~必要な人に必要な物資を適切に届ける~ 令和6年能登半島地震 JDA-DATの災害支援活動の実際
尾西食品株式会社(本社:東京都港区 代表取締役社長 市川伸介 ※以下、尾西食品)は、非常食・備蓄のリーディングカンパニーとして、 ”アルファ米”をはじめとする長期保存食を製造・販売。専門家のアドバイス、被災者の声を通して日常の防災意識を高める活動を進め、2021 年3月より公式サイトにて防災コラムの発信をしております。
今回は全国のさまざまな災害現場に日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)としていち早く被災地へ向かい、被災者への支援活動として栄養管理、食生活支援等に手を差し伸べてきた公益社団法人日本栄養士会専務理事・災害支援チーム JDA-DAT 統括の下浦佳之氏に、本年元日に発生した能登半島地震の災害支援活動について伺った。延べ約 2,200 名の管理栄養士、栄養士を現地に派遣した日本栄養士会の災害支援活動で浮かび上がった課題とは。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202409206701-O4-t1qKVbT1】
下浦佳之専務理事
〜令和6年能登半島地震での栄養・食支援活動〜
――日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)について
JDA-DATは東日本大震災をきっかけに、大規模自然災害発生時、迅速に被災地での栄養・食生活支援活動を行うために、2012年に設立されました。大規模災害が発生した地域において、避難所、施設、自宅、仮設住宅等で被災者に対する栄養に関する支援活動ができる専門的なトレーニングを受けた栄養支援チームです。大規模な災害で厚生労働省や被災地自治体等からの要請により、JDA-DATを被災地に派遣するということになります。JDA-DATは、ボランティアといいながらも被災地の行政栄養士の指揮下に入り、行政と連携した活動を行います。
――初動支援活動について
1月2日に先遣隊として能登半島に入り、保健医療福祉調整本部より、乳児用液体ミルク搬送の指示を受けました。能登半島の北部は高齢者が多い地域ですから、本来、乳児用液体ミルクの必要性は低いはずです。しかし、お正月に孫を連れて、多くの家族が帰省や観光で来られており、また、断水していたので粉ミルク用の水が手に入らないという状況で、すぐに乳児用液体ミルクを持ってきてほしいという状況でした。早急に乳児用液体ミルクを能登半島北部へ搬送すべく動きましたが、1月3日の時点では、七尾市から北へは自衛隊や救急車ですら通行が困難な状態でした。乳児用液体ミルクは七尾市にある能登総合病院に参集しているDMAT(災害派遣医療チーム)に届け、乳児用液体ミルクの取扱い方、配布の際のWHOコードの遵守等についてDMATの先生方にレクチャーし、その先の搬送を託しました。支援活動全般において、現地での宿泊施設の確保が難しく、道路の陥没、土砂崩れによる迂回等により被災地への移動に時間を要し、その上雪等の天候不良、この時期の日没が早いことなどから、支援活動者の安全も確保しながら限られた時間の中でできる限りの支援をしました。
――能登半島地震で実施した初めての支援活動とは
発災直後、被災者の方は一般的には学校や、体育館、公会堂などの1次避難所に避難します。その後ホテルや仮設住宅といった2次避難所に移るというのが、これまでの動きでした。ただ今回は、金沢市内のいしかわ総合スポーツセンターに1.5次避難所というものが初めて設置されました。能登半島の北部は、ライフライン、交通手段の断絶などにより物資の搬送や人材の派遣といった支援活動に問題があったため、ライフラインに影響がなかった金沢市内の1.5次避難所に移動することになりました。そこでは当然食事が必要ですが、高齢者の方々、特に嚥下困難で柔らかい食事が必要な方も多く含まれていたので、そうした方に合った食事を調理し提供することが必要でした。これまでは食事を調理し提供することは行政の管轄のため、JDA-DATでは原則関わっておりませんでした。しかし、今回の災害においては行政の栄養士だけでは対応できない状況であったため、JDA-DATにより要配慮者に対して、具体的にはとろみやムース食等への対応を行うことになりました。
――災害時の食事の工夫について
JDA-DATが行う栄養・食支援活動では、特に要配慮者といわれる乳児、高齢者、妊産婦、アレルギーや慢性疾患の方へ適切な食事を摂取できるよう支援していきます。乳児には母乳が原則ですが、状況によってミルクが必要ですし、高齢者の方は、硬いおにぎりが食べられないことがあります。また支援物資として多くあるおにぎりや菓子パンの食事が続くと栄養が偏りますので、4日目くらいからはタンパク質とミネラル、ビタミン等の補給を検討します。避難生活によりリスクが高まって間接死につながらないよう、各フェーズの段階に応じて対応することになります。発災直後であっても、要配慮者の方々には十分な栄養量の摂取を確保する必要があるので、JDA-DATの支援活動が迅速に行われることが必須です。
〜災害支援から見えた今後の課題について〜
――1.5次避難所という新しい避難所と特殊栄養食品ステーション
能登半島地震で見えてきた課題は、主に2点あります。1つ目は1.5次避難所で食事提供サービスをするには、人材の確保、厨房設備が必要ということです。課題解決のためには、キッチンカーやトレーラーハウスの厨房設備を使用した食事提供も提案したいと考えています。
もう1つは特殊栄養食品ステーションの拡充です。JDA-DATの災害支援活動の中心は栄養相談を行ったり、調達した物資を適切な方に届けたりする物資搬送、感染症、食中毒を防止するための感染対策・対応なども行う避難所での巡回指導ですが、巡回する時に持参する乳児用液体ミルク、離乳食、やわらか食といった特殊な食品を調達・在庫管理・配送調整する場所を、特殊栄養食品ステーションといいます。特殊栄養食品ステーションでは管理栄養士・栄養士でないと解らない嚥下調整食、食物アレルギー対応食品等を集めて、適時適切に必要とする被災者に直接お渡ししていますが、能登半島地震のような特殊な地域において機動的に提供するためにはサテライトの設置が必要ということです。今回七尾駅前にサテライトを設置したように、平時から、日本栄養士会が栄養相談等を行っている各地の拠点としての認定栄養ケア・ステーションを活用したサテライト設置が必要だと感じています。
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――災害時に知っておいて欲しい栄養のポイント
食事がしっかりバランスよくとれていれば、しっかり動けます。ただ災害時は、主食としての穀類は充足しますが、牛乳・乳製品や果物等が足りなくなり、バランスが悪くなることがあるので、たんぱく質、ビタミン、カルシウムや鉄などをしっかり摂れるよう、色々な食品を組み合わせて栄養素の過不足がないように注意することをお願いしています。特に塩分は取りすぎないようにしたいものです。
――皆さんへのメッセージ
能登半島地震から半年以上が経ち、その後豪雨災害も起きていますが、能登半島は今まさに復興再生へと頑張っていますので、皆さんと共に協力をしていきたいと思っています。また、東京では首都直下地震が想定されています。能登半島地震の発災直後の避難者は約5万人でしたが、東京の場合はその60倍の約299万人の避難者(※)が見込まれています。いつどこで発生するかわからない災害で、多くの被災者支援に対応する為には、JDA-DATはさらなる人材育成が必要だと考えています。とはいえ、自助として、お一人おひとりが、きっちりと日頃から防災意識を高め、備蓄食品等を備えておかなければ、被害を最小限に抑えられないと考えています。引き続きご協力をよろしくお願い致します。
※参考:東京都防災会議「東京都の新たな被害想定 ~首都直下地震等による東京の被害想定~」
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202409206701-O7-7r57HX7N】
本文はこちら https://www.onisifoods.co.jp/column/detail.html?no=24
■尾西品株式会社
・事業内容:長期保存食の製造と販売
・所 在 地:〒108-0073東京都三田3-4-2いちご聖坂ビル3階
・URL:https://www.onisifoods.co.jp/
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