食育健康サミット2023
公益社団法人 日本医師会と公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は、生活習慣病の予防・治療におけるごはんを主食とした日本型食生活の有用性などについて考える、「食育健康サミット」を毎年開催しております。
本年度は「“将来の自分”を意識した生活習慣の重要性~小児期・若年期からの「日本型食生活」を通した健康づくり~」をテーマにWEB配信を開始いたしました。
令和5年5月に策定された「健康日本21(第三次)」の基本的な方向のひとつとして、「ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり」が掲げられました。幼少期からの生活習慣や健康状態は成長してからの健康状態にも大きく影響を与えること、妊婦の健康増進がこどもの健康にも影響すること、高齢期に至るまで健康を保持するためには、若年期からの取組が重要であること等を踏まえ、本年度は、「“将来の自分”を意識した生活習慣の重要性」をテーマに、小児期から若年期の健康課題とその具体的な方策について考えていきたいと思います。
本シンポジウムでは、小児期から若年期における悪しき生活習慣の将来的なリスク、食生活・運動習慣をはじめとする生活習慣改善のポイント、日本型食生活の意義と活用法等について、それぞれの疾患、生活指導、栄養、運動の専門家からのアドバイスを踏まえ、健やかな生活習慣を身につけ健康寿命を延ばすためには、どのような指導・普及支援等を行えばよいのか、医学的・栄養学的に考えます。
本サミットは医師、管理栄養士等を主な対象としていますが、どなたでも無料でご視聴頂けます。
視聴には事前登録が必要になります。詳細は、下記「参加方法」をご参照下さい。
WEB配信 【食育健康サミット2023】 「“将来の自分”を意識した生活習慣の重要性~小児期・若年期からの「日本型食生活」を通した健康づくり~」 開催概要
■配信期間:2023年12月1日(金)10:00 ~ 2024年2月28日(水)23:59
■主 催:公益社団法人 日本医師会 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
■参加費:無料
■座 長:帝京大学臨床研究センターセンター長 / 寺本内科・歯科クリニック内科院長 寺本 民生
■講 師:
国立成育医療研究センター内分泌・代謝科診療部長 堀川 玲子
和洋女子大学家政学部健康栄養学科教授 / 都立広尾病院小児科 原 光彦
順天堂大学国際教養学部グローバルヘルスサービス領域教授 /
順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学准教授 田村 好史
神奈川県立保健福祉大学名誉学長 /公益社団法人日本栄養士会代表理事会長 中村 丁次
帝京大学臨床研究センターセンター長 / 寺本内科・歯科クリニック内科院長 寺本 民生
(敬称略)
■参加方法: 米ネットからお申込み https://www.komenet.jp内のバナーからお申し込みください。
■講演要旨
講演1 「胎児期から始まる小児・思春期の健康課題」
国立成育医療研究センター内分泌・代謝科診療部長 堀川 玲子 先生
成人期の生活習慣病や精神疾患など健康問題の源が胎生期の環境にある、という説をDOHaD説(Developmental Origin of Health and Disease)といいます。この説は、胎生期に母体が極度の飢餓状態にあった児が、長じて成人になったときに心血管障害や糖尿病などのメタボリックシンドローム、うつ病など精神疾患のリスクが高くなることから提唱されてきましたが、現在では成人期前の小児思春期の健康にも影響すること、やせの妊婦の増加など胎生環境の悪化、さらに受精時の両親のやせが影響する可能性、またその形質が次世代にも継承されることなどが明らかとなっています。当センターの母子コホート研究からも、妊娠時やせの母体は妊娠中の体重増加が少なく、児の出生体重が小さいこと、出生体重の小さかった児は5歳時のグリコアルブミンが正常範囲内ではありますが有意に高いことがわかり、生殖年齢の男女の食習慣の見直しが、次世代の健康につながることが示されました。また、幼児期早期の体重増加は9歳時の男児において収縮期血圧上昇と関連する可能性もあり、胎児期に引き続き幼児期早期の栄養が小児思春期の健康にかかわることも示唆されました。
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講演2 「こどもの生活習慣病と食の重要性」
和洋女子大学家政学部健康栄養学科教授 / 都立広尾病院小児科 原 光彦 先生
肥満は、小児期から様々な健康障害を起こし、成人後の生活習慣病発症の危険性を高めるため予防や早期介入・早期治療が必要です。
肥満傾向児の出現頻度は、コロナ禍以降再び増加し、肥満に伴う健康障害の重症度も上昇しています。私達は、これまでの研究から、小児でも内臓脂肪蓄積が増えれば頸動脈硬化が生じることや、頸動脈硬化の程度は、血中n-3系多価不飽和脂肪酸量と逆相関することを見出しました。さらに、小児の腹部肥満指標と関連する要因として、摂取する脂質が多いことやイソフラボンが少ないことがわかりました。そこで、小児肥満予防や治療に応用可能な標語として、「さ・わ・や・か・ダイエット」を考案しました。これは、魚を主菜とした和食を推奨するもので、さ:魚、わ:和食、や:野菜、か:海藻、だ:だし・大豆製品 を意味しており、小児肥満や小児脂質異常症の改善に効果を上げています。
現在社会は、肥満が生じやすいため、「さ・わ・や・か・ダイエット」などを通じて、こどもの頃から、健康的な食習慣を身につけることが大切です。ごはん+汁物+主菜+副菜からなる、和食中心の食生活は、小児の健やかな心身の発育に有益です。
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講演3 「若い女性のやせと健康リスク」
順天堂大学国際教養学部グローバルヘルスサービス領域教授 /
順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学准教授 田村 好史 先生
近年我が国では20歳代のやせた女性が増加しています。4~5人に1人がBMI18.5kg/m2を切っており、それを起点として低出生体重児が増加しているだけでなく、骨粗鬆症の患者が今後増えることが懸念されています。また、やせた人では糖尿病のリスクが高く、20歳代のやせた女性では13%がIGT(耐糖能異常)であること、その背景には、あまり動かなくて、少なく食べるというエネルギー低回転型の生活習慣があることが明らかとなりました。この問題の解決には、米飯などの主食も含め、しっかりと食べてしっかりと運動するというエネルギー高回転するような生活を意識するべきです。また、このような問題の根本には、偏ったボディイメージや、体型に対する包摂性の欠如があると考えられています。
現在我々は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの1つである包摂的プラットフォームの構築において、「女性のボディイメージと健康改善のための研究開発」として社会技術の開発を進めており、今後の課題解決が期待されます。
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講演4 「将来の健康を見据えた栄養と食事」
神奈川県立保健福祉大学名誉学長 / 公益社団法人日本栄養士会代表理事会長 中村 丁次 先生
将来の健康を見据えた栄養・食事とは、一生にわたり健康で、長寿を保障してくれる栄養・食事のことです。以前から、日本には「腹八分、医者いらず」という言葉がありますが、控えめに食べることが一生にわたる健康、長寿を保障する根拠はありません。例えば、胎児と成長期、さらに高齢期にエネルギー制限食を実施すると、前者では発育不全、後者ではフレイルのリスクを上昇させることになり、健康を害するからです。
近年、「最初の1000日の栄養」運動が世界中で注目され、胎児栄養の重要性が叫ばれています。受精すると受精卵は細胞分裂を開始し、胎児は40数回の細胞分裂で、約3兆の細胞で新生児となります。この間の栄養は全て妊婦から供給され、その栄養状態はこどもの一生にわたる健康に関与します。全てのライフステージにおいて、日本型食事を基本にし、低栄養にも、過栄養にも陥らない食事を目指すことになります。
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クロージング 「サミットまとめ」
帝京大学臨床研究センターセンター長 / 寺本内科・歯科クリニック内科院長 寺本 民生 先生
我が国の平均寿命は世界でもトップレベルですが、同時に健康寿命と平均寿命の差も世界でトップレベルにあり、男性で8.80年、女性では12.09年(2019年データ)とかなり長く、我が国が抱える医療費高騰の一因とも考えられます。そこで、健康寿命≒平均寿命とすることが医療従事者のミッションともいえます。
最も注目すべきは高齢者の健康問題ですが、そのカギを握るのは小児期からの健康問題と考えられ、本講演会では小児期・若年期の問題点を取り上げることとしました。小児期ではその後の食習慣・運動習慣の形成される時期でもあり、学校での給食などが大きく影響力を持っています。その点では給食に「ごはん食」が週3.5回と増えたことは将来を考えると、いい方向に進むものと期待されます。一方、若年者の肥満・やせの問題も将来の健康問題に大きく影響しています。前者は、メタボリックシンドロームと深くかかわり、後者は、ロコモティブシンドロームに深くかかわるとともに、女性の妊娠中のやせは出生児に影響し、将来的なメタボリックシンドロームの温床となることが知られています。これらの問題点を明確にし、我が国の健康寿命を延伸するための小児期・若年期の食生活の在り方、特に「ごはん食」の効用について議論しました。
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