高齢の方に中には、生命保険や医療保険に入られているという方も多いのではないでしょうか。
しかし、
- 家族は「どこの会社」の「どういった補償内容」の生命保険や医療保険に入っているのか、
- 生命保険では「受取人は誰になっているのか」を
知らないという場合も多いです。
また認知症などで、保険証券がどこにあるか分からなかったり、どういった保険に加入しているか本人も分からないという場合もあります。
生命保険や医療保険の保険金請求の期限は、おおむね3年と決まっています。
期限が過ぎても、被保険者が保険に加入していることを知らなかったという理由であれば、請求できる場合もありますが、実際に支払われるかとどうかは、保険会社によります。
万が一の時に慌てないように、そして請求期限内に請求ができるように、今回は「認知症などで保険請求が難しい場合でも請求できる方法」をお知らせしていきます。
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1. どの生命保険に入っているか分からない時は
家族が、保険証券を分かりやすいところに保管していれば、どのような生命保険に入っていたか確認できます。
しかし、保険証券がどこにあるか分からず、本人もどの生命保険に入っているか分からない場合、生命保険に加入しているかどうかすら分からなくなります。
そのような場合は、生命保険協会に問い合わせることによって、どこの会社の保険に入っているかが分かります。
契約している会社が分かれば、契約内容を確認することが可能です
生命保険協会への問い合わせは「契約照会制度」と言い、照会対象者が以下の3つの状態になった場合に問い合わせができます。
- 死亡した
- 認知判断能力が低下した
- 災害で死亡または行方不明になった
申請は、生命保険協会に行い、生命保険協会が生命保険会社42社に調査依頼を行います。
すべての生命保険会社に調査依頼をするため、2週間程度かかります。
申込方法は、書面とweb申請があります。
照会費用は、1件3,000円(税込)です。
保険に入っているか分からない、入っているようだがどの会社か分からない等の場合の、第一歩になります。
参照:一般社団法人 生命保険協会 生命保険契約照会制度のご案内
2. 保険の受取人が認知症だった場合
原則として、保険金や給付金などの受取人が給付の手続きを行わなければなりませんが、認知症で請求する意思表示が難しい場合に、代理人になり代わりに請求する方法があります。
被保険者が受取人となる場合にだけ利用できる制度で、「被保険者代理制度」と言います。
あらかじめ、被保険者代理人を指定することで保険金給付の請求ができます。
各保険会社によってことなりますが、被保険者代理人になれるのは、
(例)
- 被保険者の戸籍上の配偶者・直系血族
- 被保険者の兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は甥姪)
などの方です。
被保険者代理人をあらかじめ指定しておくことで、認知症だけでなく事故などで請求の意思表示が難しい時にも、スムーズに保険金給付ができます。
事前の備えとして、ぜひとも被保険者代理制度を利用することをおすすめします。
3. 成年後見制度を利用する方法も
本人による保険金などの請求が難しい場合、成年後見制度を利用し、成年後見人などが代わりに請求を行うことができます。
成年後見制度には、
- 将来的に認知症になった時の財産管理等が心配な方が利用する「任意後見制度」、
- 現在判断能力が不十分で、契約や手続きへの心配がある方には「法廷後見制度」
があります。
任意後見制度は任意後見人を自分で選ぶことができますが、法廷後見制度は裁判所が選任します。
どちらの場合も、書類や登記料がかかります。
被保険者代理制度を利用することが難しい方におすすめですが、保険金などの請求だけではなく、財産の管理や身上監護も後見人の仕事内容となり、後見人などの報酬が必要となるため、利用についてよく検討することが必要です。
普段の生活の中で確認しておこう
今回は、生命保険や医療保険の請求、受け取りがスムーズにできる方法を見てきました。
どの方法も書類を用意したり、時間が必要だったりします。
制度の活用ももちろんですが、普段の生活の中で保険証券の保管場所や保険金の受取人を本人と確認しておくことが、1番スムーズな方法です。
また、保険会社から年に1回届く「契約内容のお知らせ」を取っておくことで、さらにスムーズに手続きを行うことができます。
「契約内容のお知らせ」を確認することは、保険内容の見直しにもつながります。
確実に保険金や給付金を受け取る為に、家族の保険については家族同士で確認しておくことをおすすめします。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)
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