政府は2024年11月22日、総合経済対策に基づく物価高騰対策として、住民税非課税世帯を対象に1世帯あたり3万円(子ども1人あたり2万円を加算)の給付金の支給を決定しました。
ただし詳細が示されていないので、実施時期や支給方法などは分かっていません。
確実なのは、今回の給付金は住民税非課税世帯が対象ということです。
そこで今回は、住民税非課税世帯を分かりやすく解説するとともに、そのメリットも紹介します。
「住民税」とは?
住民税非課税世帯について説明する前に、まずは「住民税とは何か」について説明しましょう。
「住民税」は、都道府県や市区町村の教育・福祉・行政サービスを行うための税金です。
前年の1月~12月の所得に応じて、住民税の額が決まります。
「ふるさと納税」なら居住地以外への「寄付」が可能
≪画像元:カリーグズ≫
基本的に、住民税は住んでいる市区町村に納める税金ですが、「ふるさと納税」はその限りではありません。
ふるさと納税は、好きな自治体に寄付をすると返礼品がもらえる(ことが多い)とともに、合計金額から2,000円を差し引いた額が翌年納める住民税より控除されます。
ふるさと納税の控除を受けるためには、原則として確定申告をしなければなりませんが、1年間の寄付先が5自治体以下であることを条件に、申請書を送るだけで住民税の控除を受けられます。
「所得税」との違いは?
住民税と同じく、所得税も所得に応じて課税される税金です。
一見同じように思える2つの税金は何が違うのか、主な相違点を紹介します。
1.住民税は「地方税」、所得税は「国税」
住民税は、都道府県や市区町村が課税する「地方税」です。
これに対して所得税は、国が課税する「国税」です。
2.住民税は「前年の所得」、所得税は「その年の所得」が課税対象
住民税は、前年の所得に対して課税されますが、所得税はその年(現年)の所得に対して課税されます。
ただし、住民税でも退職所得は、その年の所得に対して課税されますので注意しましょう。
給与所得者は、年末調整や翌年の確定申告によって所得税の精算を行えますが、住民税は精算できません。
3.住民税には「均等割」があるが所得税にはない
≪画像元:江戸川区≫
住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。
住民税には所得割と均等割があるのに対して、所得税には均等割がありません。
江戸川区における個人住民税の均等割は、都民税1,000円、特別区民税3,000円です。
4.税率が異なる
≪画像元:江戸川区≫
住民税と所得税では、税率が異なります。
江戸川区を例に挙げると、住民税の税率(所得割)は区民税の分が6%、都民税の分が4%と所得にかかわらず定率です。
これに対して所得税の税率は、以下のように課税所得金額に応じて税率が異なります。
・195万円以下:5%
・195万円超~330万円以下:10%
・330万円超~695万円以下:20%
・695万円超~900万円以下:23%
・900万円超~1,800万円以下:33%
・1,800万円超~4,000万円以下:40%
・4,000万円超:45%
5.納税回数が異なる
≪画像元:諏訪市≫
給与所得者の場合は、住民税は6月~翌年5月までの12か月にわたって毎月の給与から納めますが、所得税は毎月の給与とボーナスから納めます。
個人で納める場合は、住民税が原則4回で納めるのに対して、所得税は原則3月15日までに1回で納めます。
「住民税非課税世帯」とは?
住民税についてある程度分かったところで、ここからいよいよ本題です。
「住民税非課税世帯」とは、住んでいる地域の自治体に納める住民税が課税されない世帯のことです。
「世帯」の呼称となっていますが、条件を満たせば一人暮らしでも対象となります。
住民税非課税世帯の条件は?
≪画像元:三菱UFJ銀行≫
自治体によって条件が異なりますが、東京都港区では所得割と均等割が非課税になるケースとして、以下の条件を設けています。
・その年の1月1日現在で、生活保護法による生活扶助を受けている
・障害者、未成年者、ひとり親、寡婦(夫)で、前年の合計所得が135万円以下(給与収入なら204万4,000円未満)
・前年の合計所得が一定の所得以下
所得が増えると住民税非課税世帯から外れる可能性もあり、以前は住民税非課税世帯だった人(年金受給者など)が子ども(会社員)と同居すると、住民税非課税世帯から外れる可能性が高まります。
ちなみに、ふるさと納税での控除は課税分が控除されているため、非課税世帯というわけではありません。
課税されないだけじゃない、「住民税非課税世帯」の優遇措置
「住民税非課税世帯」は、住んでいる地域の自治体に納める住民税が課税されないだけではありません。
他にも、以下のような優遇措置があります。
1.保険料が減免される
≪画像元:江東区≫
前年の所得に基づいて納付額が決められる国民健康保険料について、住民税非課税世帯は減免を受けられます。
減免を受けるにはその月の納期限までに申請が必要ですので、早めに申請しましょう。
40歳以上が支払う介護保険料についても、65歳以上の住民税非課税世帯については、介護保険料の「基準額の3割」までの減額が適用されます。
国民年金保険料についても、住民税非課税世帯は減免の措置を受けられます。
2.医療費負担が減る
≪画像元:札幌市≫
一定額以上の医療費に対しては、「高額療養費制度」により超過額の支給を受けられます。
住民税非課税世帯でなくても利用できる制度ですが、住民税非課税世帯は「一定額以上」の基準額がより低く設定されています。
3.無償で保育施設を利用できる
≪画像元:オープンハウス≫
住民税非課税世帯は、無償で保育施設を利用できます。
特に大きいのが0~2歳児で、住民税非課税世帯しか無償の対象となりません。
認可外の保育施設でも、条件を満たせば月4万2,000円まで無料で利用可能です。
4.大学生活でも支援あり
≪画像元:文部科学省≫
住民税非課税世帯は、大学生活でも「高等教育の修学支援新制度」という支援があります。
世帯収入が一定額以下の学生に対して、授業料・入学金の減免を行ったり、学生生活を送るための生活費を支援(給付型奨学金)してくれたりします。
貸付型の奨学金とは異なり、返済する必要がないのはうれしいですね。
5.介護・福祉サービス利用料が減る
≪画像元:NPO法人はなうた≫
住民税非課税世帯は、以下のように介護・福祉サービス利用料もお得になります。
・介護サービスの利用:最大でも月額2万4,600円の負担
・特別養護老人ホームの利用:日額1,020円の負担で利用可能
・障害者福祉サービスの利用:自己負担なし
住民税非課税世帯に関する情報をこまめにチェックしよう
今回のように、住民税非課税世帯が臨時給付金を受けられるケースは少なくありません。
政府だけでなく、自治体独自に住民税非課税世帯に対する補助を打ち出しているケースもあります。
ただし、臨時給付金を受け取るには申請が必要な場合もあります。
お住いの自治体や政府の広報誌やホームページで、情報を逐一チェックしましょう。