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中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること(1)【中国問題グローバル研究所】


【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。

米英豪加などファイブアイズ国家が外交的ボイコットを表明したが、IOCと共同で173ヵ国が国連決議で北京冬季五輪を支持表明しており中国は強気だ。しかし日本がボイコット表明すれば中国には痛手だ。

◆12月9日の中国外交部記者会見から何が見えるか?
12月9日、中国外交部定例記者会見における汪文斌報道官の回答が公開された。(※2)

北京冬季五輪の外交的ボイコットに関して4人の記者から質問があり、汪文斌は以下のように回答している(概要のみ記す)。

●ロイター記者:ロシア以外に、中国はほかにどの国の指導者と政府関係者を招聘していますか?

汪文斌:オリンピックのルールでは、各国のリーダーは自国のオリンピック委員会から招待され、IOCのシステムに登録されるという形を取っています。現在、すでに少なからぬ国家元首や政府首脳あるいは王室メンバーが北京冬季五輪に出席すると登録しています。私たちはその人たちに歓迎の意を表します。中国は、国際的オリンピック事業のために、より多くの貢献をするために力を尽くし、シンプルで安全かつ素晴らしく祭典を世界に発信していくつもりです。

●ラジオ香港記者:イギリスとカナダが北京冬季五輪に外交代表を派遣しないと表明したことについて、中国はどのようにお考えでしょうか?報道によれば国連総会で採択されたオリンピック休戦決議に20ヵ国が署名していないとのことですが、中国はドミノ現象が潜在していると考えていますか?

汪文斌:まず指摘したいのは、そもそも中国はどの関係国にもまだ招待状を送っていないということです。その国の政府関係者が来ても来なくても、同じように北京冬季五輪の成功を目にすることになるでしょう。

スポーツは政治とは無関係です。オリンピックは広大なアスリートやスポーツ愛好者たちの祭典であって、政治家がショーを見せるための舞台ではありません。アメリカ、オーストラリア、イギリス、カナダなどの個別の国は、北京冬季大会に関する国連総会におけるオリンピック休戦決議の共同提案を拒否し外交的ボイコットという独自の茶番劇を演出してオリンピック精神を破壊する行動を取っています。私たちは関係国がオリンピック精神を守り実践していくことを願っています。

あなたが先ほど心配していた連鎖反応に関してですが、私たちは連鎖反応を心配していません。12月2日、第76回国連総会は、中国とIOCが共同で起草し、173の国連加盟国が共同提案した「北京冬季五輪におけるオリンピック休戦決議」を総意で採択しました。多くの加盟国の代表者が、北京冬季五輪と休戦決議を支持すると発言をしました。これは、国際社会がオリンピック祭典を支持し、世界平和を維持しようとしていることの表れです。

●AP通信:ニュージーランドの貿易大臣は、記者の質問に対し、「ニュージーランドは人権問題に対して常に強い姿勢で臨んでおり、北京冬季五輪に政府関係者を派遣しません」と述べました。これに対する中国政府の対応は?

汪文斌:北京冬季五輪は全世界のアスリートとアイススポーツ愛好者たちの祭典です。ニュージーランドを含むすべての国のアスリートが北京冬季五輪に参加することを歓迎します。すべての関係者が「より大きな団結」というオリンピック精神を実践し、スポーツを政治的に利用しないことを願っています。

●日本の共同通信社記者:駐カナダ中国大使館は、「カナダ側と真剣に交渉した」という声明を出しています。中国はイギリスにも働きかけているのですか?日本は北京冬季五輪に関してまだ態度を保留していますが、しかし閣僚級の人物を出席させる可能性は低いと思われます。これについて中国はどのように考えていますか?中国はアメリカに対して断固たる対抗措置をとると表明していますが、具体的にどのような対抗措置を取るのか教えてください。イギリス、オーストラリア、カナダなどに対しても対抗措置を取るのでしょうか?

汪文斌:ご指摘の第一の質問については、駐英中国大使館がプレスリリースを発表していますので、そちらをご参照ください。

第二の質問に関しては、いわゆる「人権」や「自由」を口実にスポーツを政治利用しようとする試みは、オリンピック憲章の精神に反するものであり、中国は断固反対します。中国と日本の間には、オリンピック開催においてお互いを支持するという重要なコンセンサスがあります。中国は東京オリンピックの開催に向けて日本を全力を挙げて支援してきましたが、今度は日本が基本的な信義を示すべき番に回ってきました。

第三の質問に関して申し上げたいのは、米英豪加がオリンピックというプラットフォームを利用して政治的操作を行おうとするのは世界の人心を得ることはできません。全世界から見れば孤立しており、いずれ必ずその代償を払うことになるだろうということをお伝えしておきます。(引用ここまで)

以上4人の記者からの質問と回答を見れば明確なように、日本に対してだけは「信義上、北京冬季五輪を支持すべきだ」と明言しており、他の国と区別している。これは12月9日のコラム<北京五輪ボイコットできない岸田政権の対中友好がクワッドを崩す>(※3)における中国外交部報道官・趙立堅の回答でも際立っていた。したがって日中間で約束事がなされていたことだけは、先ず確かだろう。

「中国に最も痛手なのは日本が外交的ボイコットをすること(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。

写真: ロイター/アフロ

(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://www.fmprc.gov.cn/fyrbt_673021/202112/t20211209_10465049.shtml
(※3)https://grici.or.jp/2810


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