ラクトJPN Research Memo(2):グローバル調達ネットワークを構築し輸入乳製品の取り扱いは国内トップクラス
1. 会社概要
ラクト・ジャパン<3139>は、東京都中央区に本社を置く独立系の食品専門商社であり、乳製品原料を中心に、機能性食品原料、食肉及び食肉加工品など幅広い食品原料の輸入・販売を手掛けている。グループは同社を中心に、国内連結子会社1社、海外連結子会社9社、海外持分法適用関連会社1社で構成され、グローバルに事業を展開している。社名の「ラクト」はラテン語で「乳」を意味しており、その名のとおり、同社は乳製品原料の輸入事業を軸として成長してきた企業である。日本の輸入乳製品市場における同社の取り扱いシェアは3割を超え、国内トップクラスの地位を確立している。
同社は、もともと食品専門商社として乳製品輸入の黎明期から輸入事業を行っていた(株)東食(現 カーギルジャパン(合))の酪農品部門が独立した会社であり、創業時点で既に国内外に一定の取引基盤とノウハウを有していたことが、その後の事業拡大の土台となった。創業以降は、北米、欧州、オセアニアといった世界の主要な生乳生産地に現地法人を設立し、サプライヤーとの直接的かつ長期的なリレーションを構築することで、安定的かつ高品質な調達体制を強化してきた。乳原料は、異物混入や微生物管理、輸送時の温度管理など、極めて厳格な品質管理が求められる商材であり、日本の食品安全・衛生基準の中でも特に管理難度の高い分野に属する。加えて、乳製品は乳幼児から高齢者まで幅広い層が口にする食品に使用されるため、社会的責任も大きい。このような領域で長年にわたり事業を継続してきた点は、同社の品質管理能力と取引先からの信頼の厚さを示すものと言える。
乳製品原料は乳業メーカーに限らず、菓子・パン・加工食品・飲料など多様な食品分野で使用されており、最終製品においては少量であっても機能的に重要な役割を果たすケースが多い。このため、同社の顧客基盤は特定業界に偏らず、幅広い食品メーカーに広がっている。こうした販路の多様性は、需要変動に対する耐性を高めるとともに、新たな原料や用途開発への展開余地を広げている。また、近年は、乳製品原料に加え、食肉及び食肉加工品の輸入販売にも注力し、仕入先及び調達品目の多角化を進めている。さらに、健康志向の高まりを背景に、乳由来のプロテイン原料をはじめとする機能性食品原料の取り扱いを拡大し、成長分野への対応を進めている点も特徴である。加えて、同社は日本向けの輸入販売事業にとどまらず、成長著しいアジア市場にも積極的に展開している。現地に子会社・関連会社を設立し、乳製品の輸入販売に加え、プロセスチーズやナチュラルチーズ加工品の製造・販売事業を展開するなど、商社機能と製造機能を併せ持つ「複合型食品企業」としての事業モデルを深化させている。
2. 沿革
(1) 1998年~2004年:創業とグローバル調達基盤の確立期
同社は1998年5月、東京都台東区浅草橋において設立され、当初は農産物及び農産物加工品の輸入・販売を行う食品専門商社として事業を開始した。創業当初から、国内市場に閉じた事業展開ではなく、乳製品原料の安定的な確保を見据えたグローバル志向を明確にしていた点が特徴である。設立年のうちに米国ロサンゼルス及びシンガポールに駐在員事務所を開設し、1999年にはオーストラリア・メルボルンにも進出した。さらに2000年にはオランダ・アムステルダムに拠点を設け、北米、オセアニア、欧州という世界の主要な生乳生産地域を短期間で網羅する体制を構築した。1999年にはシンガポールに乳製品原料卸売のための現地法人を設立し、駐在員事務所から実働拠点へと発展させた。2000年には農畜産業振興事業団(現 独立行政法人農畜産業振興機構)の指定輸入業者となり、日本国内における制度的な信頼性も獲得している。この期間は、同社が「乳製品原料に強みを持つ食品専門商社」としての立ち位置を明確にし、グローバルな調達ネットワークの骨格を築いた段階であった。
(2) 2005年~2014年:事業多角化とアジア展開の加速期
2005年以降、同社は乳製品原料の輸入販売を中核に据えつつ、事業領域の拡張を本格化させた。2005年に食肉加工品の仕入・販売を開始し、同時にアジア市場への展開を加速させた。2003年に設立したシンガポールのチーズ製造・販売会社を軸に、2008年には現地法人の統合を行った。2009年にはオーストラリア及び米国で駐在員事務所を法人化し、調達拠点の自立性と機動力を高めた。2010年代に入ると、マレーシア、インドネシア、タイ、中国へ進出し、特にチーズの製造・販売事業をアジア各国で展開した。これは、商社機能に製造機能を組み合わせることで、価格競争に陥りにくい付加価値型ビジネスへの転換を図る戦略であり、現在の複合型事業モデルの原型がこの時期に形成されたと言える。この期間は、同社が「乳製品原料輸入商社」から「商社機能と製造機能を併せ持つ複合型食品企業」へと進化していく過程であった。
(3) 2015年~現在:上場企業としての高度化と持続的成長期
2015年8月の東京証券取引所(以下、東証)市場第二部への上場は、同社にとって大きな転換点となった。上場を通じて資本市場との対話が本格化し、ガバナンス、内部管理体制、成長戦略の明確化が強く意識されるようになった。2017年には東証第一部銘柄に指定され、2022年にはプライム市場へ移行するなど、企業価値向上の取り組みが段階的に評価されている。この期間には、欧州拠点の法人化や、フィリピン及びインドネシアでの販売拠点設立など、成長市場であるアジアを中心とした投資を継続した。2021年には監査等委員会設置会社へ移行し、国内連結子会社を設立するなど、グループ経営及びガバナンス体制の高度化も進めている。2026年2月にはシンガポールで床面積6,500m2の新工場が竣工する予定で、今後の成長ドライバーとして位置付けている。これは、輸入販売に依存しない、地域密着型かつ付加価値型の事業モデルをアジアで確立しようとする戦略の延長線上にある。この期間は、同社が上場企業としての規律を備えつつ、グローバル調達力と製造機能を組み合わせた複合型食品企業として、持続的成長を志向する段階に入った時期である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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