サンフロ不動産 Research Memo(9):2028年3月期に売上高1,350億円、経常利益270億円を目指す
1. 前中期経営計画の振り返り
同社グループは、2022年3月期から2025年3月期にかけて策定・実行した中期経営計画において、掲げた定量目標を達成した。特に注目すべきは、収益構造の質的向上と持続的な成長基盤の構築に向けた取り組みである。付加価値の高い事業領域への集中によって、高い利益率を実現し、売上高及び利益面において計画を上回る成果を上げた点は、戦略遂行能力の高さを示している。また、売上構成においても顕著な変化が見られた。ストック型事業が中期経営計画の想定を上回る成長を遂げたことで、同社の収益構造がよりバランスの取れたものへと転換した。これは、短期的な景気変動に対する耐性を高め、中長期的な企業価値の安定的向上に寄与する要素と評価できる。同時に人的資本や財務基盤の強化にも取り組んだことは、単なる業績向上にとどまらず、持続可能な成長を見据えた構造改革が着実に進んでいることを示唆している。
2. 現中期経営計画と長期ビジョン2035の概要
同社グループは、2024年5月に中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)と長期ビジョン2035を策定し、推進している。中期経営計画では「お客様視点のものづくりと心温かいサービスで、本業連携多角化を推進し、社会課題の解決に取り組む」を基本方針として、各事業において成長戦略を打ち出し、人財基盤やサービスの強化、本業連携多角化の推進を重点ポイントに挙げている。
2028年3月期の経営数値目標は、売上高1,350億円、経常利益270億円とし、経常利益率20%、自己資本比率45%水準、ROE14%以上を掲げている。ROE目標は前中期経営計画の10%以上から14%以上に引き上げられた。これは2025年3月期の14.7%という実績を踏まえたほか、同社の事業モデル上、高い売上総利益率を背景とした資産効率及び当期純利益率の高水準な推移を反映したものであり、より高いROE水準を目指すことが妥当と判断したためである。
長期ビジョン2035では「限りある資源を活かし、世界を笑顔と感動で満たす!未来価値創造に挑み続ける企業グループへ」をスローガンとして、2035年3月期に売上高3,000億円、経常利益600億円を目標に掲げている。
同社グループは前中期経営計画においては、オフィス需要の変動などの外部環境リスクに対応しつつ、収益基盤の多角化やESG投資を推進した結果、最終年度は経営数値目標を上回る成果を収めた。こうした着実な実績に加え、10年後のありたい姿として策定した長期ビジョン2035からバックキャスト(逆算)し、現中期経営計画を策定した戦略的合理性は高い。足元の安定的な収益の確保と持続的な成長性の両立が十分に期待できると弊社は考えている。
不動産活用の多角化を進め、事業領域とエリア拡大により成長を加速
3. 中期経営計画における成長戦略と重点施策
現中期経営計画では、開発とサービス・運営を組み合わせた不動産活用の多角化を進め、事業領域とエリアを拡大することで成長を加速させる。オフィス市場では、企業が集積する東京において中小型ビルの老朽化が進み、資源の無駄遣いを抑えた改修や建て替え需要が強い。このため事業領域を新築へ拡大する。不動産小口所有商品は教育・医療をテーマにしており、長期的なキャッシュ・フローが見込まれるため、潜在的成長性が高い市場である。東京23区内に加えて、大阪の主要都市及び周辺地域にエリアを拡大することで、全国の顧客ニーズに対応する。貸会議室運営においても、大阪にエリアを拡大する予定である。貸会議室の既存顧客には全国規模で展開する企業も多いため、同社も大阪エリアについての問い合わせを受けており、同エリアでの需要は高いと考えている。レジデンシャル市場では、人口増加と高い成長率が続くニューヨークとベトナムや、転入超過が続く東京圏において、高品質の居住用不動産を提供していく。中期経営計画における投資総額は3,100億円を見込んでおり、将来の事業成長へ向け、各事業の利益率や回転率を重視したうえで、資本コストを意識しつつ、成長分野に積極投資する方針である。
また、中期経営計画の重点施策として、「人財基盤の強化」「お客様視点のものづくりと心温かいサービス」「本業連携多角化の推進」の3つを掲げている。
(1) 人財基盤の強化
採用の強化により人財を増強するとともに、経営理念に基づく教育・育成によるリーダー人財の輩出や、アメーバ経営下でアメーバ分裂による組織拡大を図る。人財育成方針として多様性の尊重と活用を掲げ、働きがい、創造性、成長機会のある職場づくりに向けて環境を整備する方針である。年齢・性別・国籍を問わない多様性を持ち、「利他」の価値観で人財の集まる企業へと、さらなる進化を目指す。具体的な施策としては、社員のライフステージに合わせた職場環境整備や柔軟な研修機会の提供、事業の多角化と組織の拡大に向けたアメーバリーダー人財の育成・輩出、次世代リーダー育成プログラムの構築、外部研修への支援制度等の充実を図り、所定労働時間に対する研修時間の割合が12%以上となるよう推進する。そのほかにも、DX活用や業務プロセス改善により個々の能力を高め、時間当たり経常利益額を前期比で増加させていく。
(2) お客様視点のものづくりと心温かいサービス
ものづくりの面では、新築ビル開発、ホテル開発、ニューヨークでのアパートメント・リプランニング、ベトナムでのマンション開発において、オフィスビルのリプランニングで培ったユーザー視点のものづくり力を活用する。建設事業基盤の強化については、M&Aの活用も視野に入れる。サービス面では、ビルオーナーに寄り添い、長期的視点に立った課題解決力の向上と、テナント・サービス利用企業の要望に応えるきめ細かで心温かい対応力の向上を掲げる。また、ホテル宿泊者に対して心温かい楽しいサ―ビスを提供できる人財の育成と組織風土づくりを強化する。
(3) 本業連携多角化の推進
本業連携多角化の推進により、事業領域を拡大しフロー型事業の多様化を図るとともに、ストック型事業の売上構成比率を高める。フロー型事業では、売買仲介・賃貸仲介部門・プロパティマネジメント部門・建設部門の連携により、建物の経済価値を長期的に維持できる新築事業を展開する。また、不動産小口所有商品では、都心周辺に加え、大阪での商品展開を推進する。海外市場においては、ニューヨークでのアパートメント・リプランニングやベトナムでのマンション開発を推進する。ストック型事業では、顧客の課題解決のためにさらなる多様な不動産サービスの提供を目指す。賃貸仲介事業では、都内の支店網を増強しサブリース受託に注力する。プロパティマネジメント事業では、管理受託棟数の増加に向けた取り組みを推進する。貸会議室事業では運営面積を拡大し、ホテル・観光事業ではM&Aも視野に入れ、ホテル運営室数の拡大を図る。弊社は、こうした多角化戦略においてストック型事業の成長を加速させることは、グループ全体の収益の安定性を高めるだけでなく、景気変動への耐性と持続的な成長基盤をより強固なものにすると評価している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木 稜司)
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