不動産を売却した方は、確定申告手続きが必要になるかもしれません。
不動産売却は突発的なものなので、確定申告をしていない人はもちろんのこと、毎年確定申告している人でも、不動産売却の申告を忘れてしまうケースがあります。
税務署から指摘されると余計な税金を支払うことになりますので、確定申告前に不動産譲渡所得税の手続き方法をご確認ください。
確定申告が必要になるのは売却利益が発生した場合
不動産を売却した際は譲渡所得の対象となり、譲渡所得税は売却利益に対して課されます。
たとえば600万円で購入した土地を1,000万円で売却した場合、差額400万円の利益(譲渡所得)に税率を乗じて譲渡所得税を算出します。
売却金額よりも購入金額の方が高かった場合、赤字となりとなりますので譲渡所得税は発生せず、不動産売却に関する申告も基本的に不要です。
売却不動産同士の損益通算は可能なので、同年中に複数の不動産を売却した際は、赤字となった不動産についても申告するメリットがあります。
一方で、特例制度の対象となるケースを除き、給与所得など他の所得との損益通算はできない点にはご注意ください。
譲渡所得税の税率は所有期間で変化する
不動産譲渡所得は給与所得や年金所得とは異なり、税率は所得金額の大小ではなく所有期間の長短で変わるのが特徴です。
<不動産譲渡所得の税率>
譲渡所得の種類 | 国税 | 地方税 | 合計 |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡所得は、売却した年の1月1日時点で所得期間が5年以下の不動産が対象です。
購入してすぐに売却した場合、利益の約40%は譲渡所得税として納めることになります。
長期譲渡所得は、売却した年の1月1日時点で所得期間が5年を超えている不動産が対象です。
金地金など総合譲渡所得に該当するものは、売却時点で5年を超えるかで判断しますが、不動産譲渡所得の所有期間の判定時期は売却した年の1月1日です。
たとえば平成28(2016年)年5月に購入した不動産を令和3年(2021年)10月に売却した場合、令和3年1月1日時点では所有期間は5年以下ですので、短期譲渡所得の対象となります。
相続取得した不動産を売却した際の注意点
相続により不動産を取得した場合、取得費と所有期間は先代のものを引き継ぎます。
相続した直後に不動産を売却した場合でも、自身と先代の所有期間の合計が5年を超えていれば長期譲渡所得の対象です。
また先代が購入した金額が確認できる書類があれば、その金額を取得費として譲渡所得の計算を行います。
先祖代々引き継がれている土地は、取得費がわからないケースもありますが、その場合は売却金額の5%を概算取得費とすることも可能です。
ただ概算取得費は売却金額の5%と少額であるため、かなりの確率で譲渡所得税は発生することが想定されます。
確定申告は他の所得と合わせて手続きする
確定申告は1年間の所得すべてを合計し、税務署へ申告書を提出する手続きです。
給与所得と譲渡所得がある場合、別々に申告することはできませんし、譲渡所得のみを申告することもできません。
確定申告期間は、売却した翌年2月16日から3月15日までの1か月間で、期間中に申告・納税が必要です。
不動産の売却金額が高額だった場合、納税額も大きくなりますので、納税資金は今のうちから確保しておいてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)
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