THE WHY HOW DO COMPANY:「人助けM&A」を起点に形成されたサバイバル型コングロマリット
同社の歴史を振り返ると、約20年前にIT企業として創業し、短期間で上場を果たした。しかし、その後スマートフォンの普及や事業環境の変化を受けて業績は一時低迷していた。2018年夏頃に弁護士田邊氏が筆頭株主となり、経営を支える立場に回った当初は、M&Aを前提とした成長戦略を描いていたわけではなく、既存事業の立て直しが主眼であったという。その過程で複数の事業を連結・ロールアップしてきた結果、現在の多事業体制が形成された。
同社のM&A思想の源流は、現会長である田邊氏のバックグラウンドにある。田邊氏は弁護士として民事再生・企業再生に長く関与しており、「経営が行き詰まった企業をどう立て直すか」という視点が、同社のM&Aスタンスの根底にあるという。現在掲げているM&Aは、いわゆるファンド型の短期回収モデルではなく、経営者や従業員を活かしながら事業を存続させる「人助け」を前提とした事業承継型M&Aであり、後継者不足に悩む中小企業の受け皿となることを意識している。実際、同社はファンドを競合として意識しておらず、事業承継型M&Aを主軸とする点を自社の立ち位置としている。また、M&Aを主軸として非連続的な成長を目指している上場企業は、GENDAや技術承継機構、ヨシムラフードホールディングスなどが挙げられるが、同社は領域や業種を問わずに後継者不足に悩む企業を買収対象としている。ただ、一つの軸としては日本の伝統文化や技術を持った企業は、より買収対象として捉えているようだ。
事業ポートフォリオについて、会社側は連結子会社を切り離していく考えは現時点では持っておらず、全社的な「膿出し」は前期までに概ね終わったとの認識を示している。足元では全子会社の黒字化を目標に掲げ、各事業が独立採算で切磋琢磨する体制を志向している。例外的に課題として挙げられたのがライフスタイル事業を担うサンライズジャパンであり、同社は日焼けマシン分野で国内唯一のプレイヤーであるものの、直近で民事再生申請に至っている。債務整理による再出発が見込まれる一方、取引先との関係維持や事業再構築が今後の焦点となるようだ。
最大セグメントであるエンタテインメント事業については、音楽著作権収入を担うサウンドポート、興行収益を生むパビリオン、小室哲哉氏を軸とした音楽IPなどが収益源となっている。TM NETWORKの周年ライブなどによる興行収入が業績を押し上げた局面もあり、足元ではグループの利益を牽引する役割を果たしている。一方で、同社自身も「人助け」に近い形で関与してきた経緯があり、必ずしも最初から収益性を最優先に組み込んだ事業ではなかった点は、同社のエンタメ事業の特性を示している。
直近業績は、1月14日に2026年8月期 第1四半期(1Q)決算を発表、売上高806百万円(前年同期比98.3%増)、営業損益125百万円の赤字で着地した。ただ、調整後EBITDA38百万円の黒字、調整後 1Q営業利益14百万円と本業利益は黒字となっており、M&A投資(M&A関連費用139百万円)が決算短信表示上の営業利益を押し下げていることとなる。1QはM&A戦略を推進し、ブライダル事業の株式会社スティルアン(ライフスタイル事業)及び漏水探索機事業等を行う株式会社グッドマン(ソリューション事業)の株式を取得した。これら2社がグループに加わったことでトップラインを押し上げた。今期は売上高3,601百万円(前期比2.05倍)を計画している・
中期的な成長戦略としては、2028年8月期に売上高100億円、調整後EBITDA10億円を目標に掲げており、その達成手段としてM&Aが引き続き中心となる見通しである。2024年10月に取得したグッドマンは、漏水・漏電などインフラの劣化を検知する検査機器を有しており、AI技術を活用した探査能力に強みを持つ。既に東京都の上下水道や札幌市での実績があり、営業活動はこれから本格化する段階にあるものの、技術的優位性と社会インフラ向けという市場特性から、成長余地の大きい案件と位置付けられている。
株主還元および資本政策の面では、個人株主の比率が高い点を踏まえ、ビットコインを活用した株主優待を導入している。抽選で総額15.4百万円相当を株主へ贈呈する。機関投資家が出入りしやすい株主構成の中で、個人株主を「応援団」として重視する姿勢が示されており、長期的には利益を安定的に生み出す企業体質への転換を目指すとしている。また、同社は過去にエストニアで暗号資産取引所を運営していた経験があり、暗号資産への関与は突発的な施策というよりも、一定の知見を背景とした取り組みと説明している。
IR活動については、東証からの要請も踏まえ、単なる数値説明にとどまらず「ワクワクできるIR」、すなわちエクイティストーリーの発信を強化していく方針である。経営陣としては、M&Aに対する考え方や理念、ファンドでも単なる事業承継でもない「第三の道」としての立ち位置を、投資家に伝えていきたいとしている。今後は、調整後EBITDAや投資キャッシュフローを軸に、M&Aの成果をどこまで定量的に示せるかが、市場評価を左右するポイントになると考えられる。
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