「手数料が無料です」
「お得な手数料キャンペーン実施中!」
こんなフレーズを銀行のホームページでよく見かけます。
新しい生活スタイルが定着してきた現在では、誰でもお得になる話題は気になるものです。
また、銀行手数料について多くのサイト記事があるように、銀行の手数料への関心が高いことがよくわかります。
そこで、こうした記事にある
・ 銀行の手数料は無料にすることができるのか?
・ そもそも銀行の手数料はどんなものがあるの?
こうした素朴な疑問に銀行員がお答えします。
この記事を読めば、銀行の手数料について理解が深まりますので、日々の暮らしに役立ててください。
銀行の手数料は交渉しても無料になりません。
銀行にはいくつもの手数料があり、交渉しても無料にはならないのが原則です。
では、手数料で代表的なものを見ていきましょう。
【代表的な銀行手数料】
・ 振込の手数料
・ ATMの手数料
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代表的な銀行手数料その1.振込手数料
代表的な銀行手数料として、まずあげられるのが振込手数料です。
振込手数料とは?
離れた相手にお金を送金するのが振込です。
この場合、お金を受け取る相手の銀行口座に入金されるので、振り込むという表現が使われます。
最近では減りつつありますが、小切手を郵送する方法や郵便為替などの送金方法もあり、こうした送金手段を総称して国内送金、内国為替とも呼んでいます。
振込手数料は、相手の預金口座に入金することへの対価として支払う手数料になります。
ちなみに、自分で自分の口座にお金を移動させるのは振替と呼び、手数料は無料なのが一般的ですが、銀行により取扱いは異なります。
なぜ振込で手数料が必要なの?
ではなぜ振込には手数料が必要なのでしょうか。
まず、離れた相手にお金を届ける方法で、現金書留をイメージしてください。
現金をふつうの封筒に入れて送ることもできますが、この場合は途中で紛失したり、封筒からお金が落ちたりして相手に届かなくなっても保証はされません。
そのため現金書留以外の送金はしないで、と言われています。
これは振込も似た考え方で、振込は離れた相手に対し安全にお金を届けてもらうために手数料を支払っているのです。
そして、安全にお金を届けることを保証するという点で、振り込む金額が大きいほど手数料が高くなるいわば「従量制」なのも、これが理由です。
またATMより窓口の振込手数料が高いのは、事務負担の手数料が上乗せされるからです。
私が入社した30年以上前の話ですが、その頃の銀行では、振込専門の担当者が一つの支店に何名もいて、伝票や入金操作などをほとんど手作業で行っていました。
もちろん今ではかなり省力化されましたが、それでもやはり人の手を介する分だけ銀行にとっては手間がかかる、つまり「手数がかかる分の上乗せ料金」だとも言えるのです。
ちなみに、実際の事務手続きは1万円の送金でも1億円の送金でも同じです。
共通して、金額が大きいほど保証する額が大きくなり、手数料も高くなる仕組みです。
振込手数料を無料にする方法
振込手数料は、銀行に頼んでも安くなりませんし、ましてや無料にはしてもらえません。
振込の方法や金額に応じて、悪い意味で平等です。
しかし、自分が動けば振込手数料を無料にできます。
そのキーワードは「タラ・レバ」です。
タラ・レバとは
● 〇〇を契約してくれたら振込手数料は安くなる
例)銀行で投資信託を購入してくれたら、振り子も手数料が一律で安くなる
● ▲▲の条件を満たしていれば振込手数料は無料
例)インターネットバンキングサービスで同じ銀行への振込であれば、振込手数料は無料
といったものです。
ここでの「タラ」は銀行の仕事を顧客が自分自身でやってくれることへのお礼・対価です。
窓口でもATMでも手間や経費がかかる振込ですが、顧客自身がインターネットバンキングを利用し、すべてやってくれるわけです。
「銀行がラクになるからありがとう」と言うわけですね。
次に「レバ」は対象者限定、シチュエーション限定で手数料が減免されるものです。
銀行の省力化という点は「たら」と同じですが、さらに特定(インターネットバンキング利用で同じ銀行向け振込の場合に限って)のケースに絞って無料にする理屈です。
「いくつかのハードルを越えれば手数料が無料になる」と言えます。
そのおトク、ほんとうにおトク?
ではここで考えて見ましょう。
振込手数料が無料になる契約をした場合など、ほんとうにおトクといえるのでしょうか。
たとえばインターネットバンキングやスマホ取引で、手数料が無料になることもあります。
これは説明した通り「あなたが銀行のしごとをやってあげた」から安くなっているのです。
では次の点はどうでしょうか。
・ 同じ銀行なら手数料が無料とは言っても、相手が同じ銀行とは限らない
・ インターネットバンキング月額基本手数料がかかると、お得とは言えないのでは?
*個人では無料ですが、法人(個人事業主など事業用も含む)では月額基本手数料(1,000円~5,000円・税別)が必要になる銀行もあります
そしてもう一つ、あなたは1か月に何回振込をしますか?
事例)メガバンクでは、同じメガバンクで別の支店宛、振込額3万円以上、ATMで現金振込だと440円の手数料が、インターネットバンキングを利用すれば無料になる。
この場合でも、そのメガバンクに口座がない人は、自分で新しく口座を作り、インターネットバンキングの契約をして、初期登録や振込の操作をしてと、これだけの労力が必要になるのに、振り込みするのは月に1回あるかないか、これでおトクとは言えないと思います。
大事なのは「手数料がおトク」なだけではなく「手数料があなたにとっておトク」かを考えるべきです。
代表的な銀行手数料その2. ATMの手数料
代表的な銀行手数料、次はATM手数料についてです。
ATM手数料とは?
ATM( Automatic Teller Machine *Teller・テラーとは出納、現金を取り扱うという意味)
ATMは「現金自動預け払い機」の英略で、口座への入金と出金、振込ができて、小さな銀行ともいえる機械です。
ATMを利用して入金、出金するときにかかる手数料がATM手数料です。(ATMの振込手数料は説明済みなので、ここは入出金について解説します)
なぜATMで手数料が必要なの?
ATMは高級車から1戸建ての家くらいまでとかなりの高額で、また維持費用もかかります。
利用者はこうしてATMの費用を支払い、それがATM手数料の根拠になっています。
また、お金を自宅に置いておいても、紛失や盗難、火災で焼失などのリスクがありますが、銀行に預ければ安全に保管してもらえます。
そして、自分が必要なときに出し入れができる「安全で便利な現金保管庫」としてATM手数料がかかるとも言えます。
ちなみにATMの費用を顧客がまかなっているという点では、本当なら銀行窓口営業時間中でも手数料は必要な理屈です。
しかし、それではさすがに利用者の負担が多くなりますし、逆に窓口へ顧客が殺到してしまうので、時間外や休日などに手数料が発生する仕組みになっているのです。
また他行口座でATM取引する手数料も、取引銀行まで遠く、行く時間もない人のために、ATMで他行の出金を扱ってあげる対価として手数料がかかる論法です。
ここまでまとめるとATM手数料とは、窓口営業時間外や休日に入出金したり、他の銀行まで行かなくても取引できる利便性と引き換えに払うお金となります。
ちなみに入金と出金では、実は入金のほうがコストがかかります。
出金は、言ってみれば決められた金額の紙幣や硬貨を「吐き出す」だけです。
いっぽう入金では受け入れたお金を選別し、数えるなどの手間がかかります。(銀行によっては大量の硬貨を入金するときに手数料が必要なのもこれが理由です)
とはいっても、お金を預けてもらうのが銀行の使命なので、入金の手数料は大量の場合や時間外、休日などに限定されています。
これは銀行員として私の個人的予想ですが、経費の面から将来的に入金も手数料がかかるようになっていく気がしています。
ATM手数料を無料にする方法
ATM手数料を無料にする方法はいくつか考えられます
・ 自分がATMにあわせる~手数料がかからない曜日、時間に利用する
・ 無料になるサービスを契約する~〇〇を契約したら1か月に3回まで無料など
・ 「上得意客」になる~預金残高や投資商品の残高が多いと手数料がおトクになる
そのおトク、本当におトク?
無料になる例としてあげたのは『〇〇銀行のATM手数料を無料にするマル秘テクニック〇選』といったネット記事で、よく取り上げられているものです。
銀行員の私はこうした記事を読むと「おトクになる事実は間違っていないけれど、少し無責任だなあ」と感じてしまいます。
それはおトクになるという記事はおトクになる事実は説明しても、そのあとの説明が抜けているからです。
たとえば、記事ではこう言っています。
「ATM手数料がかからない曜日や時間に、まとめて入出金するようにしましょう」しかし、これには疑問を覚えます。
なぜなら、平日の銀行窓口営業中にはできないから手数料で悩んでいるのです。
また、営業時間外や夜間にしかATMを利用できない人が多いからこそ、手数料と設定しているとも言えるのです。
このように、ただメリットだけを強調したり、デメリットには言及しなかったりの不親切な記事には注意してください。
同じような記事の例として
・ 「〇〇銀行はATM手数料が無料でお得!」とあるが、よく読むと最後に、クレジットの年会費が高いゴールド会員限定の特典だった
・ 「ATM手数料が無料な▲▲銀行で口座を作りましょう」と言う記事で紹介されていたのは、投資信託などの取引が前提になっていた
おトクと引き換えに何かが必要なら、それが自分にとってメリットがあるか? 考える必要があります。
まとめ
銀行の手数料が存在するのは、それで儲けたいからに他なりません。
また、手数料を無料にしないのは、そこで手数料をもらえないと経費がペイできないからでもあります。
そして、どの手数料に重きを置くか? は銀行によって違います。
たとえばネット銀行は、そもそもリアルな店舗を持っていませんので、窓口扱いと比べた手数料設定自体ができません。
またATMやインターネットバンキングの利便性が命綱とも言えるので、一般的な銀行より優遇やサービスが幅広いのです。
そして最後にもう一度、無料になる方法が、自分にとってほんとうにメリットがあるか、を見極めることが大事です。
一部のネット記事はおトクになる部分だけを強調し、デメリットをぼやかしたり、全く触れていないものが見受らけれます。
そうした無責任な記事に踊らされることなく、自分自身でメリット、デメリットを考えて見てください。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)
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