セブンイレブンやイトーヨーカ堂などを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスが、カナダの流通大手クシュタールから買収提案を受け、防衛策としてMBOを検討というニュースが話題となっています。
今回は「MBO」とは何か?
基本事項と注目される背景を説明していきます。
MBOとは?
MBOとはManagement Buyoutのことで、経営陣が会社の株式を買い取り、自ら経営権を握る手法のことです。
株主から株式を取得し会社を非公開化することで、外部の影響力を抑えつつ独自の判断で経営ができるメリットがあります。
親会社から独立したい
事業の効率化を図りたい
などのときにMBOを選択することが多くなります。
経営陣自身が会社の経営を行うことで、責任と決定権が強化されることが特徴です。
MBOの目的
MBOは会社を新しい形で存続させたり、経営の自由度を高めたりするために有効な手段です。
日本では高齢化に伴う後継者問題が深刻化しており、経営陣が会社を引き継ぐ方法としてのMBOが注目されています。
親会社が経営資源を効率化するために事業の一部を切り離す際にも、MBOが選ばれるケースがあります。
MBOは単なる買収ではなく、事業の新しいスタートを切る目的もあります。
MBOとTOBの違い
MBOと似た手法として、TOB(株式公開買付け)があります。
TOBとはTake-Over Bidのことで、企業が株式市場での公開買付を通じて、ある企業の株式を一定の価格で大量に買い取る方法です。
TOBを行う主体は、通常、外部の企業や投資ファンドであり、買収を通じてその会社の経営権を得ることを目的としています。
例えば、MBOでは経営陣が主体となるため、従業員や既存の経営方針が大きく変わる可能性は低いです。
一方、TOBでは、買収後に外部企業の意向が強く反映され、事業の再編やリストラが行われる場合もあります。
これらの違いを踏まえると、
MBO「経営の自主性を守りつつ事業を継続させるための手段」
TOB「外部からの介入で企業を再構築するための手段」
投資家は、それぞれの特徴を理解することで、今後どのような影響があるのかを見極めやすくなります。
今MBOが活発化している背景は?
近年、東京証券取引所を中心に市場改革が進められ、上場企業に対する上場維持の基準が厳しくなっています。
これにより、株式公開を維持するためのコストや手続きの負担が増大し、上場を続けることに疑問を感じる企業が増えています。
このような背景から、非公開化を選択する動きが広がり、MBOが注目されるようになりました。
短期的な利益を追求する株主の意向に左右されず、長期的な視点で経営改革を進めるためにも、非公開化が有効とされています。
外部の株主がいる場合、経営陣は常に株主の期待に応える必要があります。
しかし、MBOによって非公開化を選択すれば、株主の短期的な要求から解放され、自由な意思決定が可能になります。
事業の再編や構造改革を進める際にも重要な手段
たとえば、業績不振の部門を整理したり、新規事業に投資したりといった大きな経営判断をする際、株主の目を気にせずに行動できることが大きなメリットとなります。
さらに、外部から買収提案などがあった場合、自社を防衛する意味でMBOの手段を取ることがあります。
経営陣が会社の株式を買い取り、経営権を握ることで外部からの買収を防ぐ役割をするケースもあります。
株価とMBOの関係
日本市場では、株価が企業の純資産額を下回る「PBR1倍割れ」の状況が続いている企業があります。
このような割安の状況下では、経営陣が自社株を買い取りやすくなるため、MBOを行いやすい環境が整っています。
株価が低いということは、経営陣にとって買収コストが抑えられるだけでなく、株主にとっても適正な価格で株式を売却する機会となります。
このため、双方にとってメリットのある形でMBOが成立しやすくなっています。
割安な株価や円安が進む中では、海外の企業や投資ファンドから買収提案がされやすい状況にもなります。
企業はこの状況を正確に理解し、自社を守るための施策を考える必要性が出てきています。
会社の将来を見据えた戦略的な選択肢として重要な役割を果たす
その背景には、経営環境の変化や市場動向、そして企業の持続的な成長への期待があります。
MBOを正しく理解し、そのメリットとリスクを見極めることは、投資家にとっても重要となります。
特に日本市場は、市場再編の中でMBOの増加が予想され、今後も注目していく必要があります。
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