兵機海運 Research Memo(7):2027年3月期は利益回復の見通し、収益基盤の強化を図る
■兵機海運<9362>の今後の見通し
1. 2027年3月期の業績見通し
2027年3月期の業績は、売上高が前期比8.3%増の14,500百万円、営業利益が同16.8%増の510百万円、経常利益が同8.0%増の540百万円、当期純利益が同0.7%増の400百万円と増収増益を見込んでいる。
事業環境の前提は2026年3月期から大きく変わらず、労働力不足や原材料・エネルギー価格の動向、海外の政策・地政学リスクなどが収益の変動要因になると見られる。同社はこの環境下で収益基盤の強化、利益率の改善、業務効率化を進める方針である。売上高は前期に伸び悩んだ海運事業の持ち直しに加え、港運・倉庫事業の取扱い拡大により増収を計画している。営業利益は人件費や燃料費の上昇が見込まれる一方で、採算性を重視した営業、料金改定、部門間連携による案件獲得が寄与し、営業利益率は3.5%と前期比0.2ポイント改善する見通しである。
事業セグメント別に見ると、内航事業は引き続き厳しい環境が想定される。鉄鋼需要の停滞、船員不足、燃料費の変動が制約となるなか、同社は運航停止の回避、海上運賃サーチャージの導入、船員の直接雇用強化を進める。2026年6月末に運航開始予定の499トン型自社船も、営業領域の拡大に向けた材料となる。外航事業では、中国・中央アジア向け建機輸送の継続受注に加え、特殊貨物やニッチな輸送品の開拓、建機以外の貨物積み合わせによる運航効率の改善が焦点となる。
港運事業は、AI関連のデータセンターや蓄電池関連のプロジェクトカーゴの受注拡大が期待される。2026年3月期も輸入食品の取扱い、輸出通関件数、大型特殊案件が好調に推移しており、今期も引き合いのある分野を取り込めるかが成長のカギとなる。国内ではデータセンターや蓄電池関連の投資需要が拡大しており、重量貨物・特殊貨物の取扱いに強みを持つ同社にとって追い風になり得る。倉庫事業では、港運事業との連携を強め、コンテナ型蓄電池、重量貨物、危険物貨物などの特殊貨物を取り込む方針である。六甲アイランドのタンクコンテナターミナルや神戸物流センターの定温倉庫を活用し、高付加価値貨物の取扱い拡大につなげられるかが注目点となる。
2027年3月期は外部環境の変化に依存するよりも、採算性の高い案件を選別し、価格転嫁と業務効率化を進められるかが重要となる。特に、内航事業では燃料費や船員不足への対応、港運・倉庫事業ではデータセンター、蓄電池、危険物、重量貨物など成長分野の案件獲得が業績の上振れ要因となる。前期は海運事業の落ち込みを港運・倉庫事業の回復で一部補う形となったが、2027年3月期は各事業の連携を強めることで、案件単価及び収益性の引き上げが期待される。
既存事業の深化と新たな収益源の創出により、企業価値の持続的な向上を目指す
2. 中長期の成長戦略
同社は2025年4月に、長期経営ビジョン「VISION for 2035」と、それを実現するための中期経営計画「Road to 2027」を発表した。長期経営ビジョンは、創業100周年を迎える2042年に向けた成長戦略の中間地点として、2035年をターゲットイヤーに設定し、同社が物流“ソリューション”企業として新たなステージへ進化することを掲げている。
同社は長期経営ビジョンで、2035年までの3つの目標を掲げている。第1に、売上高20,000百万円、営業利益1,000百万円の達成である。2025年3月期実績は売上高13,726百万円、営業利益548百万円であり、営業利益は2025年3月期対比で1.8倍に拡大することを目標としている。第2に、新領域への事業進出である。従来の海運・港湾運送・倉庫といった枠組みを越え、より付加価値の高いサービス領域への展開を図る。第3に、全従業員が経営参画の意識を持ち、自律的に行動することができる「人財」を中核とした組織への変革を目指す。この人材戦略は、同社の持続的成長を支える組織基盤の強化に直結するものである。
これら長期的挑戦の土台作りとして策定されたのが、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「Road to 2027」である。同計画では「“シン総合物流企業”への進化と真価」をスローガンに掲げ、従来の物流機能の枠を超えた、柔軟かつ統合的な物流ソリューション体制の構築を目指している。2028年3月期の定量目標は、売上高15,000百万円、営業利益680百万円、経常利益690百万円、当期純利益480百万円であり、全体の戦略方針は3段階のステップで構成されている。
第1ステップとなる2026年3月期では、各部門が持つ強みを連携させることにより、顧客に対してワンストップでシームレスな物流サービスを提供する体制の構築を図る。部門間の情報連携とナレッジ共有の強化により、社内オペレーションの一体化と業務効率の向上を目指す。続く第2ステップである2027年3月期には、顧客別・案件別・品目別の収益管理体制の整備とデータの蓄積を進め、高収益体制の基盤を構築する。併せて、業務プロセスの見直しによって無駄を排除し、コスト削減及び生産性の向上を図るとともに、高付加価値サービスの開発・提供により収益力の強化を目指す。最終ステップとなる2028年3月期には、独立系中堅企業としての柔軟性を生かし、物流コンサルティング、在庫管理、流通加工などの高付加価値サービスを拡充することにより、“シン総合物流企業”への進化を遂げることを目指す。また、顧客を起点とした全社横断の提案型営業体制を確立し、既存顧客との取引の最大化及び関係深耕を図る。
同社が掲げた長期経営ビジョン及び中期経営計画は、外部環境の変化に柔軟に対応しながら、持続的な収益成長と企業価値向上を実現するための戦略的枠組みとして評価される。特に、収益管理の高度化、人材育成、サービスの高付加価値化などの観点において、より強固な競争優位性の確立が期待される。
事業戦略は主に基盤拡大、事業成長戦略、事業基盤戦略の3点から構成されており、それぞれ実行計画が設定されている。基盤拡大においては、大和工業との資本業務提携※を通じた輸送請負体制の強化と業務効率化を推進する。大和工業の子会社であるヤマトスチール(株)向けの船舶運航を安定させると同時に、物流全体を包括的に請け負う体制の構築を目指す。事業の成長加速をねらう事業成長戦略では、内航船舶の増強と船員確保を進め、輸送キャパシティの増大を図る。また、ISOタンク貯蔵施設を含む倉庫設備の拡充など、継続的な設備投資を通じて業務の効率化とサービスの品質向上に取り組んでいく。加えて、新たな荷主の開拓により営業収益の拡大を図るなど、事業領域の広がりを意識した戦略も推進する。事業基盤戦略においては、部門間の連携を強化し、提案型営業の体制構築により営業力そのものの底上げを目指す。また、適正利潤の確保と高収益商材への注力により、収益性と生産性の双方を高める方針も打ち出しており、安定した利益体質への転換を図る。
※ 2025年1月31日付で、主要取引先である大和工業と資本業務提携契約を締結した。大和工業が同社の普通株式を議決権比率が20%に達するまで取得したが、本件後も同社の経営の独立性は保たれている。
総じて、同社は既存顧客との関係強化と新市場の開拓を両輪とし、安定と成長のバランスを意識した戦略を推進している。中長期的には、物流及び輸送インフラの信頼性向上と差別化されたサービス展開を通じて、収益構造の強化を図る姿勢が明確である。既存事業の深化と新たな収益源の創出の両輪により、企業価値の持続的な向上が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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