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【4月~6月は残業をしない方が良い理由】それ以外の月の残業でも社会保険の保険料が増える理由と具体例


【4月~6月は残業をしない方が良い理由】それ以外の月の残業でも社会保険の保険料が増える理由と具体例
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4月頃にニュースサイトを読んでいると、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料が増えるため、4月~6月は残業しない方が良いと記載された記事を、毎年のように見かけます。

例えば月末締めで翌月10日に月給が支払われる会社の場合、3月分の残業代は4月10日に支払われます。

そのため4月~6月ではなく、3月~5月に残業しない方が良い会社もありますが、年度末が忙しい業界の場合、3月に残業しないのは難しい話ではないかと思います。

また業界によっては年度末よりも年末年始の方が忙しくて、12月辺りに残業が増える場合があるのです。

こういった4月~6月以外の月の残業でも、社会保険の保険料が増える可能性がありますが、その理由は次のようになります。

4月~6月以外の月の残業でも、社会保険の保険料が増える可能性

標準報酬月額に保険料率を乗じて保険料を算出する

入社する時の労働条件が社会保険の加入要件を満たしている場合、勤務先は月給から天引きする保険料の金額を算出します。

この時には入社する時の月給(各種の手当を含む)の金額を元にして、まずは標準報酬月額を決定するのです。

例えば入社する時の月給が20万円前後だった場合、月給と標準報酬月額の関係は次のようになります。

【月給が18万5,000円以上~19万5,000円未満】

標準報酬月額:19万円(健康保険は16等級、厚生年金保険は13等級)

【月給が19万5,000円以上~21万円未満】

標準報酬月額:20万円(健康保険は17等級、厚生年金保険は14等級)

【月給が21万円以上~23万円未満】

標準報酬月額:22万円(健康保険は18等級、厚生年金保険は15等級)

このようにして決定した標準報酬月額に、健康保険と厚生年金保険の保険料率を乗じて保険料を算出するのです。

主に中小企業の社員が加入する協会けんぽの保険料率は、都道府県ごとに違うのですが、2024年度の東京都の保険料率は9.98%(介護保険に未加入の40歳未満の場合)です。

一方で厚生年金保険の保険料率は全国一律であり、2017年9月以降は18.3%で固定されています。

例えば月給が「18万5,000円以上~19万5,000円未満」の範囲内にあるため、標準報酬月額が19万円に決まった場合、保険料率を乗じて算出した保険料は次のような金額になります。

  • 健康保険:19万円×9.98%=1万8,962円

  • 厚生年金保険:19万円×18.3%=3万4,770円

ただ社会保険の保険料は勤務先と従業員が折半して負担するため、各従業員の月給から天引きされる保険料は、次のように半額になるのです。

  • 健康保険:1万8,962円÷2=9,481円

  • 厚生年金保険:3万4,770円÷2=1万7,385円

4月~6月は残業しない方が良い理由

入社した後に定期昇給があったり、結婚して家族手当の対象になる配偶者ができたりすると、入社した時よりも月給が増えます。

これにより現在の月給と適用されている標準報酬月額との間に、隔たりが生じる場合があるため、勤務先は年に1回のペースで定時決定を実施し、両者の隔たりを解消するのです。

定時決定の対象になるのは原則として7月1日に、社会保険に加入している方です。

また定時決定の際は4月~6月の月給の平均額を算出し、これを元にして新たな標準報酬月額を決定します。

注意点としては4月~6月の中に、給与の支払対象の日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)未満の月がある時は、その月を除いて平均額を算出します。

例えば平均額が「18万5,000円以上~19万5,000円未満」の範囲内にある場合、標準報酬月額は入社した時と同様の19万円になるため、保険料の金額は変わりません。

一方で定期昇給や残業代などによって、平均額が「19万5,000円以上~21万円未満」の範囲内になった場合、標準報酬月額は入社した時よりも1等級上がって20万円になります。

これを元にして算出した保険料は次のようになり、標準報酬月額が19万円の時よりも月1,414円ほど金額が増えるため、4月~6月は残業しない方が良いのです。

  • 健康保険:20万円×9.98%÷2=9,980円

  • 厚生年金保険:20万円×18.3%÷2=1万8,300円

定時決定の際に決まった新たな標準報酬月額と保険料は、月給の金額に大きな変動がなければ、その年の9月から翌年8月までの1年間に渡って適用されます。

ただ社会保険の保険料は翌月の月給から天引きされる場合が多いため、保険料の負担増を実感するのは、9月分の保険料が天引きされる10月からになるのです。

4月から6月は残業をしない方が良い理由

定時決定の時期が来る前に隔たりを解消する随時改定

現在の月給と適用されている標準報酬月額との隔たりは、上記のように定時決定で解消します。

しかし月給の金額が大幅に変動した時には、定時決定の時期が来る前に、随時改定で両者の隔たりを解消するのです。

随時改定の対象になるのかを判定する際には、月給の金額が大幅に変動した月から3か月間の月給の平均額を元にして、新たな標準報酬月額を算出します。

これと適用されている標準報酬月額を比較して、2等級以上の差が生じている場合には、随時改定の対象になるのです。

例えば適用されている標準報酬月額が19万円の場合、3か月間の平均額を元にして算出した標準報酬月額が22万円以上なら、随時改定の対象になります。

その理由として標準報酬月額の19万円と22万円の間には、標準報酬月額の20万円があるため、2等級以上の差になるからです。

注意点としては3か月間の中に、給与の支払対象の日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)未満の月がある時は、随時改定の対象になりません

随時改定の際に決まった新たな標準報酬月額と保険料は、月給の金額が大幅に変動した月から数えて4か月目以降に適用されます。

ただ社会保険の保険料は翌月の月給から天引きされる場合が多いため、保険料の負担増を実感するのは、4か月目の保険料が天引きされる5か月目からになるのです。

標準報酬月額を比較して、2等級以上の差が生じている場合には、随時改定の対象になる

4月~6月以外の月の残業で保険料が増える場合の具体例

年末年始が忙しい業界で働いているため、例えば11月~翌年1月に残業代が増加した時には、2月に随時改定が実施され、3月から社会保険の保険料が増える場合があります。

こういったケースで随時改定になるのは、11月(給与の締め日によっては10月)に基本給や時給が上がったり、各種の手当の対象になったりして、固定的な給与に変動があった場合です。

そのため11月~翌年1月に残業代が増加しても、固定的な給与に変動がなければ、原則として随時改定の対象になりません。

また固定的な給与の変動と残業代の増加が重なっても、新旧の標準報酬月額に2等級以上の差が生じない場合にも、原則として随時改定の対象になりません。

ただ月給が2万円くらい増えると、新旧の標準報酬月額に2等級以上の差が生じるため、固定的な給与に変動があった時には、残業時間に注意した方が良いと思います。

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