熟年世代の中には、配偶者に嫌気がさして熟年離婚を検討している方もいるでしょう。
しかし、勢いで熟年離婚すると必ず後悔します。熟年離婚のメリットやデメリットをよく理解した上で離婚について検討しないと、離婚後の生活が暗転する恐れがあります。
そこでこの記事では、熟年離婚のメリット・デメリット、状況別熟年離婚おすすめ度、離婚時の年金分割について解説する形で、熟年離婚をするかどうかの判断材料を提供します。
熟年離婚のメリット・デメリット
当然ながら熟年離婚にはメリットとデメリットがあります。
メリット
1 自分の収入を自分だけのために使える
2 財産分与で自分の資産が増える
3 離婚前より生活コストが下がる
4 年金分割で将来受け取る年金が増える
5 自分のペースで暮らせる
6 家事の負担が減る
7 配偶者その親族のストレスから解放される
デメリット
1 自分の収入だけで生活できない可能性がある
2 病気などで働けなくなって生活に困る
3 孤独死のリスクが上がる
4 家事能力のなさから生活コストが上がる
5 財産分与で自分の資産が減る
6 年金分割で将来受け取る年金が減る
7 ブランクがある熟年女性の就職は難しい
8 離婚時に分割した年金が思ったより少ない
9 家事の負担が増える
以上で挙げた中で特に目立つのが、熟年離婚の経済的なデメリットです。
特に、生活費の大半を夫の収入に頼っていた熟年女性の経済的デメリットは甚大になることが予想されます。
経済的な状況別熟年離婚のおすすめ度
以上のことを踏まえた上で、熟年離婚のおすすめ度を状況別にお伝えします。
おすすめ度★★★ 熟年離婚の準備を始めた方がいい方
・ 配偶者の借金・ギャンブル・アルコールなどの依存症が原因で家庭が破綻している
・ 配偶者からのDV被害(暴力・モラハラ・経済的DVなど)で身の危険が生じている
以上に該当する方は、すぐにでも熟年離婚の準備を始めた方がいいでしょう。まずは信頼できる方や弁護士などに今後のことを相談するのがおすすめです。
おすすめ度☆★★ 熟年離婚してもあまり問題ない方
・ 生活に困らない程度の安定した収入がある
・ 長年厚生年金に加入している
・ 自分名義のまとまった資産がある
・ 家のことを全て一人でできる
・ 一人でいるのが苦にならない
・ 健康面で日常生活に支障がない
・ いざという時に頼れる親族や友人がいる
離婚前から経済的に自立している方は、熟年離婚してもあまり問題はないでしょう。
ただ、働けなくなった場合に備えた貯蓄や一人暮らしできる家事能力は必要です。また、困った時に利用できる公的制度も調べておく必要があります。
おすすめ度 ☆☆★ 熟年離婚に慎重になるべき方
・ 専業主婦・扶養内パート(国民年金第3号被保険者)の期間が長い
・ 自分名義の資産が少ない
・ 一人でいるのが苦痛
・ 家のことが一人でできない
・ 健康に不安がある
・ いざという時に頼れる人がいない
以上に該当する方は熟年離婚に慎重になるべきです。
特に、専業主婦や扶養内パートの期間が長い熟年女性は、離婚で経済的に困窮する可能性が高くなります。
まず、ブランクのある熟年女性が離婚後一人で生計を立てる仕事に就くのは容易ではありません。
また、専業主婦や扶養内パートの期間が長いと将来受け取る年金がほぼ国民年金だけになり、老後の生活が困窮する恐れがあります。
そのようなデメリットも受け入れる強い覚悟がない方は、経済的な観点から熟年離婚をおすすめできません。
知らずに熟年離婚すると後悔する!離婚時の年金分割について知っておこう
ここまでお読みになった熟年女性の中には、「夫の年金を分割すれば老後は大丈夫」と思う方もいるでしょう。
しかし、離婚時の年金分割で妻が手にできる夫の年金はそれほど多くありません。その点も含めて、離婚時の年金分割について知っておきましょう。
離婚時の年金分割には2つの制度がある
離婚時の年金分割には2つの制度があります。
(1) 3号分割制度
平成20年5月1日以後に離婚した夫婦のうち、「国民年金第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)がある方」が相手方に年金分割の請求を行うと、相手方の厚生年金を当事者(元夫婦)間で分割できる制度です。請求にあたって当事者双方の合意は不要です。
(2) 合意分割制度
平成19年4月1日以後に離婚した夫婦(第3号被保険者以外も含む)が、双方の合意にもとづき全婚姻期間中の厚生年金(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割できる制度です。
合意分割にあたっては、当事者間の協議によって年金分割の割合を決めます。その協議がうまくいかない場合は、裁判手続きで年金分割の割合を決めることになります。
なお、婚姻期間中に3号分割の対象期間がある場合は、合意分割と同時に3号分割の請求もできます。
離婚時の年金分割で注意すべき点
次は離婚時の年金分割で注意すべき点をお伝えします。
1 年金分割を請求できる期間は「離婚日の翌日から2年以内」
3号分割、合意分割ともに、年金分割を請求できる期間は、原則として「離婚日の翌日から2年以内」です。
2 分割請求できない年金もある
離婚時に分割できるのは婚姻期間中の厚生年金のみ。国民年金の分割請求はできません。
また、相手方が障害厚生年金の受給権者で、分割請求の対象期間が年金額の基礎になっている場合も、年金分割を請求できません。
3 離婚時の年金分割で増える年金は意外と少ない
離婚時の年金分割で増える年金は意外と少ないことも知っておくべきです。
たとえば、令和6年の標準的な年金給付月額は23万483円。その内訳は以下のようになります。
夫婦の国民年金 13万6,000円(1人6万8,000円)
厚生年金 9万4,483円
※年金給付額は毎年変わります。
以上の金額を見ると、年金分割の対象となる厚生年金は意外と少ないことがおわかりでしょう。
相手方の厚生年金(標準報酬月額・標準賞与額)や分割の割合にもよって分割できる金額は異なりますが、おそらく分割で増える年金は少なめです。
また、婚姻期間以外に保険料を納めた分の厚生年金は分割請求の対象外となるので、実際に分割できる年金額はもっと小さくなります。
さらに、年金からは税金や社会保険料も引かれます。
年金収入だけの65歳以上の場合、年金収入が158万円以下なら所得税は非課税です。
一方、遺族年金、障害者年金以外の年金の年間受給額が18万円以上であれば、年金から住民税や社会保険料が特別徴収されて手取りの年金額が減ります。
つまり、熟年離婚時に年金を分割しても、多くの熟年女性が思うほど明るい老後は待っていないということです。
そのようなことも考慮に入れた上で、本当に熟年離婚するかどうかをよく考える必要があります。
【参照】
日本年金機構「離婚時の年金分割」
「離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)」
「離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)」
「所得金額の早見表(PDF)」
「Q 年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収されるのはどのような人ですか。」
熟年離婚するかどうかをよく考えてから決断しても遅くはない
体力も気力も収入も減退の一途をたどる熟年世代が離婚すると、生活面でも精神的な面でも大きなダメージを受けます。
特に熟年女性にとっては熟年離婚後の経済的な見通しが決して明るいとは言えないので、熟年離婚をしたいならまず経済的な問題を一つずつクリアしていく必要があります。
それから熟年離婚を決めても遅くはないでしょう。
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