
2025年8月21日
独立行政法人国際協力機構(JICA)
第9回アフリカ開発会議(TICAD9)テーマ別イベント レポート④
―高専生がアフリカの課題解決に取り組む
「高専オープンイノベーションチャレンジ」の成果―
独立行政法人国際協力機構(JICA)は、2025年8月20日、JICA横浜センターにて、オンラインとのハイブリッド形式で第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のテーマ別イベント「高専オープンイノベーションチャレンジ・未来を創る共創力 ~アフリカ×日本・10代からの開発課題解決〜」を長岡技術科学大学との共催で開催しました。
本イベントでは、アフリカの企業や行政などの現地パートナーと設定した課題に対し、全国の高専生から解決策を募るハッカソン「高専オープンイノベーションチャレンジ(以下、高専OI)」の活動発表が行われました。JICA・国際協力機構 中村理事長特別補佐による挨拶の後、自民党 草間衆議院議員やマダガスカル技術・職業教育大臣 マリー・マルセリーヌ・ラソロアリソア閣下による主賓スピーチが行われたほか、高専生等から高専OIのこれまでの成果も参加者へ共有されました。
高専OIの受賞チームは現地で実証実験を行うなど、高専生に開発課題へ取り組む機会を提供しているのが特徴。日本の若者の技術やアイデアがアフリカの現場で活かされ、その学びが日本国内にフィードバックされる「リバースイノベーション」の視点を重視しています。また、アフリカと日本の若者が互いの知見を交えながら新しい解決策を共に創り出していく「共創」のプロセスそのものが、次世代を担う人材育成において重要な教育的価値を持つという理念で、長岡技術科学大学が事務局となり高専OIを運営しています。
本イベントの第一部では、中山高専OI事務局長兼特命副学長による概要説明の後、高専生と現地パートナーによる活動発表が行われました。
まずケニア派遣の長岡高専は、アフリカの食料問題をきのこで解決するビジネスについて、活動内容を発表。現地での実証実験の結果、「エコソーラークッカーを使うことできのこが生えることを確認できました」と、2024年度の成果を報告しました。
マダガスカル派遣の宇部高専は、アフリカの栄養失調問題の改善を目的とした、水田養殖とふりかけを掛け合わせたビジネスについて活動内容を発表。現地で実証実験を行った際「ふりかけがおいしかった」「もっと多くの人にふりかけの作り方を知ってほしい」と、好意的な意見が多かったと報告しました。現地パートナーであるアンタナナリボ高等技術学院のティノ氏も「マダガスカルでふりかけが受け入れられるか不安もありましたが、受け入れられることがわかり、実際のビジネスにもつながりそうです」と、高専生の技術やアイデアを評価しました。
マダガスカルチームの木更津高専は、バッタによる公害を防止するビジネスについて、活動内容を発表。実証実験を通じ、現地の資材でも実現できることに手応えを感じ、「特定の場所に殺虫剤を集中散布することで、コストを抑えつつ持続可能な農業の実現につながりそうです」と語りました。
さらに今年度、渡航予定の函館高専からは、水産資源の枯渇に直面するセネガルの漁業者の収益を上げることを目的とした、「魚の鮮度を維持するボックス(safi box)」の開発についてアイデアを共有。同じく渡航予定の長岡高専からは、気候変動によるカカオの収穫量の減少や農家の収入減少を課題に挙げ、「カカオポッドを再利用したバイオチャー・木酢液」のアイデアを発表しました。
第二部のパネルディスカッションは、デロイト トーマツ 坂田シニアマネージャーがモデレーターを務め、総勢9名のパネリストが登壇。テーマは「高専OIの参加者の学び、活動意義」について。高専生からは「渡航前は不安もありましたが、いざ現地に行くと温かく、親切な方が多かったです」という感想や、「事前に準備をしていても、現地で実証実験を行ってみると予想外のアクシデントがあり、実際に行ってみないとわからないことが多かったです」という気づきが語られました。また、現地パートナーからも「現地で実際に実験をしてみてギャップもあったと思いますが、どうやったらビジネスとして機能するか、真剣に創意工夫を行う姿が印象的でした」と、高専生の姿勢が評価されました。
マリー・マルセリーヌ・ラソロアリソア大臣閣下も途中、高専生に向けて熱い言葉をかけ、「こうした、日本とマダガスカルの若者が共創する機会を今後も積極的に設けていかなければならないと強く思いました。若者の皆様の技術やアイデアをシェアしていただき、本当にありがとうございました」と、感謝の意を述べました。
最後に、高専OIの活動を通じアフリカの社会課題に向き合う意義として、「アフリカの課題は世界全体の課題とも密接に関連しており、日本の視点を加えることで貢献できる可能性があります。今後も若手人材の宝庫であるアフリカと、日本の若者の共創により社会課題を解決する人材の育成に努めていきます」と、統括となる言葉で締めくくられた。
パネルディスカッション後には、高専OIがきっかけとなり、長岡技術科学大学とガーナのクワメ・エンクルマ科学技術大学との間で学術連携協定が締結されたことを長岡技術科学大学 宮下副学長が発表。
長岡技術科学大学 山下理事兼副学長からの「今回のイベントが、たくさんの若者にとって社会課題を自分事として捉え、より良い社会の実現していくためのきっかけになって欲しいです」という言葉をもって、イベントは終了しました。
今回のイベントは、高専OIが若者にとって社会課題解決の貴重な学びの場となっていることを示すとともに、その活動が国境を越えた連携と新しい価値の創造に繋がっていることを改めて強調する機会となりました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508213880-O4-GLi3X1bT】
主賓スピーチを行う、マダガスカル技術・職業教育大臣 マリー・マルセリーヌ・ラソロアリソア閣下
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508213880-O2-1fBdIms1】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508213880-O3-fHs30OIX】
パネルディスカッションの様子
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508213880-O1-Xpoi2MYx】
長岡技術科学大学とガーナのクワメ・エンクルマ科学技術大学との間で学術連携協定を締結(宮下副学長)
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202508213880-O5-R0TUu7lK】
登壇者 集合写真
事後レポート配信予定のテーマ別イベント一覧
8月20日(水)
【テーマ別イベント レポート①】
□タイトル:アフリカにおける⼈間の安全保障と経済開発:多元的な課題への対応と2030年以降の未来
□日時:8月20日(水)10:30~12:10
□場所:横浜ベイホテル東急 B2F「アンバサダーズホールルームB」
────────────────
【テーマ別イベント レポート②】
□タイトル:ABEイニシアティブ・TOMONI Africa関連イベント:ABEイニシアティブのこれまでとこれから~更なる架け橋人材の育成を目指して~
□日時:8月20日(水)11:00-13:00
□場所:JICA横浜センター 4F 「かもめ」
────────────────
【テーマ別イベント レポート③】
□タイトル:日本・アフリカ間の海を越えた大学間交流・連携の経験および展望
□日時:8月20日(水)12:10-14:00
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
────────────────
【テーマ別イベント レポート④】
□タイトル:高専オープンイノベーションチャレンジ・未来を創る共創力 ~アフリカ×日本・10代からの開発課題解決〜
□日時:8月20日(水)14:00-16:00
□場所:JICA横浜センター 4F「かもめ」
────────────────
【テーマ別イベント レポート⑤】
□タイトル:若者のつながりが拓く未来‐アフリカとの往来から-(TOMONI Africa)
□日時:8月20日(水)15:00-16:40
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
8月21日(木)
【テーマ別イベント レポート⑥】
□タイトル:JICAアフリカ・ホームタウンサミット ~アフリカの発展と地方創生を共につなごう~
□日時:8月21日(木)09:00-11:00
□場所:横浜ベイホテル東急 B2F「アンバサダーズホールルームB」
────────────────
【テーマ別イベント レポート⑦】
□タイトル:国際協力機構(JICA)・アフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)第5次協力覚書(MOC)署名式およびシンポジウム「アジェンダ2063に向けた日本・アフリカ共創」
□日時:8月21日(木)12:30-14:20
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
────────────────
【テーマ別イベント レポート⑧】
□タイトル:債務管理で開発加速!アフリカの持続可能かつ強靭な成長に向けて
□日時:8月21日(木)15:20-16:50
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「パール」
8月22日(金)
【テーマ別イベント レポート⑨】
□タイトル:新興国によるアフリカ協力
□日時:8月22日(金)09:00-10:40
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「シルク」
────────────────
【テーマ別イベント レポート⑩】
□タイトル:Africa×Cultureシリーズ「遺すこと、生きること -アフリカと日本の文化遺産が語る未来-」
□日時:8月22日(金)10:00-11:30
□場所:パシフィコ横浜 展示ホールD
────────────────
【テーマ別イベント レポート⑪】
□タイトル:いのち会議 アフリカと共に創る未来社会:SDGs達成とその先へ
□日時:8月22日(金)12:30-14:30
□場所:ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル 1F「シルク」
────────────────
【テーマ別イベント レポート⑫】
□タイトル:Africa×Cultureシリーズ「アフリカと日本を編む -アートと手仕事がつなぐ新たな社会のかたち-」
□日時:8月22日(金)12:40-14:10
□場所:パシフィコ横浜 展示ホールD
────────────────
【テーマ別イベント レポート⑬】
□タイトル:Africa×Cultureシリーズ「音楽でアフリカと日本をつなぐ」
□日時:8月22日(金)16:00-17:30
□場所:横浜ベイホテル東急 B2F「アンバサダーズホールルームB」
※各テーマ別イベントの詳細情報は下記URLよりご確認いただけます。
URL:https://ticad9event.jica.go.jp/