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配偶者手当の「廃止」 労働条件の不利益変更は認められるのか?



与党が出した平成29年度税制改正大綱を見ると、配偶者控除の上限を年収150万円へ引き上げることにあわせ、企業に配偶者手当の廃止まで呼びかけています



年収103万円のパート主婦・専業主婦を扶養していれば配偶者手当を出す企業が多いためだとは思われますが、制度改正の余波で減収になった世帯は困った話だと思います。



これは許されることなのでしょうか?







人件費削減の手段でなければ認められる


労働者にとって不利な給与体系になる場合、「労働条件の不利益変更」という概念があります。



不利益の程度や変更の必要性などから見て、合理性のない給与体系の変更は、労働契約法(10条)に反します。



配偶者手当の廃止は、一方的に行われた場合該当するように見えますが、どのような形で廃止を導入するかによって「不利益変更」に該当するかは変わります



配偶者手当を廃止するかわりに、基本給を上げたり、子供がいる場合に支給される家族手当(扶養手当)を上げたりするのは、合理性があるとされ認められることになります



総体として給与賞与等の人件費が削減になるようなケースでは、合理性のない賃金カットとして扱われますので、人件費削減の手段として活用した企業に関しては、一方的なやり方ですと労働契約法に反する可能性が出てきます。



もっとも実務上は公的機関を活用した労使紛争解決で、手当廃止が撤回された有名事例も見当たらないのですが…。





すでに配偶者手当廃止に踏み切った企業も


トヨタ自動車




平成27年にも、トヨタ自動車が配偶者手当の廃止に関して労働組合と合意したことが報道されました



この場合でも段階的な廃止であり、月1万9,500円の配偶者手当は廃止になりますが、子供に対する家族手当は1人あたり5,000円から2万円と4倍に増額することになります



この変え方なら、子供が多い労働者はむしろ手当が増えますので、必ずしも不利益変更とは言えないことになります。



国家公務員も段階的に変更




国家公務員についても、平成28年に入って月1万3,000円の配偶者手当を平成29年度に1万円、平成30年度に6,500円にするよう人事院が勧告しています。



こちらも子供に対する家族手当は6,500円から1万円まで段階的に増額することを予定しています。



なお日本の税務において年末調整制度を採用していることにより、配偶者手当目当ての就労調整は、一歩間違えると思わぬ揉め事にも発展するものです。(参考「あなたの奥さん、扶養じゃないのでは?」夫の勤務先がなぜわかるのか?



最後に






配偶者控除の改正も予定され、平成29年以降は配偶者手当を廃止する企業が増えることが見込まれますが、家族手当・扶養手当の誤支給による揉め事も減ることが予想されます。



子供のいる世帯では不利益が生じるとは言い切れませんが、子供のいない専業主婦世帯では減収が予想されます



年収150万円が上限の新たな配偶者控除は平成30年以降適用が予定されていますが、103万円→150万円の上昇幅は、国家公務員の配偶者手当額を上回っています。



新たな150万円の壁を意識してパート収入を増やしながら、うまく配偶者控除を活用することになるでしょう。(執筆者:石谷 彰彦)



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