極東貿易 Research Memo(1):既存事業の伸長などで営業利益は大幅増。新中期経営計画ではROE8%を目指す
■要約
極東貿易<8093>は、グループ企業の力を結集して、技術提案、導入・据付、運用・保守まで一貫した技術サポートができるエンジニアリング商社である。取扱商材は産業設備関連(地震振動計、航空宇宙・防衛機器、洋上風力発電向け機器、自動車開発用試験装置、プラント向け重電機器など)、産業素材関連(自動車向け部品・コーティング剤、炭素繊維・複合材料、食品業界向け資材・設備、生分解促進添加剤、耐熱・防錆塗料など)、そして、機械部品関連(精密ファスナー(ねじ類)、特殊スプリング(定荷重ばね、ぜんまいなど)、船舶補修部品)と多岐にわたる。ワールドワイドで事業を展開しており、欧米、中国・東南アジア、さらにインド・メキシコなどの新興国に拠点を設け、日系企業などのグローバルなモノづくりを支援している。
1. 2026年3月期は既存事業のオーガニック成長とM&A効果の融合による大幅増益
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比21.8%増の64,538百万円、営業利益が同26.7%増の2,583百万円となり、2016年3月期以来の過去最高益を大幅に更新する力強い着地となった。親会社株主に帰属する当期純利益は1,829百万円(同50.8%減)となったが、これは前期に計上された一過性の特別利益(負ののれん発生益※2,137百万円)が剥落したことによる。この特殊要因を除外した実質ベースでの当期純利益は前期比15.8%の増益であり、すべての段階損益において実質的な増益を達成している。
※ 負ののれん発生益:M&Aにおいて、買収価格が被買収企業の時価純資産額を下回った場合に発生する利益。
増益をけん引したのは、産業設備関連部門※1における官公庁向け地震計などの防災・減災需要の取り込みや、産業素材関連部門※2における航空機の機内設備向け特殊接着剤、インフラ向け防錆塗料の伸長といった既存事業のオーガニックな成長である。加えて、前期に極東貿易グループ入りした(株)三幸商会の業績が通期でフル寄与したことが大きく貢献している。
※1 「産業設備関連部門」は2026年4月1日付で「産業設備部門」に名称変更。事業内容及び報告セグメントの区分に変更はない。
※2 「産業素材関連部門」は2026年4月1日付で「産業素材部門」に名称変更。事業内容及び報告セグメントの区分に変更はない。
2. 2027年3月期は端境期による一時的減益と、投資有価証券の売却による純利益の確保の見通し
2027年3月期の連結業績予想は、売上高が前期比2.3%増の66,000百万円、営業利益が同11.0%減の2,300百万円、経常利益が同10.4%減の2,550百万円と、トップラインは微増を維持するものの営業減益が見込まれている。この減益の主因は、同社の祖業である国内産業インフラ関連事業において、顧客の大型設備更新サイクルが端境期(谷間の時期)に差し掛かるためである。しかしながら、産業素材関連部門及び機械部品関連部門※は引き続き堅調な推移を見込んでおり、全社的な成長基盤に揺るぎはない。
※ 「機械部品関連部門」は2026年4月1日付で「機械部品部門」に名称変更。事業内容及び報告セグメントの区分に変更はない。
3. 新中期経営計画の位置付けと規律あるキャッシュアロケーションの導入
同社は2026年5月に新中期経営計画「『中期経営計画2028』Beyond NEXUS」を策定した。前中期経営計画で未達となったROE8%を新中期経営計画では必達目標として再設定し、5つの重点領域(防災、防衛、エネルギー、モビリティ、半導体)に経営資源を集中させる事業ポートフォリオ戦略を推し進める。さらに、今回から新たに導入された「キャッシュアロケーション」の枠組みにより、3年間で創出する最大120億円のキャッシュ(基礎営業キャッシュ・フロー、投資有価証券売却など)を原資とし、借入金に過度に依存することなく、成長投資に50億円〜80億円、株主還元に40億円〜70億円を配分する積極的な財務戦略を明示している。
4. 今後も累進配当の継続と機動的な自己株式取得によるPBR改善
同社は、継続する「PBR1倍割れ」及び「株主資本コストを下回るROE」という現状に強い危機感を抱いており、株主還元を一段と強化する方針を打ち出している。2026年3月期より導入した「累進配当制度」を継続し、一過性の損益を除いた調整後当期純利益に対する配当性向50%を目安に、年間配当金74円を下限として維持・増配を図る。これに加え、2026年5月14日の取締役会において、発行済株式総数(自己資本を除く)の4.99%に相当する上限60万株、または総額10億円の自己株式取得を決議し、直ちに実行に移している(取得期間:2026年5月15日〜2027年2月28日)。総還元性向を高く保ちつつ、資本効率(ROE、ROIC)の向上をダイレクトに推進する経営陣の強い意志が確認でき、資本政策の高度化が飛躍的に進展していると評価できる。
■Key Points
・2026年3月期は既存事業の成長とM&Aの通期寄与により実質大幅増益を達成、過去最高益を更新
・2027年3月期は設備更新の端境期で一時減益も、素材・部品部門は堅調に推移し成長基盤を維持する見込み
・新中期経営計画ではROE8%必達へ向け重点5領域に注力し、規律あるキャッシュアロケーションを実行
・株主還元と資本政策では累進配当の継続と機動的な自己株式取得により、PBR改善と資本効率向上を推進
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水 啓司)
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