戸田工業 Research Memo(3):電子素材事業と機能性顔料事業の2つのセグメントで8つの材料を展開
■戸田工業<4100>の事業概要
1. 事業ポートフォリオ概況
同社グループは現在、電子素材事業(磁石材料、誘電体材料、軟磁性材料、LIB用材料、ハイドロタルサイト)と機能性顔料事業(着色顔料・トナー用材料、触媒など、環境関連材料)の2事業で事業展開している。2026年3月期のセグメント別売上構成比では電子素材事業が72.6%、機能性顔料事業が27.4%を占め、セグメント利益ではそれぞれ58.9%、41.1%の構成比となっている。
2. 主要セグメント、事業
同社の主要セグメントは電子素材及び機能性顔料である。また、中期経営計画「Vision2026」において、事業ポートフォリオマネジメントの強化の観点から、成長事業、収益基盤事業、次世代事業、再生・転換事業の4種類に分類している。
(1) 電子素材
a) 磁石材料(成長事業)
粉体からコンパウンド、成形品(磁石)までを手掛けている。粉体では微細粒子の均一分散技術に強み(粒径分布に特徴があり、高充填が可能)がある。コンパウンド「FEROTOPTM」については、フェライト系世界トップシェアを持ち、磁性粉末と樹脂の複合化技術に強み(特に異方性ボンド磁石向け)がある。さらに高磁気特性と成形性の両立(特に射出成形用材料)を可能にしている。またストロンチウムフェライト(SrFe)や希土類(Nd-Fe-B)の磁性粉末と、ポリアミド(PA12、PA6)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)といった多様な樹脂を複合化した射出成形用材料で高い評価を得ている。等方性・異方性の両グレードを揃え、顧客の要求する磁力や耐熱性、コストに応じた最適な材料を提案できるだけでなく、成形時に発生する腐食性ガスを大幅に低減し、金型の長寿命化に貢献するなどの材料も取り揃えている。成形品では小型・薄型磁石の精密成形技術(例:モーター用磁石)、異方性ボンド磁石の高磁気特性(最大エネルギー積(BH)max)などで差別化しているが、主力ユーザーは自動車業界でxEV(電動車)などのバッテリー冷却用ウォーターポンプ向けで電装部品大手の日欧電装メーカーなどがある。
b) 誘電体材料(成長事業)
同社の誘電体材料はMLCC用誘電体主材だけではなくMLCC用共材にも使用されており、特に超微粒を必要とするMLCC向け材料として供給している。ちなみに共材とはMLCCの内部電極(Ni微粒子)と誘電体層の機械的結合を高め、焼成収縮差を緩和するために混入する材料で、10〜50nm級のチタン酸バリウム(BaTiO3)であり、電界均一化・信頼性向上に寄与する。MLCCの主原料であるBaTiO3の製法においては、固相法、シュウ酸塩法、水熱合成法等がある。同社は水熱合成法に属するが「湿式合成法」に分類される独自の水熱技術で、高温高圧下における水溶液中の反応を利用しBaTiO3を直接合成、粒径30〜150nmのシャープな粒度分布・均一形状の超微粒BaTiO3を製造、高機能・高付加価値品に注力している。近年は生成AIの普及に伴うAIサーバーの需要拡大や、スマートフォン・自動車の高機能化によりMLCC搭載数量が増加している。また、小型化・多層化・低背化が進むなかで、より微細で均一な粒子を用いた高性能な誘電体材料への需要も高まっている。こうした環境下、同社のMLCC向け誘電体材料の需要は拡大してきており、AI関連需要拡大の恩恵を直接享受できる成長分野である。
c) 軟磁性材料(次世代事業)
軟磁性材料とは比較的小さい外部磁場で容易に磁化され、磁場が除かれるとほぼ完全に脱磁する特性を持つ材料で、酸化鉄を主成分とするフェライトのほか、鉄を主成分とする合金系などの磁性材料がある。同社は高透磁率、低損失、高飽和磁束密度を持つ磁性材料を素材からコンパウンドまでワンストップで提供している。主な用途は各種インダクター(電気と磁気を相互作用させ電流制御を行う電子部品で、電流の安定化、電圧の平準化、交流電圧の変化などの電源用途)や、スマートフォンのRFID機能、非接触給電用途があり、コイルから発生する磁束を通すコア部分やコイルに貼り付けるシート部分に使われる。
d) LIB用前駆体(再生・転換事業)
LIBの正極材料向けに、前駆体(中間体)を製造・販売する事業で、TAMが担ってきた。EV市場向けの需要変動の影響を受けたため、再生・転換事業として位置付け、TAMの解散・清算などで損失縮小と事業ポートフォリオの見直しを進めている。一方で、電池材料分野においては、LFP(リン酸鉄リチウム)正極材に鉄が使用される点は同社の技術領域との親和性が高く、新たな成長機会となる可能性がある。また、ナトリウムイオン電池向け材料については将来的な市場成長を見据え、研究開発を継続している。
e) ハイドロタルサイト(再生・転換事業)
同材料は従来、塩ビ安定剤、農業用フィルム保温剤などの用途を主としていたが、塩ビ安定剤用途が、レッドオーシャン市場となり、再生・転換事業として位置付けていた。2024年5月には、堺化学工業<4078>との協業解消を発表している。環境浄化など環境関連用途への展開ポテンシャルは維持しつつ、採算性改善とポートフォリオ整理を進めている。
(2) 機能性顔料
a) 着色顔料・トナー用材料(再生・転換事業)
合成樹脂・塗料・道路・建材等の着色材料や複写機・レーザープリンター用のトナー向けに、磁性酸化鉄や球状樹脂キャリアなどの電子印刷材料を開発・商品化している。ペーパーレス化や需要減を受け、価格是正・原価低減・設備合理化などを通じて収益性の改善を目指す。
b) 触媒など(収益基盤事業)
主な用途はプラスチックやゴムの原料となるスチレンモノマー用触媒で、スチレンモノマー製造の主流である「エチルベンゼンの脱水素反応」用に使われる。鉄系をベースとした「湿式合成技術」を駆使した独自の組成を有し、反応効率及びスチレンへの変換効率が高いのが特徴である。トップシェア企業に納めており、収益性も高い製品となっている。同触媒は新設プラントに加え定期修理時にも使用されるため、年により売上が変動するものの、世界的にスチレンモノマーの生産が緩やかに伸びていることと、シェアアップで収益は安定している。なお、LTOバックアップテープ向け記録材料はこの分野に位置付けており、中長期的に需要拡大を見込む。
c) 環境関連材料(次世代事業)
次世代事業と位置付けている環境関連材料については、CO2分離回収材等の環境負荷低減に貢献する新素材の開発を進め、早期事業化を目指して経営資源を重点的に投入している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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