スカラ Research Memo(8):2027年6月期以降は2ケタ増収増益ペースへの復帰を目指す
3. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要と業績目標
同社は2026年6月期から3ヶ年の中期経営計画をスタートしている。事業ポートフォリオマネジメントの強化を通じた主力事業の成長力強化を図りつつ、収益性や効率性を重視しながらさらなる利益成長を目指す方針だ。業績目標として、2028年6月期に売上収益11,800百万円、営業利益1,100百万円を掲げた。年平均成長率は売上収益で13.0%、営業利益(Non-GAAP)で25.2%となり、営業利益率(Non-GAAP)は2025年6月期の6.9%から2028年6月期は9.3%と着実に上昇する計画となっている。
全社戦略として、「グループの理念」及び「創業からの歴史」を踏まえ、5つの重要テーマ(新たな価値の創出、成長機会の提供、ベストマッチの実現・リスキリング促進、デジタルデバイドの解消、AI技術向上と倫理的利用の両立)を特定し、事業会社ごとに策定した事業戦略を推進することで、これら重要テーマに取り組む方針だ。
(2) 主要3事業の業績目標と事業戦略
a) DX事業
DX事業では、2028年6月期に売上収益6,340百万円、営業利益620百万円を目標に掲げている。年平均成長率は売上収益で11.2%となる。このうち、SaaS/ASP事業におけるMRRは、2025年6月の2億円から、3年後には2.5億円を目指す。年換算では約6億円の増収要因となり、増収分の約3分の1を占める計算だ。営業利益は2025年6月期の776百万円に対して低い水準となるが、Non-GAAPの営業利益586百万円に対しては若干上回る水準となる。2026年6月期の利益水準が先行投資もあって一時的に落ち込むためだが、2027年6月期以降の2年間だけで見ると23.0%成長となる。
事業戦略として、スカラコミュニケーションズでは主力サービスである「iシリーズ」のアップセルを意識した機能追加(音声連携、検索最適化、レポート機能強化)や導入支援モデルの体系化を推進する。また、医療・不動産・畜産など専門業界に特化したアライアンス型SaaSビジネスの拡大や、業界別BPaaS※モデルを確立し事業領域の拡大を目指す。さらに、マーケティング能力の強化やAI人材の採用・育成、新規サービスの開発やエッグとの協業による「行政連携SaaS群」の商品化も推進する。エッグについてはストック型ビジネスモデルへの転換を図り、収益の安定性向上と経営基盤の強化を進めていく。
※ Business Process as a Serviceの略。特定の業務プロセスをクラウド上で提供するサービス。単に人手による業務代行ではなく、SaaSなどのクラウドプラットフォーム上で業務を遂行する点が特徴。顧客企業は自社でのシステム構築・運用や専門人材の確保といった負担を負うことなく、必要な業務プロセスをクラウドサービスとして利用できる。特に、バックオフィス業務で普及が進んでいる。
b) 人材事業
人材事業では、2028年6月期に売上収益1,930百万円、営業利益280百万円を目標に掲げている。年平均成長率は売上収益で24.1%、営業利益で23.7%となる。2027年6月期までは人材投資など先行投資を積極的に行い、その効果が2028年6月期に顕在化する計画となっている。
アスプラは、人員体制の強化を図るとともに事業拠点の新設によりサービスエリアを拡大し、対象となる会員(就活生)・企業数を広げていくことで事業成長を目指す戦略だ。また、会員獲得を目的としたコンテンツ拡充とWebマーケティングの強化も進めていく。人材紹介事業については、成約率向上のための各種マニュアルの更新や社員教育だけでなく、社員の定着率向上を図るための人事制度の見直しなども進める。GeaREmakeでは、強みとなる紹介先企業の特定と、集客用のサービス開発に注力する。
c) TCG事業
TCG事業では、2028年6月期に売上収益3,260百万円、営業利益500百万円を目標に掲げている。年平均成長率は売上収益で12.7%、営業利益で23.7%となる。
事業戦略として、成長余地の大きい海外需要を取り込むため、動画広告展開などを積極的に推進する。また、発送業務に一部適用しているAI画像認識ソリューションの精度を高め、目視で行っている買取査定・真贋判定プロセスを自動化することで生産性の向上を図る。そのほか、卸売会社向けに自社開発した業務システムのSaaS展開や周辺グッズの販売など収益の多様化にも取り組んでいく。
d) インキュベーション事業
インキュベーション事業については業績目標を設定していないが、ソーシャル・エックスを通じて「ソーシャルXアクセラレーション」や「逆プロポ」といった共創案件を多く手掛けることで、DX事業の商機拡大につなげていく。また、同社の共創型M&Aサービスでは、M&A後のバリューアップ戦略としてグループリソースを最大限活用する共創体制を確立していく。なお、直近2期は凍結していた自社のM&A戦略も再始動する意向で、対象をDX事業や人材事業、TCG事業でシナジーが見込める企業とし、1社当たりの投資額としては5~10億円を目安に、借入金なども活用しながら実施していく。TCG事業については顧客基盤を持つ企業、IT/AI投資効果が見込める企業を対象としているが、将来的にはトレーディングカード業界とどまらず、事業エリアをエンタメ領域へと広げていくことを見据えている。
(3) 人的資本の取り組み
同社は、人が最大の財産かつ成長の原動力であり、価値創造の源泉であると認識している。中期経営計画を推進する経営基盤として、人材価値の最大化に取り組む方針だ。
人材戦略の最重要項目は「事業戦略に即した人事制度・人材育成」である。事業戦略に基づく人材ポートフォリオを充足するため、採用を強化すると同時に、社員の能力・スキルを可視化し、向上を図っていく。また、社員の能力スキルの向上につながる機会を提供するほか、成果に適切に報いる「処遇・評価制度」の導入も進める予定で、第一弾として賞与の支給時期を従来の6月、12月支給から3月、9月支給に変更した。対象期間の勤務評価を適切に賞与に反映させることが狙いだ。例えば、7月~12月の勤務実績を評価して3月の賞与に反映させる。
2025年12月末の連結従業員数は413名で前期末比5名の増員にとどまったが、今後はDX、人材を中心に新卒採用を含む、人材投資を加速させ、経営基盤の体制強化を進める計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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