2022年2月頃までは1ドル114円前後だった為替レートが、今や1ドル140円台になり、時には150円台と急激な円安になっています。
また、国内の定期預金の金利は0%に近い水準ですが、海外ですと国内の定期預金と比べると高い金利水準になっています。
物価も上昇しており預貯金だけでは目減りしてしまう…。
外貨預金は、物価上昇の救世主となるのでしょうか。
1. 為替手数料の安い金融機関を選ぶ
外貨預金は、円を外貨に換えて預金を行います。
また、円として引き出す際には外貨から円に換える必要があります。
それぞれにおいて、原則として為替手数料が発生します。
為替手数料は、取り扱う金融機関や通貨の種類によって異なっています。
例えば、為替レートが1ドル145円だった場合、為替手数料(片道)が10銭、50銭、1円だった場合の為替レートに対する為替手数料の割合は下記の通りになります。
- 為替手数料(片道):10銭 0.069%
- 為替手数料(片道):50銭 0.345%
- 為替手数料(片道):1円 0.69%
※為替手数料/為替レートで算出
わずかだと思われるかもしれませんが、円から外貨、外貨から円と原則それぞれに発生しますので、取り扱う金融機関や通貨を選ぶ際には金利だけでなく、為替手数料も確認しておく必要があります。
2. 外貨預金はペイオフの対象外
近年、金融機関の破綻はありませんが、万が一、預け入れている金融機関が破綻した場合には、
円の普通預金や定期預金であれば、1,000万円までは預金保険制度(ペイオフ)の対象
となります。
一方で、外貨預金はこの預金保険制度(ペイオフ)の対象外ですので、預入金額に関係なく一部カットの対象となることがあります。
念のため、金融機関の経営状況は確認しておくとよいでしょう。
3. 外貨預金は高金利よりも為替変動に注意が必要
外貨預金は文字通り「預金」ですが、円の定期預金とは異なり価格変動リスクが生じます。
FX(為替証拠金取引)と聞けばリスクが高いと思われても、外貨預金と聞けばあまりリスクはないと思われるかもしれませんが、どちらも為替取引ですので為替リスクは生じます。
イメージだけで判断しないようにしましょう。
そして、外貨預金も含めて為替取引では高金利よりも為替の値動きの方が収益を左右します。
例で見てみましょう。
- 米ドル定期預金
- 預入金額:100万円
- 金利:3%
- 預入時の為替相場:1ドル145円
- 為替手数料:25銭(片道)
→・預入外貨額:6,884.68ドル ・受取元利合計外貨額(税引後)7,049.27ドル
1年後の為替相場:145円の時(変化なし)
- 受取元利合計円受取額(税引後):102万381円(為替手数料込み)
- 税引後の実質利回り:2.038%
1年後の為替相場:150円の時(やや円安)
- 受取元利合計円受取額(税引後):105万5,628円(為替手数料込み)
- 税引後の実質利回り:5.562%
1年後の為替相場:160円の時(円安)
- 受取元利合計円受取額(税引後):112万6,121円(為替手数料込み)
- 税引後の実質利回り:12.612%
1年後の為替相場:140円の時(やや円高)
- 受取元利合計円受取額(税引後):98万5,135円(為替手数料込み)
- 税引後の実質利回り:-1.487%
1年後の為替相場:130円の時(円高)
- 受取元利合計円受取額(税引後):91万4,642円(為替手数料込み)
- 税引後の実質利回り:-8.536%
前提条件では金利3%と国内預金では考えられない高い金利ではありますが、為替手数料と為替変動により、外貨預金では金利(利息)収入よりも為替相場によって収益は大きく変動します。
1度に多額の預け入れはリスクが高い
外貨定期預金の場合は、中途解約について制限を設けている場合もあります。
金融機関によって取り扱いが異なりますので、預入時に必ず確認が必要です。
金利は高めですが中途解約が制限されているのであれば、外貨定期預金ではなく、金利は低いですが外貨普通預金にて中途解約できるタイミングの選択肢を多く持っておくのも1つでしょう。
一部のネット銀行では、1週間または2週間で満期を迎える定期預金もあります。
また、預け入れる国によっては、国内預金では考えられないほどの高い金利の通貨もありますが、政情不安や経済情勢により為替が大きく変動することもあります。
さらに、
「米ドルも含めて今後の為替レートを予測するのは、専門家でも株式相場以上に難しい」
と言われています。
1度に多額の金額を外貨預金に預け入れることは、リスクがかなり高くなります。
その後に急激な円高になった場合には、利息収入だけでは補うことができず多額の為替差損を抱えることになります。
なお毎月、一定額にて購入して積み立てていく「ドルコスト平均法」により、購入単価を平準化させることができますので、検討してみてください。
円安、高い金利だけに目を奪われて飛びついてしまうと、後から思わぬリスクを背負うことになります。
当面の間は使う予定がない余剰資金で行うようにしましょう。(執筆者:CFP、FP技能士1級 岡田 佳久)