FB Research Memo(9):2027年4月期に営業利益8,000百万円を目指す(2)
2. 中期経営計画「SiLK VISION2027」の概要
(1) 位置付け及び方向性
フリービット<3843>の2024年7月に10ヶ年計画の第2ステージにあたる中期経営計画「SiLK VISION 2027」を公表し1年半が経過した。「SiLK VISION 2027」では、これまで創出してきた各種シード事業※1の社会実装に加え、既存事業の成長に合わせたM&A戦略の実行、業務提携による戦略ポートフォリオの拡大に取り組む。併せて、「Trusted Web」※2の概念に則った事業展開を推進し、既存の高収益化ビジネスから高PER化に向けて、最終的には「通信生まれのweb3実装企業」への転換(カテゴリーチェンジを含む)につなげる考えだ。2025年7月には、創業以来20年以上にわたり構想・開発を続けてきた完全web3実装型の技術基盤「Portfolia」※3の概要を公表し、技術構造や特徴・社会実装例などとともに、今後の目指す方向性を示した。
※1 「トーンモバイル」におけるユーザー協力型実証実験「TONE Labo」等を通じて、「TONE Care」(健康相談や「スマホ使い過ぎ相談」などの5G Healthstyle領域)の開発及びテストの実施や「TONE Coin」(web3及びブロックチェーン)関係の開発及びテストの実施など、5G/web3を見据えた各種サービスの開発などに取り組んできた。
※2 インターネット上のデータのやり取りにおいて、データの信頼性を確保する仕組みを構築する構想。同社は「信用の所在地」の追求という表現で、自らの存在価値を高める方向性を示している。
※3 「Portfolia」とは、これまでの中央集権型インターネットの抱える社会課題(たとえば、クラウドサーバー依存とデータセンター問題、個人情報の集中とプライバシーリスク、エコシステムの囲い込みと検閲など)に対する「アンチテーゼ」として存在し、サーバーレス及び個人情報を取得しない設計といった持続可能なプラットフォーマー構築への進化に向けた象徴的なものである。同社では、すべてのプロダクト群への実装を行い、利用者の利便性向上のみならず、運営者の劇的な費用削減を目指す。
(2) web3社会実装に向けた象徴的な取り組み
1) 医療DX
日本最大クラスの病床数、臨床データ基盤を持つ藤田学園と医療DX等における共同研究開発の基本合意書を2024年5月に締結した。政府が推進する医療DXとTrusted Web構想の概念設計に基づくサービスを構築し、「データの信頼性と検証可能性の向上」「国民の健康推進と医療サービスの質の向上」の実現を目指すものである。
具体的な取り組みとして、ヘルスケアデータの管理・活用、マイナンバーカードをトラストアンカーとした共通IDに関する共同事業、各病院や研究機関・国・自治体などへの技術提供の検討を進めている。実現すれば、個人が医療情報を管理できるようになる。また、過去の治療歴や診断結果などの情報を各医療機関と共有することで診療の効率が上がり、医療リソースの不足や合理化などの課題解決にも貢献できる。2024年9月にはPoC1(概念実証)が完了し、利用者からは肯定的な評価が多数寄せられたとしている。
2) 「One Vision」構想
web3によるステークホルダーコミュニティ実証実験「One Vision」の新しい株主還元策として、株主自身のスマートフォンでブロックチェーンが動作する「フリービット株主DAO」アプリを2024年6月より提供開始した。ブロックチェーンのシーリング(マイニング)報酬として、「TONE Coin」が獲得できる。また、今後予定されている株主専用コミュニティへの参加と貢献トークンの獲得や、同社グループの先進的な実証実験への参加も含まれる。
同社では「One Vision」を通じて、顧客・株主・従業員がコミュニティとして1つのビジョンを共有し、世界規模のL1ブロックチェーンを運営する計画である。これにより、web3時代の新しいステークホルダーコミュニティを基盤としてスマートフォンの待機電力とCPUを利用した地球にやさしいブロックチェーンネットワークの維持という社会実験に貢献し、世界最大規模の「非中央集権化」を実現したブロックチェーンコミュニティを目指す。
(3) 財務戦略と業績目標
同社は、事業活動で創出する営業キャッシュ・フローを原資とし、「成長投資」「株主還元」「健全な財務体質の維持」の3つのバランスを考慮したキャピタル・アロケーションを目指している。ソフトバンクとの資本業務提携及びギガプライズのTOB実施により「SiLK VISION 2027」公表時から金額をアップデートしている。具体的には、3期累計で160億円以上の営業キャッシュ・フローを「成長投資」に110億円以上、「株主還元」に30億円程度、「その他(サステナビリティ、人的投資、内部留保)」に20億円程度を配分する方針だ。
また、最終年度(2027年4月期)の業績目標として、売上高63,000百万円~70,000百万円、営業利益8,000百万円(年平均成長率13%)を掲げている。売上高目標がレンジ形式で示されている背景には、ソリューションの提供形態(ソフトウェア単体、並びにハードウェアを組み合わせた形態)による売上計上の差異を考慮している点がある。利益目標については、提供形態にかかわらず生み出される付加価値をコミットする水準として設定している。
3. 中長期的な注目点
通信インフラ事業で蓄積した技術資産、並びに運用ノウハウを基軸に、成長余力の大きいweb3ビジネスを展開する戦略は、高い合理性と蓋然性を有していると弊社では評価している。現行の主力サービスが将来的に成熟期を迎える推移を想定すれば、プロダクト・ライフサイクル・マネジメントの観点からも、次世代の収益源となる成長ドライバーを育成する意義は大きい。したがって、既存事業の業績が堅調な現段階において将来の成長投資を先行させ、事業の具体化、市場における主導権の確保を推進することが、中期的な企業価値向上における重要なテーマとなる。今後は、医療DX、クリエイタープラットフォーム「StandAlone」、並びにソフトバンクとの資本業務提携等を通じたユースケースの拡充、社会実装の進展が注目される。また、新たな外部パートナーとの連携状況は、同社の技術的優位性、事業の具現性を客観的に評価するうえでの重要な指標になるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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