ビットコインと言えば
数年ほど前に賑わしたニュースを思い浮かべる人が多いと思います。
中国人の爆買いバブルが崩壊して大暴落したというのもインパクトがありました。
大手ビットコイン取引所であるマウンゴックスにおいて、保管していたビットコインが消失し、倒産に追い込まれたということもありました。
この事件では、社長は外部からのハッキングを主張していましたが、実はこれに自ら関わっていたということで逮捕されています。
ニュースの印象が強いので…
と思っている方も多いかもしれませんが、その後、ビットコインはどうなっていったんでしょうか。
実は、もしかすると意外に思われるかもしれないような状況になっているんです。
今回は、そんなビットコインの現在について、わかりやすく紹介していきます。
ビットコインはバブル崩壊前の水準に戻っていた!
さっそくですが、ビットコインの月足チャート(対ドル)を見ていきましょう。
2011年頃から直近2017年に入ったところまでの値動きを表したものです。
非常に特徴的な形をしています。
2012年まで
ずっと1ビットコインあたり50ドルにすら届かない水準で推移しています。
2013年
高騰を始め、そのまま年内に1,000ドルを超えてるまでに大暴騰してしまっています。
これが初めてビットコインが注目された頃のバブルで、中国人を中心として爆買いされたと言われています。
その後
中国当局によるビットコインに対する懸念が通達されたのをきっかけにこのバブルが崩壊、さらにはマウントゴックス事件も後を追うように起こって、数ヶ月で300ドルを割る水準まで下落してしまいました。
一連の大暴落はさすがに尾を引いて、しばらくはビットコインの低迷が続いてジリジリと下落、さらに値も落としていきます。
この時は、「もうビットコインは終わりだな」と思っていた人が多かったと思います。
ですが、これでは終わりませんでした。
2015年
200ドルで下げ止まりました。
2016年
一気に値を戻していきました。
2016年8月
ビットコインの大手取引所であるBitfinexがハッキングによって12万BTC(1BTCを1万円で計算すると12億円)を盗まれてしまう、という事件が起こります。
こういうニュースが起こると、当然ですが警戒感から売られてしまいます。
この時のビットコインは600ドルを超えて推移していましたが、一時は500ドルをも割り込むという暴落を見せます。
ただ、その後はすぐに値を戻して、もとの上昇基調に戻っています。
2017年
再び1,000ドルを超えてきています。
ちなみに、この上昇過程でも何度か暴落を経験しています。
2017年1月
中国の当局がビットコインの大手取引所を呼び出したというニュース(その後、立入検査も実施)をきっかけにして、暴落しています。
これは人民元下落に神経をとがらせ中国当局の動きへの警戒感が原因ですが、チャート的に売りやすい局面だった点も大きかったように思います。
暴落の動きの中心
ビットコインを大量に保有している中国人たちだと言われていますが、ビットコインを売って人民元を買い戻す動きが大量に出たということです。
この時には、1,000ドルを超えて推移していたところから、一時は800ドルを割り込むところまで下落しています。
しかし、こちらもその後は持ち直しており、現在でも1,000ドル近くという高い水準での推移が続いています。
チャート的に見ると…
節目の2013年高値付近でいったん足踏みをしているかたちです。
ここでいったん揉み合いつつもしっかりと上に抜けてくるのか、それとも、ここでいったん跳ね返されて落ちていくのか、ちょうど相場の分岐点にある局面にあると言えるでしょう。
ビットコインはなぜ上がってきたのか?
ビットコインのバブル崩壊といえば2013年の大暴騰をイメージされますが、チャートで見てわかるように、今や再びその水準にまで押し戻してきているわけです。
つまり、「あれは単なるバブルではなかった」ということが言えるんではないでしょうか。
では、なぜビットコインは上昇しているんでしょうか?
需要と供給の関係について
本題に入る前に、大前提として価格が決まる時の需要と供給の関係について確認しておきます。
需要
モノをほしい思う人の数のことです。
供給
実際に世の中に存在するモノの数のことです。
「需要」と「供給」の関係をビットコインに当てはめる
ビットコインでいうと、需要はビットコインをほしい人の数、供給は発行されたビットコインの総数ということになりますね。
供給
ビットコインはその仕組み上、実は発行数の上限が2,100万BTCと決められています。
運用する過程で少しずつ追加発行されていっているんですが、この2,100万BTCを超えて増えることはありえません。
価格への影響を考えると、供給の最大量が決まっているので、価格が下がりにくい要因になっていることが考えられます。
需要
とくに自国の通貨が不安定な国の人は、ビットコインをほしがる傾向が強いです。
僕たち日本人には想像しにくいかもしれませんが、もし今後、経済崩壊するかもしれないという国では、使っている通貨がいつ紙くずになってしまうかわかったものではありません。
そうであれば、世界中でボーダレスに使えるビットコインに変えておきたいというわけです。
「需要」が盛んな国
すでに何度も出てきていますが、実は中国における需要がとくに盛んです。
中国は経済大国ではありますが、いろいろな問題も抱えており、今後の経済に不安を持つ人は富裕層を中心に少なくありません。
彼らは自身の財産を人民元から別のものに移転させようとしていますが、その1つのルートとしてビットコインにも大量の資金が流れてきているわけです。
普及するかがビットコインの「カギ」
そして、ビットコインは知名度こそ高いですが、仮想通貨というのはこれから普及していく仕組みでもあります。
どんどん普及が進めば、利用する人も爆発的に増えるかもしれないという将来性があるんですね。
日本では、以前よりは増えてきてはいるものの、今もビットコインを使える場所のほうがめずらしい印象です。
もしどこでも使えるぐらいまで普及すれば、ビットコインを使う人もどんどん増えていくことでしょう。
流れを読み「投機マネー」もすでに先行して相当入ってきていると思います。
供給の面からでは上限が決まっているのに対して、需要の面では、中国を中心とした膨大なニーズをベースに、これからも世界的に普及が進むのではないかという思惑で、ビットコインの価格は底堅く推移しているわけです。
ビットコインについて知っておくべき3つのリスク
ビットコインの現在の状況について簡単に説明してきました。
ここからは、ビットコインがもう上がらなくなってしまうリスクについて、3つの観点から見ていきます。
1. 仮想通貨の普及が拡大しないリスク
初めに仮想通貨全体の話からです。
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は仮想通貨はビットコイン以外にも掃いて捨てるほどたくさんあります。
ここでは、それらの仮想通貨も含めて、そもそも仮想通貨自体が普及しないという可能性について説明していきます。
仮想通貨というのは
明確な運用管理責任者というものが存在しません。
イメージとしては、インターネット空間でつながった複数のコンピューター上で自動的に運用されているようなかたちです。
私たちが普通の通貨を使う時…
・ いくら稼いだか
・ いくら引き出したか
・ いくら使ったか
これらは銀行口座をチェックすることで「国家」が追跡することを可能にしてます。
国家がコントロールできない仮想通貨
ビットコインは普通の通貨と違って国家のコントロールが効かないということです。
ビットコイン上のお金の動きは、(記録自体は残りますが、)匿名性が高く国家による追跡を容易にかいくぐることが可能です。マネーロンダリングなんかにも使われやすかったりするわけですね。
普通の通貨は本来は各国の中央銀行が発行しているので、流通量もコントロールできるのですが、ビットコインはこういったものからも外れたところに存在します。
金融政策に与える影響はまだ未知数なところが多いと思いますが、こういった面でも国家としては困る側面があるわけです。
国家が規制をかける可能性
こういったことなどから、国家が仮想通貨に対して一定の規制をかけてくる可能性がないとは言い切れません。
現実、中国ではこういった動きも出ています。
もしかすると、国家の規制が普及の足かせとなってしまう、あるいは、普及を止めてしまう可能性すらあるかもしれません。
そういう意味で、とくに中国当局の影響が大きいですが、世界各国における仮想通貨に対する規制導入については、常にアンテナを張っておく必要があります。
規制の判断は世論の動きも重要
ビットコインの匿名性を利用した犯罪が増加したり、あるいは、大型のマネーロンダリングが明らかになるなど、世論の風当たりが強くなると、規制がかかりやすくなっていくでしょう。
逆に、一般への普及が順調に進んで、利便性が世論に受け入れられれば、規制をかけるためのハードルは徐々に高くなっていきそうです。
2. ビットコインに技術的な問題が顕在化するリスク
次はビットコイン自体の問題についてです。
仮想通貨という仕組みは、複雑な技術を使った新しい試みである以上、今後、技術的な問題が顕在化してくる可能性があるという点です。
そして、もしそれが致命的なものだったとしたら、ビットコインをほしがる人は一気に減ってしまうでしょう。
仮想通貨は単なるコンピューター上の電子情報にすぎず、それ自体にはなんの価値もありません。
使う人の
という信頼があってこそ、初めて価値を持ちうるものです。
もしこういった欠陥が顕在化してしまうと、使おうとする人がいなくなり、文字通り無価値なものになってしまいます。
現時点で顕在しうる課題
とくに致命的になりかねないのが「スケーラビリティ問題」と言われるもので、ビットコインの処理スピードの問題です。
どんなシステムでもそうですが、取引を処理できるスピードには限界があります。
ビットコインはこの処理スピードの限界が、現状かなり遅いということが、課題としてあるんです。
どのくらい遅いか
大手クレジットカード会社と比較すると、何千倍というようなレベルです。
今のところはまだ大丈夫なんですが、もし今後、ビットコインの普及が急速に進んでいけば、この限界は簡単に超えられてしまうことが予想されます。
大きな問題を解決できない現状
ビットコインを使って支払いをしても、その支払いが完了するのに相当な時間がかかってしまうことになります。
あるいは、システム自体が止まってしまうなんてことが起こるかもしれません。
そんなことになってしまっては、使いたいという人は誰もいなくなってしまいますよね。
そうなる前にこの問題に対処する必要があるんですが、ビットコインを運用する人たちの利害関係が原因で、これがなかなか進んでいないという現状があったりします。
3. 他の仮想通貨が優位性を持つリスク
仮想通貨というのは、リスクの(1) でも少し触れましたが、ビットコインの他にもいろいろなものが存在します。
どんな仮想通貨があるのか、その価格、発行した通貨全体の金額規模などはこちらのサイトで確認できます。(金額規模の大きなもの、「普及が進んでいる順番」にランキング形式で載っています。)
私が確認した時点では、このリストに載っている仮想通貨は719ありました。
おそらく予想をはるかに超える数なんじゃないでしょうか。
ビットコインは仮想通貨の第1号
ビットコインは先行者の優位を保って一気に需要を伸ばしてきました。
しかし、第1号ということは、技術的にはそれだけ他と比べると古いということでもあります。
もちろんビットコインの中で細かくバージョンアップはされてきていますが、大きな変更を加えるのは難しいわけです。
仮想通貨が次々と誕生
ビットコインの課題を解決したり、あるいはプラスアルファの機能を持たせるという「ビットコイン2.0」なる動きもあって、仮想通貨が次々と誕生してきています。
ビットコイン以外にも人気の仮想通貨が出てくる可能性があるわけですね。
もしそうなれば、ビットコインに対する需要が大きく奪われてしまうので、ビットコインの価値も下がってしまうことが予想されます。
筆者としては、ビットコインの優位がそう簡単に崩れることはないと思っています。
ただ、長い目で見た場合には、こういった他の仮想通貨についても動向をチェックしておく必要があるでしょう。
バナー広告も気を付けて
なお、こういったことを調べていくと、まだ市場に出回っていない仮想通貨をプレセールで買わせようとするサイトに出くわすかもしれません。
今の段階でビットコインを超える仮想通貨を予想するのは、限りなく不可能に近いはずです。
「必ず儲かる」というおいしい話には裏があるものなので、その点はよくよく考えて動くようにしてくださいね。
ビットコインの今後の動向をチェックしよう!
今回はビットコインのチャートを見て、大まかな流れを見てきました。
2013年に大きく暴落しましたが、その暴落を取り戻してきており、現在のビットコインには根強い需要があるということがわかったと思います。
そして、こんなビットコインの相場が根底から崩れてしまうようなリスクについてもいくつか紹介しました。
長期的には将来性があるが…
こういった大きなリスクを抱えつつも、長期的にはビットコインの将来性はあるというのが筆者の見方です。
ただ、市場が未成熟なこともあって、そのボラティリティは普通の通貨じゃありえない大きさです。
例えば、2017年1月のビットコインの暴落の時に、対円相場では一時は15万円を超えたレートが1週間そこらで9万円を割るということ(短期間で40%以上も暴落!)も起こっています。
とくに現在は、チャート上の分岐点にもあるということで、短期的に注意が必要な重要ポイントにあることは頭に入れておく必要があります。
まずはビットコイン相場のチェックから
もしビットコインを買われる際は、こういった暴落の可能性を十分に考慮したうえで、もしそういったことが起こっても笑っていられるような資金での運用がよさそうです。
そのうえで、逆にこういう暴落をうまく利用することができれば、大きく稼げるチャンスも意外と多くあるかもしれません。
ビットコインの特徴をよく理解したうえでポートフォリオの1つとして考えてみると、投資の幅が増えるというメリットもあると思います。
興味を持った方は、まずはビットコイン相場のチェックから始めてみてはいかがでしょうか。(執筆者:貝田 凡太)