
「毎月の家計が厳しいので投資で収入を増やしたいけど、どこから手をつければいいのかわからない…」今回は、そんな悩みを抱える30代女性の悩みにお答えしていきます。

相談者(30代独身女性)の情報と質問内容
相談者の情報
家族:母親(同居)
年齢:30代
性別:女性
世帯年収:300万円
住居:持ち家(一戸建て・ローン返済済)
貯蓄:100万円
相談者の質問内容
「現在収入より支出が多い状態なので、収入を増やす目的で個別株や投資信託の売買や運用を行っています。しかし、配当や株主優待に惹かれて頻繁に売買を繰り返した結果、運用実績がマイナスになりつつあります。一方、支出については改善すべき点が多いと思いますが、どこから手をつけていいかわかりません。そのため、第三者からの適切なアドバイスがほしいと思っています。」
ご相談の内容から優先順位が一番高いのは支出の多い家計の改善だと感じました。また、100万円の貯蓄は元本割れのリスクがある投資の資金にはせず、全額元本割れのない預貯金でキープしておくのがおすすめです。今は満期金利が高い定期預金も出てきているので、そのような定期預金に100万円を預け替えてもいいでしょう。
そのことを踏まえた上で、優先順位が高い順に相談者へのアドバイスを行います。
家計の改善について
まずは家計の改善から着手しますが、それにあたっては以下の順番で家計の改善を行うのがおすすめです。
1.1ヶ月の収支を「見える化」して家計の現状を把握
まず1ヶ月の収支を「見える化」して現状を正しく把握する必要があります。収支の「見える化」は以下の2つの手順で行います。
1. 現金払いのレシート(1ヶ月分)に記載された支出の合計金額を計算する
レシートがない現金払いの金額もここに加えますが、そちらはわかるものだけでOKです。
2.銀行口座明細とキャッシュレス決済利用明細に記載された支出の合計金額を計算する
クレジットカード(クレジットカードと連携するコード決済等含む)の利用金額は銀行口座明細で確認できます。それ以外は各キャッシュレス決済の利用明細でご確認ください。以上の方法で1ヶ月あたりの収入と支出を「見える化」すると、家計の現状がおおむねわかります。
2. 支出の見直しを行う
次は家計の改善に向けた支出の見直しです。見直しは以下の順序で行います。
固定費(水道光熱費、携帯電話代、定額サービスなど)
支出の見直しは固定費から始めます。固定費を見直すと毎月払う金額がコンスタントに減り、年単位で見ると支出が大きく減る可能性が高いからです。例えば毎月2,000円の固定費が減ると、1年で1万2,000円、10年で12万円の支出減になります。
携帯電話契約の見直し(携帯キャリアから格安スマホへの乗り換えなど)や、利用頻度の低い定額サービスの解約など、比較的削りやすいところから支出を見直しましょう。さらに、節電、節ガス、節水で光熱水道費を減らせれば理想的です。
流動費(医療費以外)
次は流動費(医療費以外)の見直しです。
ここでは相談者様が減らすことを検討中の支出や、筆者から見て減らせる余地がある支出に焦点を当てて検証してみました。
※食費については、食料費(食材費など)と外食費に分けて説明します。
<食料費>
現在利用している食品宅配サービスは確かに割高ですが、食品ロスによる支出増を防げるのが大きなメリットです。自分で食材を買うと使いきれずに廃棄する食材が今より増え、その分食料費も今より増える恐れがあります。また、食材を買いに行く時に使う車のガソリン代も今より増える可能性もあります。
そのため、食品宅配サービスを解約するよりも、現在の業者より安い業者や契約プランに乗り換えることを検討したほうがよいと思われます。
<外食費>
月1回程度の外食なら最小限です。ここには手をつけず、他のところで支出を減らしましょう。
<日用品費・衣料品費>
意外とムダな支出が多いのが日用品費や衣料品費です。これらの支出を見直す方法は2つあります。
1. 家に何がいくつあるかをすべて把握し、今家にあるものがなくなるまで買わない
現在家にある日用品や衣類の種類と数量(だいたいでOK)をスマホなどに記録しておくと、新たな日用品や衣類を買っていいかどうかを判断しやすくなります。
2.「安さ」を理由に買わない
「安さ」を理由に特売品などを買うと、家にあるものと支出が増えてしまいます。
以上の2つを徹底するだけでも、月に数千円~数万円程度の支出を減らせる可能性が高いでしょう。
<趣味の費用(書籍代)>
読書を趣味とする相談者様が書籍代を減らすのはおすすめしません。古本などの購入で書籍代を節約する程度にとどめましょう。
<ガソリン代>
車必須の地方でもガソリン代の負担を減らすことは可能です。例えば、「徒歩20分圏内の移動は運動を兼ねて徒歩や自転車で行う」などの方法で車を使う時間を少しでも減らせれば、ガソリン代の負担も減らせる可能性も高いでしょう。
以上のような形で支出の見直しを行うと、今より支出が減って家計にゆとりが出る可能性が高くなります。
3. 国の制度を利用して年間支出を減らす

国の制度を利用して年間支出を減らすことも大事です。ここでは以下の制度の利用で年間支出を減らす方法をご紹介します。
医療費控除の申告を行う
健康維持に必要な医療費はむやみに減らせませんが、医療費控除の申告で医療費による家計への負担を減らすことは可能です。医療費控除には2つの種類があり、申告にあたってはどちらかを選ぶ必要があります。
1.医療費等の年間自己負担額が10万円を超えた場合
診察費や処方薬・市販薬の購入費用に加え、電車・バス・タクシーなど通院で利用した公共交通機関の運賃は、医療費控除(所得税控除)の対象となります。それらの年間合計額が10万円を超えた場合、自分で医療費控除の申告を行うと10万円を超えた分の金額や、申告を行う方の年収に応じた所得税の控除を受けられます。
※保険会社からの給付金額は自己負担額から差し引く必要があります。
2.「特定一般用医薬品等購入費」が年間1万2,000円超えた場合
国が指定する「特定一般用医薬品等購入費」(「セルフメディケーション税制」の対象となる市販薬の購入費)が年間1万2,000円を超えた場合も、自分で医療費申告を行うと、超えた分の金額と申告を行う方の年収に応じた税金の還付が受けられます。
お母様は相談者様の扶養親族(生計を一にする親族)に該当するので、相談者様とお母様の医療費合計額が10万円を超えていると思われます。その場合は、1の方法で忘れずに医療費控除の申告を行いましょう。
母親の状況に応じて要介護認定を受ける
お母様の健康状態など、状況によっては要介護認定を受けて医療費や介護費用の負担を減らすことも可能です。
要支援・要介護認定を受けると各種介護サービスの利用料が一部公費負担になるほか、高額医療・高額介護合算制度の対象になるケースもあります。詳細は最寄りの地域包括センターにお問い合わせください
参考 厚生労働省「高額医療・高額介護合算療養費制度について」(PDF)
ふるさと納税で所得税控除を受ける
ふるさと納税で食品や日用品を購入すると返礼率に応じた所得税の控除を受けられ、生活費の一部を節約できます。(返礼率は自治体や商品により異なります)。
4.不用品販売で収入を増やす
不用品販売で収入を増やすことも家計の改善に役立ちます。家にある不用品をリサイクルショップやフリマアプリで販売すると、1点あたり数百円~数万円で売れます。原則として家庭の不用品販売の売上金には課税されません。(ブランド品など売上金が課税対象となるケースもあります)
時間があるときにフリマアプリでよく売れている商品をリサーチし、家にそれと同じ種類の不用品があれば売ってみましょう。意外と高く売れるかもしれません。
投資による資産形成について
家計にゆとりができて投資に回す資金を捻出できるようになったら、投資による資産形成(資産を増やすこと)を行う段階に入ります。ここでは投資をする場合に知っておくべき「投資における注意点」と、投資の経験が浅い方におすすめの「NISA」について説明していきます。
投資における注意点(株や投資信託の短期売買について)
株式取引や投資信託の売買を短期で頻繁に行うことはまったくおすすめできません。その理由は以下の通りです。
株式取引は大きな損失もありうるハイリスクな投資である
株式取引は大きな損失もありうるハイリスクな投資であり、売買のタイミングを誤れば資金の全額を失う恐れがあります。そのため、現在資産が少ない相談者様が今のような株式取引を続けるのは大変危険です。そのため、新たな株の購入はいったんストップしましょう。
また、株式取引で運用中の資産は少しでもプラスになった時に売却し、その資金をローリスクな投資の資金に振り替える形で株式取引から手を引くのがおすすめです。
株式や投資信託を頻繁に売買するほど手数料の負担が重くなる
手数料が無料の証券会社も増えていますが、利用している証券会社の手数料が無料ではない場合、株や投資信託を頻繁に売買するほど金融機関に払う手数料の負担は大きくなります。そのため、手数料を確認し、手数料がかかる場合は、株や投資信託の頻繁な売買は見直しても良いかもしれません。
投資信託の短期運用で得られる利益は少ない
投資信託は長期運用に適した金融商品です。その性質から短期運用で得られる利益が少ないので、頻繁に売買を繰り返すのはNGです。現在運用中の投資信託については、インデックス型などのローリスクな銘柄なら現在の証券口座で運用を続けるのもありです。
また、NISA口座をお持ちでなければ、新たにNISA口座を作って非課税投資を行うのも一つの方法です。それにあたっては、まずNISAの特徴を知っておきましょう。
相談者におすすめ!「NISA」の特徴
NISAの特徴は以下の通りです。
・一人あたり1金融機関で1つだけNISA口座を開設できる
※口座開設完了までの期間は申し込み時点から約2週間
・NISA口座の二つの投資枠は併用できる
<つみたて枠>
長期分散投資に適した積立投資信託を年間120万円まで購入・非課税運用できる投資枠
<成長投資枠>
上場株式や投資信託などの投資商品を一括や積立で年間240万円まで購入・非課税運用できる投資枠)
・1口座あたりの非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠の限度額は1,200万円)
・非課税限度枠で運用する投資商品の運用益には課税されない(通常は20.315%課税)
・投資商品の売却で生じたNISA投資枠の空き部分は翌年以降に再利用できる
・NISA対象商品の多くは信託報酬以外の手数料がかからない
・運用益に課税されないので損失が出ても損益通算(※)はできない
※株の売買の利益(譲渡所得)がマイナスになった年に国が指定する他の所得から損失した金額を控除すること
NISAはデメリットよりもメリットの方が多いので始めて損はありません。また、相談者様の場合はつみたて枠での少額積立投資がおすすめです。
30代なら今の仕事で収入を増やすことも可能
この記事では、ご相談内容に応じて「支出が多い家計の改善方法」や「投資における注意点」「NISA」について説明しましたが、30代なら今の仕事で今より収入を増やすことも可能だと思われます。資格取得や昇進試験への挑戦など、今の仕事で収入を増やす方法は複数あります。ぜひそちらについても前向きに考えてみましょう。