MSCIインサイト: APACの投資家がトータル・ポートフォリオ・アプローチを採用
アジア太平洋地域(APAC)のアセット・オーナーの間で、レジリエンスと機会重視を両立させたポートフォリオを構築するためにトータル・ポートフォリオ・アプローチ(TPA)を採用する動きが拡大しつつあります。
MSCIが6月19日に東京で開催した「MSCI APAC機関投資家フォーラム」の開会の挨拶で、当社APACリサーチ&開発責任者であるオレグ・ルバンは、「資産クラスを縦割りにして運用する従来のモデルは、リスクとリターンの要因が相互に連動している今日の投資環境にそぐわなくなりつつあります」と述べました。
フォーラムに参加した投資業界のリーダーの方々もこのコメントに賛同し、グローバルな分断の深まり、アジアにおけるエネルギー転換の加速、プライベート市場の新しいダイナミクスといった新たな投資課題への対応に、TPAがいかに役立つかについて見解を共有しました。
TPAは、資産クラスごとにサイロ化するのではなく、動的に最適化されたポートフォリオ全体を統合的に運用することにより、意思決定におけるリスクを一元化するアプローチです。
ルバンは、「すべての資産クラスを個別に運用しようとすると、それらの間にあるつながりに気づけない可能性があります」と話し、さらに「TPAの考え方は、投資家が各投資判断の役割を、ポートフォリオ全体のリスクとリターンにどのような影響を与えるかという文脈で捉えるべきだというものです」と説明しました。
資産クラスごとではなくポートフォリオ全体で考える
過去に米国やカナダで開催されたフォーラムでは、投資の複雑性が増しブラックスワン・リスクが高まる中でTPAの魅力が高まっていることが話題に上り、今回も同様に、アセット・オーナーやMSCI リサーチ &開発部門からの参加者もこの意見に同意しました。
オーストラリアからカナダに至るまで、さまざまな大手アセット・オーナーがTPAを導入していますが、各社それぞれに千差万別のアプローチで、ポートフォリオ全体でのリターンの実現と、異なる運用区分のパフォーマンス指標の統一を図っています。
APACのアセット・アロケーターは、国・地域レベルのガバナンス構造によっては資産クラスごとの投資チームが必要となる場合があり、その点もTPA導入の課題だと述べました。
東京のフォーラムにおいてAPACと北米の機関投資家の見解が一致したもう一つの重要な点が、TPAへの移行における最大の課題は組織文化の変革であることです。この考えを示した機関投資家は、投資部門やリスク部門の責任者は、部門間の連携体制の確立に向けた共通の目的意識を醸成し、必要性への理解を深め、それを繰り返し周知する必要があると説明しました。
ある地域の年金基金運用者は、目的意識、信頼、仲間意識が自社におけるTPA文化の柱であると述べました。こうした価値観を根付かせるために、同社はWhatsAppのリーダーシップ・グループなどの非公式なコミュニケーション手段を設け、「We look good if you look good(あなたがうまくいけば、会社全体がうまくいく)」といった社内スローガンを掲げて一体感の形成に取り組んでいます。
プライベート資産と気候変動:戦略の転機
試行錯誤を伴っても前進が不可欠だと、フォーラムの参加者は口をそろえました。特に、資産配分におけるプライベート資産の割合が増していることがその背景にあります。投資家が利回り確保と分散効果を追求する中で、マクロ経済環境と、変化しつつある機関投資家のニーズが、プライベート・エクイティ、プライベート・クレジット、インフラ資産への投資拡大を後押ししています。
MSCIでは、2030年までに、投資可能な資金の約6分の1がプライベート市場に投じられると試算しています。
MSCIのアジア・プライベート資産クライアント・カバレッジ責任者であるシャーリーン・ウンは、「これは、トータル・ポートフォリオの文脈においてプライベート資産の重要性が増していることを明示しています」と述べる一方、「とはいえ、プライベート市場へのエクスポージャーの拡大には、流動性管理、透明性、規制対応といった課題も伴います。しかし、大局的に見ればメッセージは明確です。プライベート市場は、世界的にもアジア太平洋地域においても、機関投資家のポートフォリオの中核的な存在として定着していくのです」との見解を示しました。
ウンはさらに、テクノロジーによる変革や世界的なエネルギー転換といった構造的変化によって生まれる資金需要の最前線にもプライベート・キャピタルの存在があると加えました。また、フォーラムの登壇者はスピーチの中で、プライベート・エクイティやベンチャーファンドが多くのイノベーションを支えており、プライベート・インフラファンドは再生可能エネルギーやデジタルインフラなどのプロジェクトに資金を供給していると語りました。
MSCIでサステナビリティ&気候投資ソリューションの責任者を務めるグイド・ギーゼが、気候変動がプライベート市場とパブリック市場の保有資産に与える影響について投資家と意見を交わし、その中でアセット・アロケーターは、「紙面上の脱炭素化(Paper Decarbonization)」を超え、実世界でのインパクトを重視する方向に移行していること、そしてその実践には資産をより適切に分析するためのより高度なツールが必要であることを強調しました。
ギーゼは、「移行を意識したリスクモデリングや、信頼性のある移行準備への明確なシフトが進んでいます」と話し、「アセット・オーナーが知りたいのは、単にネットゼロ目標に沿った事業活動を行っているかどうかだけでなく、それをいかに収益性を伴って達成できているかです」と指摘しました。
レジリエンスに対する地域ごとの視点
日本やAPACの機関投資家は、各地域独自の視点を取り入れながら、戦略的な方向性を定めています。MSCI北アジア・クライアント・カバレッジ責任者 寺沢亮也は、フォーラム閉幕の挨拶で、そうした収斂の動きについて次にように述べました。
「AIの役割、気候変動、そして高まるマクロ経済の不確実性 - これらは嘲笑的な概念ではなく、すでに現実のものとして存在します。APACの投資家はそうした現実に即して対応するだけでなく、明確な方針や、信念をもって、先導しています。」
日本における気候ファイナンスに対するアプローチの変化、セカンダリー市場への関心の高まり、プライベート戦略への資産配分の拡大、個人投資家向けチャネルの増加といったテーマをめぐる議論の中で、こうしたリーダーシップが明確に見受けられました。ウンは、「日本のプライベート市場は慎重ながらも加速しています。戦略的な意図、将来を見据えた方針転換、そして投資家の成熟化の相乗効果が、着実な推進力を生み出しています」と述べ、この変化の重要性を強調しました。
MSCIの調査によると、世界の温室効果ガス排出量の50%以上がAPACに由来している一方で、グリーンモビリティやエネルギー転換への投資に関しては域内でのリターンが突出しており、2024年のグリーンモビリティ関連資金の59%がアジアに向けられています。
「アジアは主要な排出源であると同時に、数多くのソリューションが生まれている場所でもあります」(ギーゼ)
AI、適応力、そして次なるフロンティア
昨年の北米フォーラムでは、主要テーマの一つとしてAIによる投資機会のあり方と社内プロセスの変革が取り上げられましたが、今回の東京のイベントでもこのトピックについて議論されました。参加者の方々は、AIを破壊的なテクノロジーとして捉えるだけでなく、組織全体におけるより優れた意思決定を可能にする手段としても捉えていました。
「AIは単なる手段の変化ではありません。データの解釈、リスク評価、そこから得られる考察についても、そのやり方に大きな変化をもたらしています。投資における、ガバナンスや、透明性の確保といった点への影響は、まだ始まったばかりです。」(寺沢)
AIとイノベーションに関するパネルディスカッションの中で行われたライブ投票では、今後5年間でAIがもたらす最大の影響は業務効率の向上だと回答した参加者が最も多く、次いでリスク予測とポートフォリオ構築の進展が挙げられました。
投資分野におけるAIの未来はまだ発展途上にありますが、フォーラムでは、ある投資家の「適応力こそが新たなアルファだ」という言葉に、柔軟に変化に対応する力がこれからは重要だという考えが強調されました。
ギーゼは、気候変動投資について語った際、トータル・ポートフォリオについて振り返り、「脱炭素化のみに注目して、リスクとリターンの変化を見落としてしまえば、本質を見失うことになります。機関投資家による投資は、多面的な思考と長期的な規律が共存しなければならない新たな段階に入りつつあります」と述べました。
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