
モバイルバッテリーやスマートフォン、電動アシスト自転車など、繰り返し充電して使える「リチウムイオン電池搭載製品」は私たちの生活に欠かせない存在ですが、事故は年々増加しており、特に夏場に増加する傾向があります。独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、本格的な夏を迎える前に「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイントについて紹介します。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O1-86dZxSLd】
2020年から2024年までの5年間にNITE(ナイト)に通知された製品事故情報(※1)では、「リチウムイオン電池搭載製品」の事故(※2)は1860件ありました。事故の約85%(1860件中1587件)が火災事故に発展し、事故発生件数は春から夏にかけて気温の上昇とともに増加する傾向にあり、6月~8月にかけてピークを迎えます。
リチウムイオン電池には可燃性の電解液が含まれているため、大きな火災事故につながるおそれがあります。火災事故を防ぐ3つのポイントをご確認いただき、夏バテ(夏のバッテリー)には十分注意してお過ごしください。
【 「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ3つのポイント 】
〇正しく購入する
・連絡先が確かなメーカーや販売店から購入する。
・リコール対象ではないことを確認して購入し、購入後も常に最新の情報をチェックする。
・安価な「非純正バッテリー」が抱えるリスクについて理解する。
〇正しく使う
・高温下に放置するなどして熱を与えない。
・強い衝撃を与えない。
〇正しく対処する
・充電・使用時は時々様子を見て、異常を感じたらすぐに充電・使用を中止する。
・万が一発火した場合は大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で、119番通報する。
(※)本資料中の全ての画像は再現イメージであり、実際の事故とは関係ありません。
(※1)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故を含みます。
(※2)事故件数の中には、調査中の事故や原因は特定されていないがリチウムイオン電池に起因した可能性があると推定される事故も含みます。
事故の発生状況
NITEに通知された製品事故情報のうち、2020年から 2024年までの5年間に発生した「リチウムイオン電池搭載製品」の事故1860件について、事故発生状況を以下に示します。
年別・製品別の事故発生件数
図1に「年別・製品別の事故発生件数」を示します。近年の「リチウムイオン電池搭載製品」の需要増加や多様化の影響を受けて、事故も年々増加傾向にあります。製品別では「モバイルバッテリー」の事故が最も多く、2024年は2022年比で2倍以上に増加しています。これは、2023年5月に新型コロナウィルス感染症が5類感染症になったことで行動範囲が広がったことや、防災用品としての需要が高まっていること等が要因にあると考えられます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O2-3yJsG4yL】
月別の事故発生件数
図2に「月別の事故発生件数」と過去5年の「東京都の平均気温(※3)」の推移を比較したグラフを示します。気温の上昇とともに事故発生件数は増加し、8月に気温と事故発生件数がともにピークを迎えています。これは、リチウムイオン電池が高温環境にさらされることで電池内部の温度が上昇し、異常発熱や発火などのリスクが高まるためと考えられます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O3-Wyf5RcMu】
(※3)都道府県別で最も事故発生件数が多い東京都の月別平均気温について、気象庁の「過去の気象データ検索」をもとにNITEがグラフを作成。
「リチウムイオン電池搭載製品」 を正しく購入する
連絡先が確かなメーカーや販売店から購入する
不具合や事故発生後に事業者の補償を受けられない、事業者と連絡が取れないなどの事態が発生しています。販売元の情報を確認し、サポートが日本語に対応しているかどうか、連絡先(電話番号や住所)が実在するか確認してください。
リコール対象ではないことを確認して購入し、購入後も常に最新の情報をチェックする
リコール対象の「リチウムイオン電池搭載製品」による事故が2020年から2024年までの5年間で363件発生しています。事業者、消費者庁、経済産業省のホームページ等で製品がリコール対象製品かどうかを確認することができます。製品の製造・輸入事業者のホームページなどをこまめにチェックし、リコール情報を確認してください。もしリコール対象製品をお持ちの場合は、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に確認や相談をしてください。
安価な 「非純正バッテリー(※4)」が抱えるリスクについて理解する
安価で入手しやすい「非純正バッテリー」で火災を伴う事故が多く発生しています。
・設計に問題があり、異常発生時に安全保護装置が作動しない場合がある。
・品質管理が不十分で、通常の使用であっても事故に至る場合がある。
・事故が発生した際に、事業者の対応や保証が受けられない場合がある。
非純正バッテリーには“高リスク“のものが潜んでいることを理解しましょう。
(※4)機器本体のメーカーとは無関係の事業者から販売されているバッテリーで、機器本体の メーカーが、そのバッテリーの設計や品質管理に一切関与していないもの
「リチウムイオン電池搭載製品」 を正しく使用する
高温下に放置するなどして熱を与えない
リチウムイオン電池は、高温環境下では熱の影響で異常な反応が起きて発熱・破裂・発火するおそれがあります。直射日光の当たる場所や暑い日の車内などの高温下には放置しないでください。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O5-lvd61rVy】
強い衝撃を与えない
リチウムイオン電池は外部からの衝撃が加わると内部ショートが生じ、発煙や発火につながります。また、膨張を元に戻そうとして強い力が加わったことで異常発熱して出火した事故も発生しています。地面に落としたり無理な力を加えたりしないようにしてください。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O6-0i22j703】
「リチウムイオン電池搭載製品」 を正しく対処する
充電・使用時は時々様子を見て、異常を感じたらすぐに充電・使用を中止する
充電・使用時は時々様子を見て、以下のような異常を発見した場合は、充電・使用を中止して、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に相談してください。
□ 充電できない。
□ 充電中に以前よりも熱くなる。
□ 膨らんで、変形している。
□ 落とす、ぶつけるなどで強い衝撃を与え、一部が変形している。
□ 不意に電源が切れる。
また、2025 年 3 月に NITE が行った「モバイルバッテリー」でのヒヤリハット・事故の経験についてのアンケート調査では、「膨らんだ(変形した)」が最多でした。膨らんだリチウムイオン電池の内部には可燃性ガスがたまっています。このような状態の電池に、強い衝撃や外力が加わって内部部品が破損した場合や、充電しすぎた場合に、電池に負荷がかかると、熱が発生するなどして内部にたまっていた可燃性ガスが発火するおそれがあり、特に注意が必要です 。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O7-1611KpM0】
万が一発火した場合は大量の水で消火し、可能な限り水没させた状態で、119番通報する
万が一発火した場合、煙や炎が噴き出している時は絶対に近寄らないでください。モバイルバッテリーのようにポケットに入る小型サイズのものであれば、火花が収まったら、大量の水を掛けることで消火することができます。消火後は、可能な限り水没させた状態で、消防機関へ通報してください。リチウムイオン電池は消火後も熱をもっているため、火が消えた後に冷却しないまま可燃物に接触させると新たな火災につながるおそれがあります。
上記の対処が困難と判断した場合は、身の安全の確保を第一に119番通報してください。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O8-e37uGxk2】
今回の注意喚起動画はこちら
>>https://www.youtube.com/watch?v=0HuMy-8hWOk&feature=youtu.be
【動画:https://www.youtube.com/watch?v=0HuMy-8hWOk】
NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト)のご紹介
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報やリコール情報を検索することができます。
お持ちの製品がリコール対象になっていないか今一度ご確認ください。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202506180777-O4-9j7K5G8I】
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センターの概要
NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。