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NDBを活用した研究のフィージビリティ向上に資する基礎資料の開発


サンプリングデータセットによる網羅的解析について

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O1-I16b320b

 

2023年7月20日



お問い合わせ先

一般社団法人臨床疫学研究推進機構

東京都町田市中町1-2-5

E-mail:info@icer.tokyo

 位

 

 

 

 

 

「NDBを活用した研究のフィージビリティ向上に資する基礎資料の開発
~サンプリングデータセットによる網羅的解析~」について




一般社団法人臨床疫学研究推進機構(東京都町田市,代表理事:奥村泰之)は,レセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan:NDB)のサンプリングデータセットを活用して,NDBを活用した研究のフィージビリティ向上に資する基礎資料を開発することを目的とし,網羅的解析を行った成果を公表しましたので,その概要を別添のとおりお知らせします。

本研究では,2012年1月から2020年1月w診療分の間(各年1月,4月,7月,10月)の医科入院,医科入院外,DPC,調剤レセプトを分析対象とし,外来患者延べ18,914,933人,入院患者延べ7,445,993人の医薬品情報・診療行為情報・傷病名情報を網羅的に分析しました。NDBを活用した研究を計画する際に,適格基準に該当する患者数等を事前に見積もること(フィージビリティチェック)が困難ですが,本研究成果を活用することにより,フィージビリティチェックの代替となることが期待されます。

書誌情報

著者名: 一般社団法人臨床疫学研究推進機構

標題: NDBを活用した研究のフィージビリティ向上に資する基礎資料の開発:サンプリングデータセットによる網羅的解析

URL: https://icer.tokyo/

 

 

はじめに

レセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan:NDB)は,全国の保険医療機関から発行された診療報酬明細書(レセプト)を厚生労働省がデータベース化したものをいいます。NDBの第三者提供制度が2011年度から開始されて10年以上が経過していますが,その研究成果は未だに乏しい状況です。この一因として,NDBでは適格基準に該当する患者数等を事前に見積もること(フィージビリティチェック)が困難であることが考えられます。

そこで,本研究では,NDBサンプリングデータセットを活用して,NDBを活用した研究のフィージビリティ向上に資する基礎資料を開発することを目的としました。

NDBサンプリングデータセット

NDBサプリングデータセットとは,NDBに格納された単月の入院レセプトとDPCレセプトから10%,外来レセプトの患者から1%の抽出率で,年齢を層とした層化無作為抽出されたデータセットのことを意味します。本研究では,2012年1月診療分から2020年1月診療分の間(各年1月,4月,7月,10月)の,医科入院,医科入院外,DPC,調剤レセプトについてデータ提供を依頼しました。

NDBオープンデータとの比較

NDBサンプリングデータセットを活用した本研究成果と,NDBオープンデータとでは,表 1に示す点が異なります。例えば,本研究成果では,降圧薬の中ではamlodipineの処方を受けた外来患者が最も多く,次いでnifedipineとolmesartanが多いことが示されています。一方で,NDBオープンデータでは患者数を特定できないばかりでなく,薬効分類3桁ごとに処方数量の多い上位100品目の数量しか公表されていないため,降圧薬のように複数の薬効分類が割り当てられ(降圧薬は,薬効分類3桁では212,213,214,217,219,249に区分されている。),薬効分類の中の品目数が多い場合(例えば,薬効分類214は,降圧薬だけでも1800品目以上,他の薬剤クラスも含めると2000品目以上存在する。),「降圧薬の中で,どの薬剤(一般名単位)が最も多く処方されているか」という単純な疑問に答えることができません。

表 1. NDBサンプリングデータセットを活用した本研究成果とNDBオープンデータとの相違

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M106906/202307207314/_prw_PT1fl_V99VFoP4.png

患者数の分析

図 1は,2012年1月から2020年1月診療分の間における患者数の推移を示しています。外来患者延べ18,914,933人(月平均573,180人),医科入院患者延べ4,207,526人(月平均127,501人),DPC入院患者延べ3,238,467人(月平均98,135人)が特定されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O2-N866KYIJ

図 1. 2012年1月から2020年1月診療分の間における患者数の推移

図 2に,2020年1月診療分の年齢構成率を示しています。構成率のピークは,外来では70~79歳(19.2%),医科入院では80~89歳(29.2%),DPC入院では70~79歳(26.5%)にあることが示されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O3-z8n8lh7C

図 2. 2020年1月診療分における年齢構成率

薬剤クラスごとの分析

ここでは糖尿病治療薬を基に,薬剤クラスごとの集計結果を例示します。薬剤クラスとしては,降圧薬,脂質異常症治療薬,糖尿病治療薬,抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安・睡眠薬,気分安定薬,抗認知症薬,ADHD治療薬,パーキンソン病治療薬,抗てんかん薬,抗悪性腫瘍薬,抗サイトメガロウイルス薬,抗HIV薬,抗インフルエンザ薬,抗菌薬,ステロイド,吸入ステロイド喘息治療薬,抗リウマチ薬,オピオイド,鎮痛薬,抗血栓薬,抗血小板薬について同様の集計結果をWebサイトに公表しています。

図 3は,外来において糖尿病治療薬の処方を受けた患者数の推移を示しています。2012年1月から2020年1月の間に,患者数は45,549人から58,059人へと,1.27倍増加していました。これは,抽出率が1%であることと抽出月に受診しているとは限らないことを考慮すると,糖尿病治療薬の処方を受けている外来患者数は,600万人を超えることを示唆します。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O4-B81gKX9h

図 3. 2012年1月から2020年1月外来診療分の間において糖尿病治療薬の処方を受けた患者数の推移

 

図 4は,外来において糖尿病治療薬の処方を受けた患者数の推移を,年齢区分ごとに示しています。構成率のピークは,70~79歳にあり,次いで,60~69歳と80~89歳が上位となりました。2012年1月から2020年1月の間に,70~79歳の患者数は14,272人から19,948人へと,1.40倍増加していました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O5-aS205GXp

図 4. 2012年1月から2020年1月外来診療分の間において糖尿病治療薬の処方を受けた年齢区分別患者数の推移

 

図 5は,外来において糖尿病治療薬の処方を受けた患者数の推移を,患者数が上位の薬剤ごとに示しています。2012年1月時点の糖尿病治療薬のシェアは,glimepirideが首位,次いでsitagliptinとmetforminが上位でした。2020年1月時点のシェアは,metforminが首位,次いでsitagliptinとglimepirideが上位であり,順位に変動がありました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O6-MC6CNaqN

図 5. 2012年1月から2020年1月外来診療分の間において糖尿病治療薬の処方を受けた一般名別患者数の推移

 

図 6は,2020年1月診療分の外来において糖尿病治療薬の処方を受けた患者数を,患者数が上位の疑い病名を除く傷病名を年齢区分(全年齢,10-19歳,80-89歳)ごとに示しています。全年齢区分と80~89歳では,高血圧症が首位,次いで,糖尿病と2型糖尿病が上位になりました。一方で,10~19歳では,1型糖尿病が首位,次いで,アレルギー性鼻炎と1型糖尿病・糖尿病性合併症なしが上位になりました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O7-Rq496XJf

図 6. 2020年1月診療分の外来において糖尿病治療薬の処方を受けた患者の傷病名

 

診療行為ごとの分析

ここでは傷病手当金意見書交付料(区分番号:B012)を基に,診療行為ごとの集計結果を例示します。診療行為としては,基本診療科のうち入院料等と全ての特掲診療料について同様の集計結果をWebサイトに公表しています。

図 7は,外来において傷病手当金意見書交付料の算定を受けた患者数の推移を示しています。2012年1月から2020年1月の間に,患者数は1,103人から1,627人へと,1.48倍増加していました。これは,抽出率が1%であることを考慮すると,傷病手当金意見書交付料の算定を受けている外来患者数は,月間16万人程に達していることを示唆します。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O8-fb2Tnb1l

図 7. 2012年1月から2020年1月外来診療分の間において傷病手当金意見書交付料の算定を受けた患者数の推移

 

 

図 8は,外来において傷病手当金意見書交付料の算定を受けた患者数の推移を,年齢区分ごとに示しています。構成率のピークは,40~49歳と50~59歳にあり,次いで,30~39歳が上位となりました。2012年1月から2020年1月の間に,50~59歳の患者数は226人から395人へと,1.75倍増加していました。【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O9-wi2akq3B

図 8. 2012年1月から2020年1月外来診療分の間において傷病手当金意見書交付料の算定を受けた年齢区分別患者数の推移

 

図 9は,2020年1月診療分の外来において傷病手当金意見書交付料の算定を受けた患者数を,患者数が上位の疑い病名を除く主傷病名と年齢区分(全年齢,30-39歳,50-59歳)ごとに示しています。全年齢区分と50~59歳では,うつ病が首位,次いで,高血圧症が上位になりました。一方で,30~39歳では,うつ病が首位,次いで,適応障害が上位になりました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O10-O3BFe53k

図 9. 2020年1月診療分の外来において傷病手当金意見書交付料の算定を受けた患者の傷病名

 

傷病名ごとの分析

ここでは口腔・咽頭がんの傷病名コード(ICD-10コード:C00-C14)を基に,傷病名ごとの集計結果を例示します。傷病名としては,感染症及び寄生虫症(A00-B99)から健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用(Z00-Z99)まで,同様の集計結果をWebサイトに公表しています。

図 10は,外来において口腔・咽頭がんの傷病名コードを有する患者数の推移を,年齢区分ごとに示しています。構成率のピークは,70~79歳にあり,次いで,60~69歳と80~89歳が上位となりました。2012年1月から2020年1月の間に,70~79歳の患者数は104人から164人へと,1.58倍増加していました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O11-00YH32re

図 10. 2012年1月から2020年1月外来診療分の間において口腔・咽頭がんの傷病名コードを有する年齢区分別患者数の推移

 

 

 

図 11は,2020年1月診療分の外来において口腔・咽頭がんの傷病名コードを有する患者数を,患者数が上位の疑い病名を除く口腔・咽頭がんの傷病名と年齢区分ごとに示しています。50~59歳では,中咽頭癌が首位,次いで,舌癌が上位になりました。一方で,70~79歳では,下咽頭癌が首位,次いで,中咽頭癌が上位になりました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O12-DQvPnnEk

図 11. 2020年1月診療分の外来において口腔・咽頭がんの傷病名を有する患者の傷病名

処方パターンの分析

ここでは精神病床入院中の統合失調症における処方パターンを基に,処方パターンの分析の集計結果を例示します。その他の処方パターンの分析としては,抗認知症薬の処方量,ベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方量,抗認知症薬処方を受けた患者における抗精神病薬の併用患者数,免疫療法薬処方を受けた患者における吸入ステロイド喘息治療薬の併用患者数をWebサイトに公表しています。

図 12は,精神病床入院中に統合失調症の主傷病を有する患者における抗精神病薬の種類数の推移を示しています。2012年1月から2020年1月の間に,3種類以上の抗精神病薬の処方を受けた患者の割合は40.3%から33.9%へと減少していました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O13-x4xaoV4G

図 12. 2012年1月から2020年1月の間において精神病床入院中に統合失調症の主傷病名を有する患者における抗精神病薬の種類数の推移

 

 

図 13は,精神病床入院中に統合失調症の主傷病を有する患者における年齢区分別3種類以上の抗精神病薬処方割合の推移を示しています。69歳以下の年齢層において,3種類以上の抗精神病薬処方割合が減少していました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202307207314-O14-veXitd0x

図 13. 2012年1月から2020年1月の間において精神病床入院中に統合失調症の主傷病を有する患者における年齢区分別3種類以上の抗精神病薬処方割合の推移

 

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