「介護と生活」に関するレポート
トレンド総研
介護費用の“想定”と“貯金額”にギャップあり
「介護貧乏」予備軍が大多数!? 介護費用「貯金なし」が約9割
「介護は結婚をためらう要因」が7割…介護問題は晩婚化にも影響か
一方、「介護は他人事」の傾向アリ…20代で顕著 「介護休業」の事例も2割台
新しい介護の形『介護ロボット』・『介護移住』への賛否は
生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研(東京都渋谷区、URL:http://www.trendsoken.com/)では、このたび、20~60代の男女500名を対象に、「介護と生活」に関する調査をおこないました。
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<調査結果サマリー>
1. 介護の経験
…「経験がなく、今後関わる可能性もない」…20代の約7割にとって「介護」は“他人事”!?
2. 介護と家族
…「介護」の負担を背負うのは女性&長子の傾向アリ! 義理の親の「介護」も妻任せ
3. 介護とお金
…介護費用、「貯金なし」が約9割…「介護貧乏」予備軍が大多数!?
4. 介護と結婚
…「介護」は晩婚化を加速させる!? 「介護をしていたら、結婚をためらう」人が66%
5. 新しい介護の形
…“新しい介護の形”にフォーカス! 『介護ロボット』は賛成派多数、『介護移住』は賛否二分
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高齢化の真っただ中にある日本社会。総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が26.5%(※)にのぼる超高齢社会であり、今後も高齢者人口は増加する見込みです。また、2025年に団塊の世代が75歳以上になり、介護・医療・福祉サービスといった社会保障制度の需要と供給のバランスが崩れる恐れがある「2025年問題」も危惧されています。こうした中、「介護」は、国民誰もが関係のある話題と言えるでしょう。
家族の「介護」をする場合、費用・時間などの様々な面で負担がかかります。そのため、「介護」の負担にうまく対処できないと、仕事や恋愛・結婚、子育てなどの人生設計にも影響が起こりかねません。実際、「介護離職」や、独身者が1人で「介護」の負担を抱える「シングル介護」などが社会問題となりつつあります。
また、「介護」をとりまく状況も変化しています。2015年8月には、介護保険法の改正にともない一部の利用者の自己負担が増加。他方、民間でも「介護」に関する様々な取り組みがおこなわれています。例えば、「介護」の負担の大きさや介護職の人手不足などを背景に、各企業が生活・介護の支援を目的としたロボットの開発に注力しており、従来の“人の手”とは異なる形の「介護」も現実味を帯びてきました。このような変化は、人々の「介護」に対する考え方にも影響を与えるのではないでしょうか。
こうした状況を踏まえ、今回トレンド総研では「介護と生活」にフォーカスし、レポートを発表いたします。
※1 平成27年7月報 人口推計(総務省統計局) http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201507.pdf
1. 「経験がなく、今後関わる可能性もない」…20代の約7割にとって「介護」は“他人事”!?
はじめに、「自分の家族の介護をした経験、または、今後家族の介護をする可能性はありますか?」(複数回答)と聞いたところ、「自分が中心となって介護をしていた経験がある」人は9%、「介護の補助をしていた経験がある」人は14%でした。また、「今後、自分が中心となって介護をする可能性がある」人は11%、「今後、介護の補助をする可能性がある」人は22%。その一方で、「介護に関わった経験がなく、今後も介護に関わる可能性はないと思っている」人は51%という結果に。2人に1人は、「介護」が“他人事”になっていると言えます。
年代別に見ると、「介護に関わった経験がなく、今後も介護に関わる可能性はないと思っている」割合は特に20代で高く、67%と約7割にのぼりました。また、30代でも57%と過半数。若い世代は、相対的にまだ親なども若いためか、「介護」は自分に関係のない話題だと思っている可能性があります。
なお、「介護をした経験がある、または、今後介護をする可能性がある対象」(複数回答)として、最も多かったのは「自分の親」(77%)、次いで「義理の親」(29%)でした。「介護」をする対象としては、主に自分の親をイメージするようです。
2. 「介護」の負担を背負うのは女性&長子の傾向アリ! 義理の親の「介護」も妻任せ
そこで、「自分の親が要介護状態になったとき、誰が中心となって介護をすると思いますか(しましたか)?」(単一回答)と聞いたところ、「自分」(56%)が最多。男女とも「自分」と回答した人が多かったものの、「自分の配偶者」と回答した人は、女性がわずか2%だったのに対して、男性は17%で差がみられました。
また、「自分」と回答した人に、きょうだいの中での立場を質問すると、「中間子」(7%)、「末子」(20%)、「一人っ子」(11%)を上回って、「長子」(62%)が最多でした。
一方、「義理の親の介護をする人」(単一回答)として多かったのは、「自分の配偶者」(40%)、「自分」(23%)、「配偶者の兄または姉」(21%)という結果に。しかし男女別に見ると、女性は「自分」が40%、「自分の配偶者」が20%となった一方で、男性は「自分の配偶者」(60%)が「自分」(6%)を大きく上回りました。
さらに、「自分の配偶者」と回答した人に、配偶者のきょうだいの中での立場を聞くと、前述の「自分の親の介護」の調査結果と同様、「中間子」(10%)、「末子」(21%)、「一人っ子」(8%)を抑えて「長子」(61%)が最も多くなりました。
以上のことから、女性は、自分の親も義理の親も自分が「介護」をするという意識が強いようですが、男性は、義理の親の「介護」を妻に任せがちである傾向が読み取れます。また、「介護」は長子に負担がかかる可能性が高いという実態もうかがえました。
3. 介護費用、「貯金なし」が約9割… 「介護貧乏」予備軍が大多数!?
次に、「介護とお金」について調査をおこないました。まず、「自分の親の介護にかかる費用の総額」(単一回答)のイメージを聞いたところ、「見当がつかない」(44%)が半数弱を占めたものの、具体的な金額としては、「100万円~500万円未満」(22%)、「500万円~1,000万円未満」(11%)といった回答が多くなりました。
しかし、「自分の親の介護費用として、現在貯金をしていますか?」(単一回答)という質問に対しては、85%と約9割が「していない」と回答。「介護」には費用がかかると思っているにもかかわらず、ほとんどの人が自分では費用を準備できていないことが分かりました。これらの人は、介護費用の負担によって家計が圧迫される「介護貧乏」の予備軍とも言える状況にあり、近年社会問題となっている「介護破産」にもつながりかねないと考えられます。
さらに、一部の利用者の自己負担が増加する、このたびの介護保険法改正の認知度についても調べました。法改正前の制度では所得にかかわらず介護の自己負担は1割でしたが、このたびの法改正により、2015年8月から一部の利用者の自己負担が2割に増加しました。「このことを知っていますか?」(単一回答)と聞いたところ、「制度については知っていたが、改正については知らなかった」が23%、「制度についても改正についても知らなかった」が45%。合計すると、改正を知らなかった人が68%と約7割にのぼるだけでなく元の制度に関しても知らなかった人が約2人に1人で、多くの人が「介護」について関心が薄いと言えます。
4. 「介護」は晩婚化を加速させる!? 「介護をしていたら、結婚をためらう」人が66%
続いて、「介護と結婚」についても調査しました。まず、「交際中に自分が家族の介護をしていたら、恋人との結婚をためらうと思いますか?」(単一回答)という質問について「そう思う」と答えた人は66%。また、「交際中に恋人が家族の介護をしていたら、恋人との結婚をためらうと思いますか?」と聞くと、「そう思う」という人は57%。いずれの場合も、結婚をためらうと思う人がそうでない人を上回り、「介護」が結婚に踏み切れない要因になり得る実態が明らかになりました。「介護」は、晩婚化に拍車をかける可能性があると言えます。
さらに、会社員(会社役員含む)を対象に、職場の「育児休業」と「介護休業」の実態についても調べました。まず「自分の職場の育児休業/介護休業の事例の有無」(単一回答)を聞いたところ、「事例がある」という人は「育児休業」が61%だったのに対して、「介護休業」は23%と少数。また、「自分の職場は育児休業/介護休業がとりやすい雰囲気だと思いますか?」(単一回答)と聞くと、「そう思う」と答えた人は、「育児休業」が46%、「介護休業」が30%と、こちらも「介護休業」が「育児休業」を下回りました。事例がないことも影響しているのか、「介護休業」は、「育児休業」以上に取得しづらい傾向にあるようです。
5. “新しい介護の形”にフォーカス! 『介護ロボット』は賛成派多数、『介護移住』は賛否二分
最後に、最近話題になっている“新しい介護の形”として、『介護ロボット』と『介護移住』についても調べました。
◆ 『介護ロボット』:利用したい人は約8割! 魅力は“負担減”、「自分が使って次世代につなげたい」人も
『介護ロボット』とは、歩行・食事などの「介護を受ける側」の動作を補助したり、入浴・車いすへの移乗などの「介護をする側」の動作を補助したりするロボットのこと。最近では、トヨタやホンダといった大企業が、生活・介護支援を目的としたロボットの研究・開発に注力したり、ベンチャー企業が歩行を助けるロボットを発売したりするなど、実用化に向けた動きが見られます。
この『介護ロボット』について、「自分が介護を受けるとしたら、『介護ロボット』を利用したいと思いますか?」(単一回答)と聞いたところ、77%もの人が「そう思う」と答えました。大多数の人が、『介護ロボット』を好意的に捉えているようです。
回答の理由も合わせて聞いたところ、次のようなコメントが挙がりました。
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▼自分が介護を受けるとしたら、『介護ロボット』を利用したいと思う理由
「介護者の肉体的・精神的負担を減らせるし、遠慮や申し訳ない気持ちも感じずにすむから」(34歳・男性)
「介護における人手不足は今後避けられない問題であり、その解決につながると思うから」(61歳・女性)
「ホームヘルパーなどの介護者との相性が合わない場合を考えると、均質なサービスを提供する『介護ロボット』にはメリットがあると思うから」(40歳・女性)
「本格的な実用化はまだ難しいのかもしれないが、自分が使うことで臨床データを取ることができれば、次世代の『介護ロボット』が登場するのではないかと思うから」(47歳・男性)
▼自分が介護を受けるとしたら、『介護ロボット』を利用したくないと思う理由
「費用がかかるイメージがあり、経済的に導入は難しいと思うから」(51歳・男性)
「ロボットは温かみがない上に、誤作動や故障のおそれがあるから」(44歳・女性)
「決まった動作しかできなさそうなので、人相手の柔軟なケアはロボットには難しいと思うから」(30歳・女性)
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利用したいと思う理由としては、全体的に、「介護する人の負担を減らせる」、「気兼ねなく介護を受けられる」といった、介護する側と受ける側、双方の負担を減らせることをメリットだと考えている人が多く見られました。一方、利用したくないと思う理由は、温かみのなさや、安全面、金銭面での懸念であるようです。
まだ懸念点の多い『介護ロボット』ですが、中には「自分が使うことで臨床データを取り、開発に役立ててほしい」といった、利用に積極的な声も挙がりました。総じて、『介護ロボット』に対する期待度は大きいと言えます。
◆ 『介護移住』:「したい派」と「したくない派」が半々! “良いサービス”と“なじみの地域”の究極の選択!?
『介護移住』とは、市区町村によってサービスや施設の空き状況などに格差があるため、より充実した「介護」を受ける目的で、介護サービスがより充実した地域に移住することです。この『介護移住』について、「自分が介護を受けるとしたら『介護移住』をしたいと思いますか?」(単一回答)と聞くと、「そう思う」と回答した人は49%と約半数。賛成派と反対派が半々となりました。
回答の理由としては、次のような意見が集まりました。
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▼自分が介護を受けるとしたら、『介護移住』をしたいと思う理由
「より充実した介護サービスを受けられる点と、介護をする側の負担を減らせることにメリットを感じるから」(40歳・女性)
「移住先には、おそらく同様の事情の人がいるので、コミュニティに入って関係を築いていけると思うから」(28歳・女性)
「まだ賛成とも反対とも言えないが、元の地域に残ることで周囲の負担になってしまうのなら、
『介護移住』を検討したいと思う」(33歳・男性)
▼自分が介護を受けるとしたら、『介護移住』をしたくないと思う理由
「サービスの充実よりも、住み慣れた環境での生活を優先したいから」(36歳・男性)
「介護が必要な状態になってから新しい環境に順応するのは、精神的な負担が大きいと思うから」(65歳・女性)
「国民全員が『介護移住』をしたら大変なことになるから。元からいた地域で介護を受けるべき」(67歳・女性)
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「『介護移住』をしたい」と思う理由は、「より充実したサービスを受けたい」、「介護する側の負担になりたくない」など、そのメリットにフォーカスしたものが多数。一方、「したくない」と思う理由としては、「介護サービスよりも人間関係を優先したい」といった声や、「新しい環境に順応するのは大変である」といった、住み慣れた地域の環境を捨てきれないという意見が挙がりました。ただし、充実した介護サービスと、なじみの地域やこれまで築いてきた人間関係を天秤にかけるのは難しいようで、「悩む」、「今どちらかに決めることはできない」といった声も挙がりました。
「介護」は費用がかかる、結婚をためらう要因になるなど、その負担の大きさがイメージづいているにもかかわらず、関心が薄く“他人事”だと思われていることが浮き彫りなった今回の調査結果。“社会全体で高齢者の「介護」を支えていく”という介護保険制度のしくみや考え方自体は、浸透していないことがうかがえます。
今後ますます高齢化が進む中で、どのように介護問題に対処していくのか。官民問わず、社会全体が、いよいよ真剣に向き合わなければならない局面を迎えていると言えるでしょう。
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[調査概要]
・調査期間:2015年8月6日~8月10日
・調査方法:インターネット調査
・調査実施機関:楽天リサーチ株式会社
・調査対象:20~60代 男女 500名 ※性別・年代別に均等割付
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