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東京医科大学公衆衛生学分野福島教照講師ら研究チーム「在宅勤務では、長時間の座りすぎへの対策が必要」


-COVID-19流行下の在宅勤務者で職場勤務者よりも仕事中の座位時間が1時間以上長い -

                                        2021年3月17日
                                         東京医科大学

 
【概要】
 東京医科大学(学長:林由起子/東京都新宿区)公衆衛生学分野の福島教照講師らは、関東地方在住の20-79歳の男女2,362人を対象に、新型コロナウイルス感染症アウトブレイク時における一般市民の予防に関する考えと行動に関するインターネット調査を2020年7月28日から同年8月2日にかけて実施しました。その研究成果が2021年3月8日に国際医学雑誌 Journal of Occupational Healthオンライン版で発表されました。

●COVID-19流行下の2020年7月28日に日本人男女2,362人を対象にインターネット調査を実施しました。
●職種等を考慮した分析を行っても、在宅勤務者は職場勤務者よりも仕事中に座っている時間は1時間以上長く、身体を動かす時間(中高度身体活動時間)は約30分間短くなっていることがわかりました。
●テレワークの推進にあたり、並行して健康リスクである長時間の座りすぎや身体活動不足への対策も実施する必要性が示唆されました。

【研究の背景】
 新型コロナウイルス感染症に対する感染拡大防止の一環として、在宅勤務といったテレワークが推進され、従来、職場で働くのが当たり前であった労働者にとって、自宅が新たな職場の一つになりました。仕事中の長時間の座位時間や少ない中高度身体活動時間は労働者の健康に悪影響を及ぼしますが、職場勤務と在宅勤務ではどのくらい仕事中の座位時間や中高度身体活動時間が異なるのかほとんど報告されていません。そこで、本研究は職場勤務者と在宅勤務者における仕事中の座位時間と中高度身体活動時間の違いについて定量的に明らかとすることを目的としました。

【研究方法】
 在宅勤務が新しい生活様式として定着するようになった2020年7月28日~8月2日に関東地方在住の 20 歳から 79 歳の男女 2,362 人にアンケート調査を行いました。このうち、自営業以外の仕事をしている1,239人に対して、職業性身体活動調査票(Work-related Physical Activity Questionnaire、WPAQ)1を用いて仕事中に座っている時間(座位行動)、立ち仕事をする時間(低強度身体活動)、歩いたり重いものを運んだりする時間(中高度身体活動)といった強度別にみた仕事中の身体活動を調査しました。

【本研究で得られた結果・知見】
 職場で働く労働者に比べて在宅勤務の労働者は、職種や勤務時間の違いなどを調整しても仕事中に座っている時間は76分ほど長く、一方で仕事中に歩行など身体を動かす(中高強度身体活動)時間は27分短いことがわかりました(図)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202103162326-O1-mR41V39w

【今後の研究展開および波及効果】
 長時間の座位行動および30分以上持続して座り続ける状態が多いことは死亡率の増加、糖尿病および心血管疾患の新規発症といった健康リスクになることが報告されており、在宅勤務では座りすぎによる健康影響が強く懸念されます。また、在宅勤務になって身体を動かさなくなったというと、例えば通勤で歩くこと(中高度身体活動)がなくなった影響を思い浮かべる場合が多いと思いますが、本研究によって仕事時間中にも中高度身体活動の低下が起きていることが明らかとなりました。職場にいるとコピーや雑用、来客対応、対面での相談、等のために職場内を移動したり、座位を中断したりする機会が多いかもしれません。さらに、職場の方が自宅より昼食時に食堂へ移動する距離も長かったり、外食する機会も多かったりするかもしれません。
 現在、感染拡大を抑制するため在宅勤務といったテレワークが推進されていますが、在宅勤務では並行して健康リスクである長時間の座りすぎや身体活動不足への対策も講じることが必要です。仕事中にこまめに立ち上がるように気を付けたり、昼休みには少し歩くなどして体を動かしたり、オンライン会議等でも座りっぱなしにならないように参加者同士で会議中でも立ち上がって構わないと声を掛け合ったりする配慮が必要かもしれません。朝礼や昼休み等に社員同士が一緒に体操をしているような職場であれば、在宅勤務中の同僚にもオンラインなどで一緒に参加しやすくなるように会社が働きかけてもよいかもしれません。新しい生活様式の中で在宅勤務を継続していくにあたり、健康保持・増進のためには座りすぎにならないように啓発していくことが必要と考えられました。

【掲載誌名】
Journal of Occupational Health

【論文タイトル】
Associations of working from home with occupational physical activity and sedentary behavior under the COVID-19 pandemic

【著者】
福島 教照、町田 征己、菊池 宏幸、天笠 志保、林 俊夫、小田切 優子、高宮 朋子、井上 茂 

【DOI】
http://doi.org/10.1002/1348-9585.12212(査読済み)

【主な競争的研究資金】
本研究は東京医科大学より支給された研究費を用いて行ったものです。

【補足資料:図解・表等 添付】
上図

【先行文献】
福島 教照, 天笠 志保, 菊池 宏幸, 高宮 朋子, 小田切 優子, 林 俊夫, 北林 蒔子, 井上 茂.仕事中の強度別身体活動および座位行動を評価する簡便な質問紙の開発:職業性身体活動調査票(WPAQ)の妥当性および信頼性.産業衛生学雑誌 2020 年 62 巻 2 号 p. 61-71.

【その他の新型コロナウイルス感染症に関する東京医科大学公衆衛生学分野の研究結果】
https://www.tokyo-med.ac.jp/univ/covid-19/information.html#new2
研究結果①:感染予防行動のうち「目鼻口に触らない」の実施率が最も低い
研究結果②:予防行動に関する行動変容は男性と低所得者で少ない
研究結果③:COVID-19 アウトブレイク下において風邪症状のある労働者の多くが十分に自主隔離できていない
研究結果④:COVID-19 パンデミック下においても マスクを正しく使用している者は少ない ~マスクマネジメントに関するさらなる啓発が求められている~
研究結果⑤:新型コロナウイルスの流行下で一般市民のメンタルヘルスは悪化した ~悪化したのは特に低所得者、呼吸器疾患を抱える者だった~
研究結果⑥:日常生活での手洗い回数は1日10回では不十分
研究結果⑦:低所得者のメンタルヘルスは感染者が減少してもすぐには改善しない
研究結果⑧:新型コロナワクチン予防接種の普及にはワクチンは効果があるという認識や自分が予防接種を受けることで他者も守るという思いが重要

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