多くの中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)や、一定規模以上の企業等が加入する健康保険組合の、健康保険料率と介護保険料率が2024年3月から改正されます。
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厚生年金保険料率は、民間企業の場合は法律上上限に達しているため改正はありませんが、健康保険料率と介護保険料率の改正は実務上も大きな問題です。
今回は、2024年3月からの健康保険料率と介護保険料率の改正について解説します。
保険料率について
全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険と介護保険料率は、都道府県ごとに保険料率が異なっています。
他方、会社が健康保険組合に加入している場合は、当該組合の保険料率が適用されると言う理解です。
よって、支払われている給与額は同じであっても、会社が属する都道府県が変わった場合や健康保険組合が変わった場合も、保険料率は異なった率が適用されるため、給与から天引きされる保険料の額は異なることが起こりえます。
国民健康保険料
厳密には市区町村ごとに細かな計算は異なりますが、前年の所得に応じて保険料が決まります。
よって、退職直後と退職から1年経過時では、後者の方が保険料は低くなる傾向にあります。
国民年金保険料
国民年金の保険料は毎年度一律の額が発表されます。
よって市区町村ごとに異なることもなく、国民年金の第一号被保険者であれば、一律に同じ額と言う理解です。
年金制度は、1階部分に国民年金、2階部分に厚生年金という構造になっていますが、標準報酬月額の下位にあたる部分については、国民年金保険料よりも厚生年金保険料の方が低額です。
任意継続被保険者の場合
任意継続被保険者の保険料については、退職時の標準報酬月額に居住地の都道府県の保険料率を乗じた額が保険料となります。
また、40歳以上65歳未満の方の場合は、介護保険料率も含まれます。
ただし、保険料には上限があります。
退職時の標準報酬月額が30万円を超えている場合には、30万円の標準報酬月額によって算出された保険料額となります。
任意継続被保険者の保険料のよくある勘違いとして、「保険料が在職時よりも高いと感じる」という声です。
これは制度を理解することによって誤りであることがわかります。在職中保険料は労使折半であったものの、当然退職後は会社から折半してもらうと言うわけにはいかず、全額をご自身で負担しなければなりません。
よって任意継続被保険者になったから保険料の率が高いということではなく、制度の仕組みとして退職後はご自身で全額を負担しなければならなくなるため、高く感じてしまうということが言えます。そして保険料は原則として2年間は変わりません。
国民健康保険料と任意継続被保険者の保険料について
退職後、どちらに加入するかは本人の意思に委ねられます。
必ず国民健康保険に加入しなければならないというわけではなく、また任意継続保険者はあくまで任意ですので、必ず任意継続被保険者を選択しなければならないということもありません。
では、何を基準に判断するかと言う点については、1つの目安として
保険料はどちらが安いか
という点が考えられます。
国民健康保険料の保険料については、厳密には市町村によって保険料の計算方法は異なりますが、原則として前年の所得によって保険料が決定されます。
任意継続被保険者の加入期間は最大で2年間です。
よって、退職から1年経過することによって、失業状態が続いていた場合、2年目以降は国民健康保険料の方が安くなるということが考えられます。
一例として、
退職直後の1年間は任意継続を活用し、
翌年から国民健康保険に切り替える
という考え方もあります。
なお任意継続被保険者は退職後20日以内に申し出をしなければなりません。
長い期間徴収されるからこそ制度の仕組みをしっかりおさえよう
健康保険、介護保険料率は、厚生年金保険料率に比べて低い率ではあるものの、健康保険料は75歳以降徴収されなくなります(後期高齢者医療制度に移行するため)。
よって、厚生年金保険料よりも長い期間徴収されることとなりますので、制度の仕組みはしっかり押さえておくことが重要です。
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