NCD Research Memo(8):高付加価値ビジネスモデルへの転換を推進
■成長戦略
1. 新中期経営計画「Vision2029」
NCD<4783>はトータル・ソリューション・プロバイダーとしての成長戦略を加速するため、2023年5月に「2032年のありたい姿(NCDグループビジョン)」を策定し、中長期目標として2032年3月期にの売上高400億円、営業利益40億円、営業利益率10.0%を掲げた。ありたい姿からバックキャストした前中期経営計画「Vision2026」(2024年3月期~2026年3月期)では、グループビジョン実現に向けたファーストステップと位置付けて、既存ビジネスの付加価値向上と新しいビジネスの創出によるNCDバリューの追求(IT関連とパーキングシステムのさらなる連携強化、第3の事業の柱構築に向けた新しいビジネスの追求)、企業価値向上に向けた経営基盤強化(サステナビリティ経営の推進、人材の価値を最大限に引き出す人的資本経営への取り組み強化、DX推進によるビジネス変革と持続的成長)、最適なグループ事業体制の再構築(事業シナジーを最大化する組織体制の追求)を推進した。
「Vision2026」の最終年度2026年3月期目標の達成状況は、売上高30,867百万円、営業利益2,638百万円、営業利益率8.5%、ROE22.9%と、2023年5月公表の当初計画(売上高26,000百万円、営業利益1,800百万円、営業利益率6.9%、ROE15%以上)を大幅に超過達成した。しかしながら、2024年11月公表の上方修正値(売上高32,000百万円、営業利益3,000百万円、営業利益率9.4%、ROE20%以上)に対しては、ROEを除いて目標未達となった。一方、2025年11月公表の再修正計画(売上高31,000百万円、営業利益2,450百万円)との比較では、売上高は99.5%とほぼ計画どおりの水準となり、営業利益は107.7%と計画を上回って着地した。また、投資目標については、人的資本投資が85.7%、研究開発・新規事業投資が33.3%の進捗となり、3か年投資総額では88.9%を実行した。
営業利益率が2023年3月期の5.2%から8.5%へ大幅に上昇し、既存ビジネスの土台固め(IT関連における売上成長、パーキングシステムにおける売上総利益率上昇など)、経営基盤の強化(総額6億円規模の人的資本投資の実行など)、最適なグループ事業体制の再構築(IT関連におけるM&A実施、パーキングシステムにおけるグループ会社間の業務移管など)で一定の成果が得られた。一方で、営業利益率10%の達成に向けては依然として高いハードルがあり、中長期的な成長を牽引するための「強み」の構築が道半ばである。
2026年5月に策定した新中期経営計画「Vision2029」(2027年3月期~2029年3月期)は、グループビジョン達成につなげるセカンドステップと位置づけ、「高い専門性と提案力を備えた、より高付加価値なビジネスモデルへの転換」の早期実現を目指し、足元の収益性改善に取り組むとともに、より明確な強みと成長領域の創出に注力する。
財務目標としては、2027年3月期が売上高320億円、営業利益27.5億円、営業利益率8.6%を、2028年3月期が売上高340億円、営業利益30億円、営業利益率8.8%を、2029年3月期が売上高360億円、営業利益35億円、営業利益率9.7%、ROE20%以上、ROIC20%以上を掲げている。セグメント別の2029年3月期目標は、システム開発が売上高150億円、売上総利益34億円、売上総利益率22.7%、セグメント利益13億円、セグメント利益率8.7%、サポート&サービスが売上高120億円、売上総利益25億円、売上総利益率20.8%、セグメント利益8.5億円、セグメント利益率7.1%、パーキングシステムの売上高が90億円、売上総利益29億円、売上総利益率32.2%、セグメント利益13.5億円、セグメント利益率15.0%である。また3か年累計投資額は人的資本投資13億円、研究開発・IT・DX投資9億円、設備投資・その他12億円、M&A10億円の計画である。
IT関連は基本方針に「顧客のビジネス変革パートナーとして、先端ITを駆使した既存サービスの高付加価値化と、上流工程案件の獲得による高付加価値領域の拡大」を掲げた。
主要戦略としては顧客ポートフォリオの再構築による収益性の改善、先端ITを駆使した保守・運用サービスによる既存サービスの高付加価値化、業界・業務知見を生かした上流工程の領域拡大を掲げている。重要施策としては営業体制の強化(新規顧客の獲得強化とポテンシャル顧客の深耕、低採算案件・顧客からの撤退など)、先端ITの活用強化(強みを持つ業務知見×AI等による顧客業務プロセス変革への貢献、AI・自動化・データ活用等を推進する社内体制強化と外部アセットの活用強化など)、コンサルティング機能の拡充(生保業界及びITインフラ領域を中心とした上流案件の獲得強化、ビジネスアナリスト人材の育成・採用強化など)、グループシナジーの最大化(グループ会社間の役割明確化とクロスセルの強化、技術分野でのNCDグループCoE(センターオブエクセレンス)の設置など)を推進する。
戦略ロードマップとして2027年3月期は低採算案件の選別・撤退開始、AI活用の基盤強化とサービス展開、ビジネスアナリスト人材の育成・採用強化など、2028年3月期は先端IT活用サービスの拡充、上流工程案件の獲得拡大、グループCoEの本格展開など、2029年3月期は業務知見×AIサービスの収益化、上流・一貫型モデルの定着とさらなる拡大などを推進する。3か年の前半は基盤固めと投資フェーズの期間として、後半に成果を刈り取るステップで、収益構造の質的転換の実現を目指す。
パーキングシステムは基本方針に「業界のリーディングカンパニーとして、社会的環境変化に応える次世代駐輪システムの実現と、新たな事業領域への挑戦」を掲げた。
主要戦略としてはモビリティの多様化に対応する次世代駐輪システムの早期実現と会員サービスの展開、新たな市場と成長領域の開拓、自営ビジネスと自治体ビジネスの拡大による既存収益基盤のさらなる強化、重要施策としては次世代型製品のリリースに向けた開発(次世代駐輪システムのリリースに向けたPoCの早期検証と開発の遂行、「EcoStation21」及び「ECOPOOL」に対応するアプリサービスの開発と会員サービス化など)、サービスラインアップのさらなる充実(多様化するモビリティ環境に対応するハード/ソフト両面での新製品開発、多様化する顧客ニーズに対応するサービスプランの拡充など)、製品開発体制の強化(製品開発体制の強化と外部アセットの積極活用、マネジメント人材の育成・採用強化など)、営業体制の強化(サービスプロモーションや提案力及び営業体制の強化、グループ会社間でのクロスセル強化など)を推進する。
戦略ロードマップとして2027年3月期は次世代駐輪システムの開発、モビリティハブの協業スキーム検討、海外候補国の調査・分析、新運営プランの導入など、2028年3月期は次世代駐輪システムの導入開始、会員アプリの展開、モビリティハブのPoC実施、海外パートナーとの協業検討など、2029年3月期は次世代駐輪システムの本格展開、モビリティハブ事業/海外展開の事業性判断などを推進する。市場環境の変化に対応しつつ、次世代駐輪システム・新市場開拓・既存深耕の3軸で営業利益率15.0%の達成と、長期的な成長基盤の構築を目指す。
また新規事業戦略として、自転車専用ドライブレコーダー「ジテレコ」事業(2026年12月の販売開始を目指し、製品開発は最終段階)の着実な事業化を目指すほか、次なる事業案創出に向けた施策の展開・社内アイデア公募制度の拡充・活性化、新規事業を担う人材の育成強化を推進する。
企業価値向上に向けた取り組みとしては、収益力改善(顧客ポートフォリオの再構築、新規ビジネス・サービスの創出など)、資本の最適配分(ROE20%以上を維持するバランスシート・コントロール、連結配当性向50%以上と機動的な自己株式取得の実施など)、サステナビリティへの取り組み強化と非財務情報開示の拡充(実効性の高いサステナビリティ推進サイクルの確立と体制整備・強化、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示など)、IR活動の強化及び株主・投資家との対話拡大(機関投資家向け・個人投資家向け説明会やオンラインセミナーの実施、IRフェア出展や個人株主向け駐輪場見学会の実施など)、コーポレートガバナンスの一層の強化(英文開示の充実、外部機関活用による取締役会実効性評価アンケート結果の集計・分析など)を推進する。なおIR活動における機関投資家との個別面談は2025年3月期の40件程度から2026年3月期には60件超に増加した。また開示資料の英文化はおおむね完了した。さらに2026年5月には従業員(管理職)向けインセンティブ・プラン「ESOP信託」の導入を発表した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)
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