キットアライブ Research Memo(7):AI関連需要の拡大を背景に2026年12月期は引き続き増収増益を見込む
1. 2026年12月期の業績見通し
2026年12月期の業績は、売上高1,191百万円(前期比28.9%増)、営業利益185百万円(同15.5%増)、経常利益189百万円(同11.5%増)、当期純利益125百万円(同1.3%増)を見込んでいる。Salesforce及びAI関連需要の拡大を背景に大幅な増収を見込む一方、人材採用や育成投資の継続により利益成長は相対的に緩やかな予想となっている。トップラインの拡大を優先する成長フェーズが続く見通しだ。
Salesforceを含むクラウドサービス市場は今後も拡大が見込まれるとともに、DXの加速により顧客ニーズは高度化・多様化している。同社にとって成長機会である一方、変化する要求に対応し、主体的に提案できる人材の育成が重要課題となっている。同社は独自の社内制度や地域連携型の組織づくりを推進するほか、特定工程のみを担う分業型モデルでは急速なビジネス変革に十分対応できないと考え、ITコンサルティングから設計、開発、運用保守までを一貫提供するワンストップ体制を採用している。エンジニアが顧客と直接対話し、本質的課題を深く理解することで、顧客の事業成長に貢献し、高付加価値で持続的なサービス提供を目指している。
2. 成長戦略
同社は中長期経営計画などの具体的な施策は発表していないが、3ヶ年計画を策定し毎年見直しを行っている。
同社の企業成長サイクルは成長期へと順調に推移しており、ホワイトスペース戦略、ITエンジニア育成の強化などをはじめとするこれまでの施策や、東京事業所及び拡張する本社の機能を生かした戦略を考えながら、健全な基盤をつくるための内部留保を進めている。現在は、人材採用による成長を重視している。
(1) ホワイトスペース戦略
同社は、未開拓領域に進出するための「ホワイトスペース戦略」を推し進めている。親会社であるテラスカイは、同社との協業によるグループシナジーを追求する方針である。首都圏で大企業をターゲットにするテラスカイとは事業領域が異なり、同社は地方で中小企業、IT関連部署のない企業、創業間もないスタートアップ企業や、大企業におけるスタートアッププロジェクト、技術的に難易度の高いPoCプロジェクトをターゲットとしている。テラスカイグループにおける同社の特徴は、1) 札幌に本拠地を置くことでIT人材を獲得する機会を増やしていること、2) 予算が少ない企業に対して少人数・低予算で対処が可能であること、3) リモートワークによるWeb会議の推進であり、これら独自のビジネスモデルで「ホワイトスペース戦略」を推進している。
同社の累積取引社数は増加基調を維持している。2019年12月期の51社(北海道内28社、道外23社)から拡大を続け、2023年12月期には114社(道内40社、道外74社)へ増加。2025年12月期は136社(道内46社、道外90社)となり、9期連続で過去最高を更新した。特に北海道外の取引先拡大が顕著で、全国展開が進展している点が特徴である。地場基盤を維持しつつ、Web会議を活用した全国対応モデルが奏功し、顧客ポートフォリオの分散と安定成長を実現している。
(2) ITエンジニア育成の強化
同社は地方の中小IT企業である。地方のIT産業は、地元の直接業務だけでは成り立たず、首都圏からの下請業務が主となっているため、ITエンジニアのキャリアアップや収入アップの方策を見出しにくかった。その打開策として、設立当初から全国のエンドユーザーからの元請業務を増やすことを目的に、開発に関する基礎知識に加え、企画力、発想力、コンサルティング力(ITとビジネスをつなげる力)などの能力を身に付けたITエンジニアの育成を推し進めてきた。顧客と直接向き合い、顧客が本当に必要とするシステムや機能を見つけられる人材の育成が同社にとっては必要であり、ITとビジネスをつなげられる人材を増やすことで成長を加速する。
(3) ハイブリッドワークの推進
同社は、オフィスワークとリモートワークを柔軟に組み合わせた「ハイブリッドワーク」を導入し、働きやすい環境づくりを推進している。札幌を本社としつつ、東京を含む全国の顧客とリモートでの開発プロジェクトを展開している。自宅で集中して作業を行い、必要に応じて出社してチームでの対話や業務を行うなど、生産性とワークライフバランスの両立を実現している。四半期ごとのキックオフで社員が札幌に集まる機会も設けており、ビジョン共有と対面コミュニケーションによって組織の一体感を強化している。地方在住でも都市圏並みの業務レベルと成長機会が得られる仕組みは、地域に根差した高度人材の確保と定着を実現しており、同社の持続的成長を支える戦略的な取り組みと言える。
(4) 東京事業所
「Salesforce」は、コミュニティサイトやポータルサイトを簡単に構築し、顧客やパートナーと共有できるため、情報共有に適している。こうした特徴を生かして、東京事業所に在籍する5名ほどの社員が首都圏で開催されるオフラインイベントに参加し、積極的に情報共有を行う。札幌や地方だけでは得られない首都圏ユーザーからの情報を獲得しながら、今後の事業展開に反映していく。
(5) IR活動
北海道内では、まだ同社や「Salesforce」の知名度が低いため、四半期に一度の説明会の生配信、札証と共同の北海道各地での投資家への説明会などといった積極的なIR活動を行うことで、投資家とのコミュケーション機会を増やし、透明性の高い経営を社内外にアピールしていく。
同社が本拠地を置く北海道は、地方のなかでも少子高齢化をはじめとした課題を多く抱えている。その状況下で自社の技術力・ノウハウを生かし成長することで、地方におけるモデルケースとなる。
(6) 北大テックガレージとの提携
2024年2月から、同社は、北海道大学技術支援・設備共用コアステーション(CoSMOS)と連携し、「Spring/Summer Founders Program(SFP)」を開始した。これは、北大テックガレージを拠点に、学生によるプロダクト開発を支援するプログラムである。文部科学省の支援を受け、北海道大学は教育プログラムのほかOB・OGを含むガレージアドバイザーや技術職員による助言・サポート体制を提供し、同社はプロダクトの開発費用やテックガレージの運営を支援する。このプログラムは、学生が自由な発想で技術的なプロダクト開発を進められる環境を提供し、起業家精神を養うことを目的としている。
■株主還元策
財務状況及び経営成績、市場動向を勘案しながら、配当実施を目指す
同社は株主に対する利益還元を重要な経営課題としているが、同社の最重要課題である人材の採用と育成、さらなる成長に向けた組織体制の構築を優先しており、設立以来、配当を実施していない。将来的には、財務状況及び経営成績、市場動向を勘案しながら配当の実施を目指しているが、現時点においてその可能性や実施時期などについては未定である。同社が剰余金を配当する場合は中間配当と期末配当の年2回で、配当の決定機関については、期末配当を株主総会、中間配当を取締役会とし、中間配当は毎年6月30日が基準日となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山 博詞)
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