MDNT Research Memo(8):2028年9月期に細胞加工業の黒字回復を目指す
1. 中期経営計画の概要
メディネット<2370>は中期経営計画「VISION2030」において、再生・細胞医療を通じて「病気やけがを治すとともに、健康維持・改善に寄与することによりWell-Being社会(“身体的・精神的・社会的に良好な状態にある社会”)に貢献するHealthcare Innovating Companyを目指す」というビジョンを掲げている。
この実現に向けて強みと経験を生かした成長の追求、環境変化を踏まえた事業モデルの変革、そして組織基盤の強化を中核に据えている。具体的な戦略として、特定細胞加工物製造受託の拡大、CDMO事業の基盤強化、再生医療等製品の開発加速と新規シーズ育成を進める。同時に、生産性と収益性の向上を図り、既存事業とのシナジーを持つ新規事業領域の創出にも取り組む方針である。さらに、人財の活性化やDX推進を通じた社内環境整備も重要施策として位置付けている。
同社は規制環境の変化も事業機会として捉えており、従来の医療機関向け加工受託に加え、企業や研究機関向けの細胞加工需要の獲得を目指すことで、事業領域の拡大と収益基盤の強化を図る。さらに、再生医療等製品の開発を加速させ、製造販売承認の取得を通じて事業成長を実現する意向である。
細胞加工業については、2028年9月期の黒字回復を定量目標として設定している。同社はセグメント黒字化達成のための売上高規模を1,000百万円程度と見込んでいる。この実現に向けて、がん免疫細胞治療に関わる細胞加工数の回復と増加、受託対象となる細胞種の拡大、CDMO事業における既存顧客案件の深耕と新規案件の獲得を通じて生産効率を高める方針である。再生医療等製品事業では、Stempeucelに関するオプション権行使によるライセンスインと治験開始、並びにMDNT-01の国内開発方針決定を2026年9月期中の目標としている。
2. 成長戦略
(1) 特定細胞加工物製造業
同社は、細胞加工技術のニーズの高い中国・台湾・韓国・東南アジアを中心にアライアンスを推進しており、ロイヤルティ収入の拡大を図っている。また、韓国、中国、インドネシアなどアジア圏からのインバウンド治療ニーズの取り込みを目指し、国内医療機関と連携した受入体制の強化や海外エージェント網の整備を進めている。海外患者の受入拡大は受託件数の安定確保につながるだけでなく、国際的な細胞治療ネットワークの形成を促し、将来的な収益基盤の拡大にも寄与すると見込まれる。
(2) 品川CPFの生産効率向上と基盤整備
同社の中核拠点である品川CPFは、治験用製品・承認取得後製品と医療機関向け細胞加工の並行実施が可能である。この設備優位性を最大限に生かすため、工程改善や品質保証体制の強化、複数細胞種に対応した運用最適化を進めている。これらの取り組みによる生産効率の向上は、売上総利益率の改善に直結するとともに、CDMO案件増加時の受入余力の確保にも寄与する。同社は、今後も新規細胞種や治験製品・承認取得後製品への対応に合わせた投資と運用改善を継続する方針である。
(3) CDMO事業の体制強化と人材育成
CDMO事業は同社にとって重要な成長領域であり、多様な治験製品・承認取得後製品の受託を見据えて製造部門の体制強化、人材育成、設備投資を積極的に進めている。ヤンセンファーマ、ティーセルヌーヴォー、AGCなど複数の製薬企業や大学発ベンチャーとの協業案件が増加しており、技術移転の初期段階から商業生産まで連続性を持った受託ポートフォリオの形成が進んでいる。特にAGCとは人的交流も含む協働体制が構築されており、国内外の製造ネットワークを活用した新規案件獲得が期待されている。
(4) 研究開発シーズの進捗
同社は中長期的な企業価値向上に向け、自社技術の高度化と新規治療シーズの創出に取り組んでいる。
HSP-105特異的TCR-T細胞は、がん抗原「HSP-105」を標的として特異的に傷害する細胞であり、(国研)国立がん研究センターと共同研究を実施している。2026年9月期には非臨床POCデータの取得を目指して開発を進めている。
また、MUSCAT-Assayは高感度抗体検出技術であり、岡山大学との共同研究を進めている。免疫チェックポイント阻害薬の効果予測/判定のための診断薬やがんリスク検査への応用可能性が検討されており、診断領域への事業展開余地を広げるものとなっている。
さらに、長年の免疫細胞加工実績に基づき、免疫細胞治療全体のエビデンス拡充にも取り組んでいる。滉志会瀬田クリニック東京との共同研究により臨床データを蓄積し、治療効果の可視化や標準化に向けた基盤整備を進めることで、免疫細胞治療の信頼性向上と市場拡大を目指している。
加えて、2-DG添加培養技術の研究も進めている。これは、細胞代謝を制御することで治療用細胞の品質向上を図る取り組みである。この技術により、細胞の抗腫瘍活性や持続性の向上が期待されており、将来的な免疫細胞治療の高度化につながる研究テーマとして位置付けられている。
これらの研究開発は短期的な収益貢献こそ限定的であるものの、将来の事業化や技術導出の可能性を広げる重要な取り組みであり、同社の技術ポートフォリオ強化に寄与するものである。
(5) バリューチェーン事業(技術導出・ロイヤルティ収入)
同社は細胞加工技術や知見を外部機関に提供するバリューチェーン事業を展開し、受託加工以外の収益源を拡大している。継続的な細胞加工施設の運営受託に加え、台湾のMedigenにおいては同社の技術を用いた細胞治療が行われており、同社はこれに対するロイヤルティ収入を得ている。また、再生医療等提供計画の届出が増加する領域では、医療機関への技術指導やコンサルティングの需要も高まっており、今後は海外連携を含め技術導出の拡大が見込まれる。
(6) インバウンド需要の取り込み(医療ツーリズム)
免疫細胞治療に関する海外患者の需要が回復傾向にあり、同社はインバウンド医療ツーリズムを成長機会として位置付けている。アジア圏を中心とした患者受入の増加に備え、医療機関連携の強化や海外エージェントの拡充に取り組み、日本の高品質な細胞加工技術を強みに海外市場の取り込みを進める考えである。
■株主還元
先行投資の確実な回収と継続的な成長による企業価値向上を優先
同社は株主に対する利益還元を最重要課題の1つとして位置付けており、配当については業績や経営基盤の強化、及び将来の成長見通しを総合的に勘案して判断する方針である。一方で、現時点では、先行投資の確実な回収と持続的成長による企業価値向上を優先しており、現在に至るまで配当実施の実績はない。
2025年9月期末には累積損失が発生しており、まずは累積損失の早期解消に努めるとともに、内部留保を確保し、再生医療等製品の開発や設備投資、細胞加工業の顧客獲得に必要な資金に優先的に充当する方針である。こうした取り組みにより企業体質の強化と事業の拡大を図る。
なお、配当の実施については、会社全体の黒字化が前提であるとの認識を示しており、安定した収益基盤の確立が今後の株主還元の実施条件となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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