40代頃になると老後資金も気になり、子どもがいると教育資金の手当ても必要です。
マイホームをお持ちの方も多いと思います。マイホーム所有者の8割が、住宅ローンを利用しています。
家計を考えていくうえで、マイホームの価格を知ることは重要です。
住宅ローンとマイホームの売価を比べて、黒字であれば問題ありません。
しかし赤字(ローンの方が多い)場合は、収入減や失業などの有事に備えて、対策が必要です。
マイホームの価格を知る代表的な方法は、下記がありますが、一長一短です。
・ 不動産会社に査定してもらう(販促活動の対象となる)。
・ 固定資産税評価書を確認する(計算方法が記載されていない)
・ 地価公示、県基準地、路線価を見る(土地しかわからない)。
マイホームが分譲マンションであれば、不動産競売物件情報サイトを見てみてください。
もしかすると、マンションの1室が、掲載されているかもしれません。
部屋と間取りや広さがさほど変わらないのであれば、評価額などの情報はマイホームとほぼ同じはずなので、計算過程の指標も目安になります。
マイホームの価格を知るうえで参考になる、競売の情報について解説します。
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不動産競売手続
不動産競売手続は、債権者の申立てにより目的不動産を差し押さえてその不動産を売却し、売却代金から配当を受けて債権の回収を図る手続です。
参照:最高裁判所
競売不動産の閲覧
競売不動産の情報は、「物件明細書」、「現況調査報告書」、「評価書」のことを言います。
競売3点セットで公表されます。
競売不動産の価値については、不動産鑑定士により、「評価書」が作成されます。
閲覧方法は、裁判所に直接赴く方法と、サイトからの閲覧方法があります。
評価書について
試算額
評価書では競売対象不動産の価格を3つの視点で評価しています。
・ 積算価格の建物価格(新たに新築し、経年劣化に合わせて減価算出)
積算価格の敷地権価格(参考となる地価公示 (1) などから算出)
・ 比準価格 同種不動産の取引事例 (2) から算出
・ 収益価格 マイホームを賃貸借するシミュレーションをおこない、その収益からマイホームの価格を算出。
利回り (3) 支払賃料 (4) を提示。
試算価格の調整と競売市場修正について
上記3つの価格(積算、比準、収益)を調整して資産価格を提示されます。
今回は、マイホームの価格を知るためであり、マイホームが競売物件ではありません。
よって競売市場修正を行わない価格を参考とします。
算出資料と付属資料
算出資料
評価書は、不動産鑑定士が競売物件の価値を評価するため作成されるものです。
私は20年以上、不動産や建設業関係に従事しておりますが、この評価書の計算過程をすべて把握できません。
反対に申し上げれば、不動産の専門家でないと算出できない有用な指標がたくさん入っています。
私は評価書を見る際、下記 (1) ~ (4) を参考にしています。
(1) 地価公示など
地価公示などはマイホームの土地評価の際に参考になりますが、マイホーム近辺の地点が参考となるとは限りません。
評価書からマイホームの参考になる地点を知ることができます。
(2) 取引事例
マイホームと比較対象になる取引事例を知ることができます。
取引事例は公表されるとはかぎりません。
不動産鑑定士は、土地購入者に対し「お尋ね」を送付し、事例として収集しています。
(3) 利回り
マイホームを賃貸する際の、利回りを知ることができます。
利回りは、建物の価値や近隣状況を反映しております。
(4) 支払い賃料
貸し出した際の賃料を知ることができます。
これらは調査しないと知りえないものであり、不動産業務の最高峰である不動産鑑定士が鑑定したものは、かなりの精度があります。
添付資料
評価書には付属資料が添付されています。
それら原則、法務局等を介して入手できる有料の資料です。
それらを無料で確認できます。
・ 地図(公図)
・ 地積測量図
・ 建物図面
・ 各階平面図
おわりに
マイホームと同じマンションが競売資料として掲示してあれば、有用な情報を無料で知ることができます。
ただし、競売情報を見る際は、「配慮」を忘れないでください。
不動産の所有者にとって、競売されるということは、マイホームや大切な不動産を失うことです。
競売が公示されると、不動産会社が「仕入れ」のため、「下見」に訪れたり、聞き取り調査を行うことになります。
競売される事情があるにしろ、該当者は犯罪者ではありません。人生において、とても辛いことです。その点を理解しましょう。
該当者への誹謗中傷は絶対にやめましょう。該当者への接触も避けるべきです。
競売は取り下げも多く、売却されない可能性も高いことも考慮してください。
現在はインターネットからダウンロードする三点セットで、室番号まで把握できますが、個人情報として扱うべきです。
特に同じマンションの方へ、安易に他言するべきではありません。
マイホームを不動産鑑定士に鑑定依頼すると、数十万円の費用が必要です。
それに準ずる情報が手に入るのは、大きいメリットです。自身の財産を把握するため、競売資料をうまく利用しましょう。(執筆者:CFP、1級FP技能士 金 弘碩)
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