2か月前に車で走っていたとき、車道の真ん中に猫がうずくまっているのを発見しました。
車にひかれては危ないと、猫を移動させるため車を近くに停めて近寄ると、その成猫はひどい猫風邪をひいて目や鼻がふさがっており、足の付け根に怪我も負っていて動けなくなっていました。
どうするか迷いましたが、車にたまたまIKEAの大きなショッピングバッグと子どもの着古したフリースが積んであったので、それらでくるんで保護し、動物病院に連れていくことにしました。
保護した猫はかなり危ない状態
筆者は犬を飼っており、かかりつけの動物病院があるので、そちらを頼ることにしました。
先生にみせてわかったのは、猫はかなり危ない状態だということでした。
推定1-2才のオス猫
マイクロチップは入っていない
ひどい猫風邪をひいており、目は目ヤニでふさがれ、鼻もつまっていて食べ物のにおいがわからない
少なくみても数日間は脱水状態にあった
弱りすぎて自分で食事がとれない
足の付け根は裂傷で(猫同士の喧嘩によるものかもしれない)膿んで蛆がわいており取り除く必要がある
先生の説明をひととおり聞いたあと、猫を入院させてもらえることになり、御礼を言っていったん帰宅しました。
猫の回復を祈りつつ、現実的には以下の3点について考えなくてはなりませんでした。
2. 猫の元の飼い主を探す(迷い猫の可能性を探る)
3. 猫が元気になったあとにどうするか
市の「傷病猫制度」を利用すると補助がある
筆者の住む自治体には「傷病猫制度」という公的制度があり、市の補助金を使って怪我をした野良猫の治療が可能でした。
ただし担当者に問い合わせたところ、以下のことに同意するのが条件でした。
市が指定する動物病院へすぐに転院して治療を受けさせること
治療が済んだら動物愛護センターへ移送して可能なら里親探しをするが、猫のその後については一切照会できないこと
治療が困難だと判断した場合は殺処分の可能性があること
「殺処分」のリスクに、どうしても同意できず
せっかく助けた命ですから、どうしても殺処分のリスクがある点に同意できず、この制度を使わずに今の動物病院で治療を継続してもらうことに決めました。
市の「迷子猫」は空振り、Twitterはバズったけれど…
2022年以降ペットショップで販売する子猫・子犬にマイクロチップを装着するよう義務付けられているため、飼い猫ならチップを読み取れば飼い主がわかるかと思ったのですが、筆者の保護した猫はマイクロチップが入っていませんでした。
次にしたのは、市役所の衛生課に「迷子猫」の問い合わせです。
飼っていた猫が迷子になった場合、飼い主がその特徴や時期や居住地域を市に届け出ると「迷子猫」として登録し、役所で情報を保管してくれるのです。
問い合わせてみたところ、保護した猫と近い条件の「迷子猫」の登録がありました。
しかし飼い主さんへ写真を送ってみたところ、残念ながら「うちの猫ではありません」とのことでした。
他にTwitterでも写真とともに投稿し、元の飼い主さんが名乗り出てくれるのを待ってみました。
閲覧数は2万を超え、リポストも500件以上とかなり拡散されたのですが、残念ながら元の飼い主さんは見つかりませんでした。
これらの経験を通じて、「この子は野良猫なのだ」という前提で、猫の今後を考える必要があると思いました。
「地域猫」団体に相談してみる
いろいろ相談をするなかで、「地域猫」という新しい取組みがあることを知りました。
野良猫に不妊手術を施したうえ、地域住民の方々の合意のもと、特定のごはん場やトイレを設置し皆で適切に面倒を見ていくという取組みです。餌の費用などは、寄付などでまかなわれているケースが多いそうです。
また、不妊手術の費用を補助してくれる自治体もあります。下記の横浜市の例では1頭につき5,000円補助が出ます。
動物愛護協会でも補助事業を行っています。補助上限は、不妊手術(メス)1万円/去勢手術(オス)5,000円です。
しかし、保護した猫のお見舞いに通ううちに「この子を家の子として迎えたい」という気持ちが日に日に強まっていきました。
また動物病院の先生が、
「この子を保護した場所に戻すのはやめた方がいいと思うよ。この子が今こうなっているのは、野良猫社会で生きていけなかったからだよ。自分の餌場もとれなかったんだと思うよ」
と話してくださったことが、私の心を動かしました。
そして猫を飼うことを決断しました。
飼う決断をしていざ退院のお迎え!カードの限度額を上げて臨んだら…
猫の入院期間は1か月にも及び、入院期間中以下の治療を受けることができ、元気になりました。
最初の1週間は点滴による経管栄養(その後3週間は食餌)
抗生物質の投与
裂傷に沸いた蛆の除去と消毒、縫合
ノミ・ダニの駆虫
体の清拭、下痢を起こしたらお尻のシャンプーと整腸剤を飲ませる
目薬にて目やにの治療
感染症の各種検査(全て陰性でした)
去勢手術
途中から急激に回復したため、去勢手術まで済ませて退院することになりました。
猫はすっかり元気になり、ごはんの時間になると看護師さんにニャーニャーと鳴いて要求するほど元気になりました。
気になるのは入院費用です。
ペットメディカルサポートのアンケート調査によると、猫の入院平均費用は1日あたり1万7,000円だそうです。
30日間入院したため、少なく見積もっても50万円の支払いはあると覚悟して、カードの限度額を上げて迎えにいきました。
ところが、会計では驚きの結果となりました。
「当病院の方針で、動物愛護の観点から、野良猫さんには治療費をいただきません。」
親身になって猫に愛情を注ぎ、元気にしてくださったうえに、費用が0円とは…。
感動と感謝の気持ちでいっぱいになり、この子の救命に関わってくださったすべての方のためにも、猫を大切に飼おうと心に誓いました。
その後は飼い主とともに「家猫修行中」
多くの方の助けがあって助かった命、私は猫を飼うのが初めてなところもあって、不慣れながらも猫との暮らしを続けています。
病院のご厚意で治療費は0円でしたが、飼うために必要なケージやお世話のためのグッズ、餌の費用などがかかってきます。
負傷した野良猫を保護する際には手袋などをして衛生面に気を付けながら猫を安全な環境へ保護し、動物病院や保護団体、自治体などへ相談をしてください。
とっさのことで多くの方が慌てたり保護するか迷うと思いますが、保護した以上は猫のその後について、責任を負う必要があります。
今回は動物病院のご厚意でたまたま治療費がかかりませんでしたが、保護した人が費用を負担するケースももちろんあります。むしろ支払いがある場合の方がほとんどだと思います。
判断に迷う場合は、猫を安全な環境へ移したうえで、自治体や保護団体にすぐ連絡をとってください。
保護団体の多くが寄付で費用をまかなっているため、自分で飼えない場合には、猫を託したあとに運営費用や物品の寄付などを通じて少しでも貢献するなど、できることがあります。
同じような体験をする方がいらっしゃれば、この記事が参考になることを願っています。