日産東HD Research Memo(7):モビリティの進化を加速させ、新しい時代を切りひらく
■日産東京販売ホールディングス<8291>の中期経営計画
1. 中期経営計画
「CASE」や「MaaS」の考え方が広がるとともに、カーボンニュートラルに対する社会全般の意識や、所有からシェアやリースなどへとシフトする顧客の自動車に対する考え方、店頭からオンラインへという顧客の購買プロセス、人口減少や多様な働き方など、同社を取り巻く事業環境の変化が加速している。これに対して同社は、移動の楽しみや安心・安全・快適な運転といった普遍的価値を提供し続けることを目的に、「モビリティの進化を加速させ、新しい時代を切りひらく 笑顔あふれる未来のために、わたしたちは走り続ける」という企業理念を掲げている。同社は企業理念を実現するため、EVの普及、個人リースの販売拡大、モビリティ事業の拡張、リアルとデジタルを融合した店舗づくり、業務・運営体制の改善などを取り組むべき課題として掲げている。また、企業理念実現の通過点として4ヶ年の中期経営計画(2024年3月期~2027年3月期)を策定し、以下で述べる電動化リーダー、安全・運転支援技術、モビリティ事業を重点施策に、売上高1,550億円、営業利益65億円、配当性向30%以上などの財務目標の達成を目指している。
重点施策を遂行するため投資も積極的に実施
2. 中期経営計画の重点施策
(1) 電動化リーダー
電動化リーダーとは、EVやe-POWERなど電動車のパイオニアとしての強みを生かし、電動車を運転する感動を世の中に広げ、カーボンニュートラルの推進に直接的に貢献していくことである。こうした電動車に対する消費者の関心は高いので、同社は長年にわたって蓄積してきた電動車のノウハウやインフラを生かし、早期に電動車販売比率90%以上(既に達成済み)などを目指すこととした。また、EVとe-POWERの高い販売シェアを持続することで、将来もフロントランナーとして電動化をけん引していく考えである。また、EV販売を通して、CO2排出量1.6万トン削減、災害時のエネルギーマネジメント、充電インフラの拡充、再生可能エネルギー利用の店舗網構築を目指すことで、モビリティ社会への対応を先行的に展開していく。
(2) 安全・運転支援技術
同社は、安心・安全の先進運転支援技術とそれを支える整備体制を有している。このため、顧客に対し、店舗に配備した1,400台の試乗車やレンタカーの試乗機会を増やし、プロパイロットなど先進運転支援システムを体験する機会を広げている。なお、プロパイロットは既に主要車種の大半に標準装備またはオプション設定され、事故発生率の減少に貢献しているようだ。また、既に一日の長のある整備体制をさらに強化し、技術革新に対応できる人財基盤を整備するとともに、検査ラインの自動化などDXを推進して作業の効率化と作業精度の向上を進める。さらに、車載式故障診断装置を全店に配備するとともに、特定整備制度の認証取得に向けた最新整備機器を導入するなど、安心・安全なカーライフに直結する「電子制御システム整備」の体制構築を推進する。
(3) モビリティ事業
所有からリースやシェアへシフトしている消費トレンドに的確に対応するため、モビリティ事業を強化している。1997年から展開している新車個人リース「P.O.P」については、販売ノウハウなどをベストプラクティスとして全社的に生かし、利用率・定着率の向上と乗り換えの促進につなげている。この結果、「P.O.P」は、早期の買い替えを通じて同社の新車販売と中古車販売、さらには整備・保険などのストック収益の拡大にも貢献する事業として急成長した。モビリティ事業ではほかに、中古車個人リースの定着や、レンタカーの全店配備と運用台数の増強を進めている。
(4) 投資計画
同社は重点施策推進のため、既存領域への継続投資に加え、注力領域へ積極投資を行っており、4年間で総額300億円以上の投資を実行する計画である。内訳は、持続的成長のため既存ビジネス強化を目的とした店舗ネットワークの刷新や環境対応、事業ポートフォリオ再構成に250億円以上、変革の推進力となる人財・DXの強化、ITによる効率/生産性向上や事業の多角化、ベストプラクティスの強化に20億円以上、モビリティ関連やEV周辺事業のための新規事業や資本業務提携に30億円以上としている。これにより収益力の向上を図り、2027年3月期にはROE(自己資本当期純利益率)7.0%を計画する。また、ROE向上のために、ネットワークの刷新や新たな顧客接点の構築、効率化投資などにより営業利益率4.2%、収益拡大に向けた投資と資産の有効活用(不要な資産の圧縮)によりROA(総資産当期純利益率)3.4%、財務安全性を確保しつつ資本構成の最適化を図ることでD/Eレシオ0.26倍を目指している。
中期経営計画最終年度は相次ぐ新型車の恩恵を享受
3. 中期経営計画の進捗
中期経営計画では、新車販売台数のコロナ禍前水準への回復、新車販売の収益拡大、ストックビジネスでの収益上積み、人財・デジタルへの投資強化、設備費・経費の最適化にも取り組んできた。中期経営計画に基づいて既に10店に及ぶ店舗ネットワーク投資や、社内作業軽減へのAI活用などDX投資を着実に進めることができた。この結果、財務目標の中心である営業利益は2024年3月期に3年前倒しで達成、営業利益のほか大半の指標も既に目標を達成している。最終年度となる2027年3月期の営業利益予想も、売却した連結子会社の収益を考慮すればほぼ達成した水準にあると言える。このため、中期経営計画は順調に進捗していると言えよう。
ところで、2026年3月期は厳しい業績となったが、主因は、日産自動車のリストラと新型車の端境期が重なり、日産自動車に対するネガティブな風評が巻き起こったことにある。ところが、日産自動車が、2027年3月期までの業績回復を目指し、長期的な成長に向けて経営を再建するための行動計画である「Re:Nissan」を策定、コスト構造の改善、市場戦略と商品戦略の再定義、パートナーシップの強化を進めたことで、風評も下火になってきた。特に2026年3月期後半から新型車の投入が世界で相次ぐに至り、また新型車の先陣を切った「ルークス」や「日産リーフ」の受注が好調に推移したことで、風評自体の影響はほぼなくなったように思われる。これまでストックビジネスや独自のビジネスによって厳しい時期を乗り越えてきた同社だが、中期経営計画最終年度は「エルグランド」など日産自動車新型車の恩恵を享受できそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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