インフキュリオン:ダブルバガーは最低限の目標、利益は早晩10倍程度に拡大へ
もっとも、グループ会社であるリンク・プロセシングがエポスカードと業務提携し、2026年2月19日より法人カード会員向けに「請求書カード払い」サービスの提供を開始すると発表した局面でも、株価は売りに押される場面がみられた。ただ、この提携は銀行振込が主流だった請求書払いをカード決済に切り替え、社会保険料の支払いにも対応するものであり、法人の経理業務効率化とキャッシュフロー改善に資する内容だ。BtoB決済領域におけるユースケース拡大とサービス浸透が今後の業績成長につながっていけば、株価の見直し余地はなお大きいと考えられる。
同社は、消費者向け(BtoC)から事業者間(BtoB)に至るまで、広範な業界に決済・金融機能を提供する企業であり、経済活動の変革を支える「決済イネーブラー」としての役割を果たす。主に提供しているプロダクトには、カード発行基盤「Xard」、請求書支払基盤「Winvoice」、スマホ決済基盤「Wallet Station」などがあり、これらをクラウド上で提供することで、金融機関や事業者が自社サービスに決済機能を統合できるよう支援している。さらに、4月30日にローンチしたアクワイアリングシステムも、リカーリング収入を中心とした安定成長に寄与する見通しだ。
同社の特徴は、決済・金融領域に特化したクラウド型サービスを通じて、柔軟かつ拡張性の高い決済インフラを提供している点にある。API接続を通じて顧客企業が求める機能を実装できるため、単なる決済手段の提供にとどまらず、企業の業務フローそのものに入り込める点が強みだ。特にBtoB領域では、請求・支払い・資金管理などの機能を一体で提供できることから継続利用につながりやすく、ストック収入が積み上がりやすい事業構造となっている。
2026年3月期の従量型ストック収入のベースとなるBtoB GTV(企業間取引の決済処理金額)は前期比105.0%増の4,473億円と大幅に拡大した。主な要因は、「Xard」の導入先の着実な増加や、「Winvoice」における販売・導入を担うパートナー企業の拡大などである。BtoB GTVは利用企業数の増加に連動して積み上がる構造を有しているため、導入が進むほどGTVが成長しやすい。新規案件のパイプラインが順調に積み上がっており、次期以降も高成長トレンドが継続すると見込まれる。
2027年3月期通期業績は、売上高が前期比17.8%増の11,200百万円、営業利益が同36.3%増の600百万円、EBITDAが同50.0%増の840百万円、経常利益が同57.4%増の530百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.0%増の480百万円の見通しである。伸び率は抑制的に見えるが、2025年3月期に開示された中期経営目標に沿った数値であり、前期が予想に対して大幅超過であったことが要因である。また、大型案件に向けた推進体制立ち上げのため、コスト先行となることも影響する。引き続き、売上高はペイメントプラットフォーム事業が中期経営目標から大きく超過して業績の成長を牽引し、利益は下期にかけて利益成長が加速する予想となっている。
同社の強みは、決済サービスを「一気通貫」で提供できる点にある。カード発行、請求書支払い、ウォレット、加盟店管理まで複数機能を横断的に提供できるため、顧客企業は個別ベンダーをつなぎ合わせずに決済基盤を構築できる。特にBtoB決済分野では、GTV拡大に連動して従量課金型のストック収入が伸びる構造であり、競争優位性と収益性の両面で魅力が大きい。固定費先行型のビジネスである分、売上拡大が続けばオペレーティングレバレッジが働き、利益成長が加速しやすい点も株価面での注目材料だ。
足もとの特筆事項としては、北国銀行を傘下に持つCCIグループとのフルクラウド型アクワイアリングプラットフォーム「Axios(アクシオス)」提供開始が挙げられる。「Axios」は、国際ブランドカードに加えて国内で初めて預金型ステーブルコイン「トチカ(北国銀行の預金口座と連動するステーブルコイン)」の決済処理まで、多様な決済手段の統合管理を実現する革新的なシステムとなる。従来の決済システムでは困難であった、既存の法定通貨決済と新しいデジタル通貨決済を両立したハイブリッドな加盟店管理を実現できる点は注目に値する。「Axios」は、クラウド上でシステムを構築し、複数社での利用を前提とすることで、従来よりも導入・運用コストを安価に提供できる。これにより、アクワイアリング事業を本業としないSaaS系企業やマーケットプレイスといったデジタルプラットフォームのみならず、独自の経済圏を有する地域企業などのリアルな事業領域まで、広範な異業種の企業が自社サービスと決済を連携させ、アクワイアリング市場へ参入しやすくなる。
中期的には、同社は売上高25%成長、売上総利益30%以上成長を目標に掲げ、BtoB GTVの拡大、決済基盤の強化、AI活用の推進を成長ドライバーに位置付けている。SaaS企業や新興企業向けに決済・金融機能を組み込むニーズは今後も広がる余地があり、既存プロダクトの拡販に新サービスが加われば、売上成長だけでなく利益成長の確度も高まりやすい。成長シナリオが一段と具体化していけば、現状の株価水準は中長期で見た再評価余地を残していると考えられる。
株主還元については、現時点では成長投資を優先しており、配当実施予定はない。ただ、同社はまだ事業拡大局面にあり、まずは成長投資によって企業価値を高める段階にある。今後、BtoB決済を中心に業績拡大と収益の安定化が進めば、株価上昇を通じたキャピタルゲインへの期待は高まりやすく、将来的な還元策の選択肢も広がっていく可能性があるだろう。
<YS>
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