プロ野球選手やプロゴルファーなどのプロスポーツ選手は、所属チームからの年俸や優勝賞金などで多額のお金を手に入れられる反面、成績が下がれば収入が一気に減少するシビアな世界です。
ただ高額な年収を得ている選手であれば、収入が減ったとしても税金を問題なく支払えるのではないかとの疑問もあるかと思いますので、今回はプロスポーツ選手が税金の支払いで苦労する理由について解説します。
収入と税金の支払時期にはズレがある
スポーツ選手が税金の支払いに苦労するのは、収入を得るタイミングと税金の支払うタイミングが異なるからです。
個人事業主として活動している選手の場合、年俸等に対して所得税(復興特別所得税)と住民税が課されますが、所得税や住民税を支払うことになるのは、翌年になってからです。
たとえば年俸1億円の選手の場合、1億円の収入に対する所得税は翌年3月、住民税は翌年6月から年4回に分けて納めることになります。
翌年の年俸が下がったとしても、その年に納めるのは年俸1億円に対する税金ですので、納税資金を貯めておかないと資金不足に陥ります。
税金を先に納める「予定納税」の存在
所得金額に対する税金は確定申告で計算することになりますが、一定以上の所得金額や税額がある人は、予定納税が必要です。
予定納税は、確定申告の前に税金を納める仕組みをいい、該当する人は所得税の一部を事前に納付しなければなりません。
予定納税の額は前年分の所得金額等をベースに計算するため、翌年の収入が大幅に下がった場合、予定納税の額が同時期の収入よりも大きくなることも考えられます。
その年の所得税の額が予定納税よりも小さければ、確定申告手続きを行うことで納め過ぎた分の予定納税は還付されます。
しかし、予定納税には確定申告と同じように納期限があるため、予定納税の支払いが遅れると延滞税が課される点には注意が必要です。
納税額が収入を超えることはない
所得税の最高税率は45%、住民税の税率は一律10%、令和19年までは所得税の2.1%が復興特別所得税として課されます。
トップクラスのプロスポーツ選手は、課税所得金額の半分以上を税金として納めることになるので、税金の支払いは毎年とても大変です。
一方で、所得税や住民税は課税所得金額に税率を乗じて計算する関係上、年俸以上に税金を支払うことにはなりません。
所得金額は収入金額から必要経費を差し引いた額をいいますので、年俸1億円の選手に必要経費として2,000万円の支出があれば、差額の8,000万円が所得金額となります。
また、社会保険料控除や寄附金控除などは所得控除として所得金額から差し引くことができるため、収入を超える納税額が算出されることはないです。
その年の収入をすべて使い切ってしまえば納税資金は枯渇しますが、税金の支払いを考えてお金を使っていれば、仮に翌年の年俸が下がったとしても税金を支払えない状況は回避できます。