の経済データが予想を上回ったことを受け、先週、「消費振興特別行動計画」が発表されました。需要の強化を通じた消費拡大に重点を置くとされていることには勇気づけられます。こうした多方面にわたる取り組みを、引き続き追ってまいりたいと思います。

今後の展望

今週、世界中で引き続き財政刺激策の構造的な変化の兆しが見られていくことは間違いないでしょう。私には、ドイツや中国などが財政刺激策を追加する一方で、米国は財政支出の大幅な削減という危険な道を歩んでいるように見えます。(私自身はもちろん、世界中の「ブラウンシュート」および「グリーンシュート」の兆候を追っていきます)。先に言及したように、それは私にとって、現在進行中の関税戦争(長引かない限りは一時的な影響に留まる可能性が高い)よりもはるかに重要です。

世界経済で起こっていることは、様々な資産へのインプリケーションを持ちます。現下の経済政策の不確実性と地政学的リスクの高まりから金への需要が高まっていますが、状況に改善の兆しが見られないことから、この傾向は続くとみられます。プラスのサプライズの可能性がある株式には投資機会となりますが、それはより大規模な財政刺激策から生じる可能性があります。しかし、政府の借り入れが大幅に増加している国々では、国債価格が下落するでしょう―ここ数週間のドイツ10年物国債利回りの上昇にそれが見てとれます。インフレ再燃のリスクにより、一部の中央銀行の緩和策のペースが鈍化する可能性があることから、バンクローンが恩恵を受け得ると考えられます。

財政政策について言えば、私は3月26日にレイチェル・リーブス英国財務相から発表される春季予算案を心待ちにしています。今後の具体的な計画―増税か歳出削減か、あるいはその両方か―は不明のため、この声明は英国の財政政策の現状を評価する上で重要となります。大幅な歳出削減が行われた場合、英国経済には逆風となる可能性があります。

データについて言えば、米国個人消費支出(PCE)関連の統計に注目しています。PCE価格指数はFRBが選好するインフレ指標であり、インフレが大幅に上昇するとの消費者予想が正しいかどうかを判断する材料となります。また、米国消費者の経済とインフレに関する期待(今週発表されるコンファレンス・ボード消費者信頼感指数およびミシガン大学消費者信頼感指数の両方)や、ユーロ圏の消費者信頼感指数も重要です。さらに、主要国の購買担当者景気指数(PMI)も発表される予定であり、先行経済指標として役立つ可能性があります。

注目の日程

公表日指標等内容
3月24日ユーロ圏製造業PMI製造業の経済の健全性を示す
3月24日ユーロ圏サービス業PMIサービス業の経済の健全性を示す
3月24日英国製造業PMI製造業の経済の健全性を示す
3月24日英国サービス業PMIサービス業の経済の健全性を示す
3月24日米国製造業PMI製造業の経済の健全性を示す
3月24日米国サービス業PMIサービス業の経済の健全性を示す
3月24日日銀金融政策決定会合議事要旨中央銀行の意思決定プロセスについて
更なる示唆を与える
3月25日ドイツIfo景況感指数ドイツの初期の経済動向を月次で示す
3月25日米国コンファレンス・ボード
消費者信頼感指数
米国の消費者のインフレ、株価、金利に
対する態度と期待を詳述
3月26日英国CPIインフレの動向を追跡
3月26日英国の春季予算案英国経済の現状について政府から
最新の認識を提供
3月26日米国耐久財受注現在の産業活動を測定
3月27日米国国内総生産地域の経済活動を測定
3月28日英国国内総生産地域の経済活動を測定
3月28日英国小売売上高小売業の健全性を示す
3月28日ドイツGfK消費者信頼感指数ドイツの経済活動に対する消費者信頼感の
水準を測定
3月28日ドイツ失業率労働市場の健全性を示す
3月28日ユーロ圏消費者信頼感指数ユーロ圏の消費者心理を追跡
3月28日米国個人消費支出(PCE)価格
指数
インフレの動向を追跡
3月28日カナダ国内総生産地域の経済活動を測定
3月28日ミシガン大学米国消費者信頼感
指数
消費者心理とインフレ期待の指標を提供
  • 出所:OECD経済見通し、3月中間報告、2025年3月17日
  • 出所:ロイター、“Wage pressures boost risk of above-target inflation, BoE’s Ramsden says”、 2025年2月28日

クリスティーナ フーパー
チーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト

ご利用上のご注意
当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

MC2025-031

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