山田コンサル Research Memo(4):2026年3月期は増収減益を予想するも、下期は2ケタ増益に転じる見通し
1. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の業績予想は、売上高で前期比14.2%増の26,000百万円、営業利益で同8.0%減の3,800百万円、経常利益で同9.7%減の3,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同4.5%減の2,750百万円と、期初計画を据え置いた。売上高は、コンサルティング事業で同2.1%増と着実な増収を見込むほか、投資事業で同115.7%増と2期ぶりの増収を見込む。利益面では、前期にM&A成約案件が集中したピナクルが反動減となるほか、高利回りの投資売却案件がはく落するものの、経営コンサルティング事業やM&Aアドバイザリー事業、事業承継コンサルティング事業などのコンサルティング需要を下期に取り込むことで、売上総利益は同0.9%増の19,600百万円と小幅増益を見込む。人件費やシステム費用を中心に販管費が同3.3%増の15,800百万円となり、営業利益は通期で小幅減益となるが、下期単独で見ると前年同期比38.4%増の1,709百万円と2ケタ増益に転じる見込みである。
(1) コンサルティング事業
コンサルティング事業は、売上高で前期比2.1%増の20,800百万円、売上総利益で同1.3%増の18,430百万円、営業利益で同7.7%減の2,930百万円を見込んでいる。増収率が小幅にとどまるのは、前期に貢献したピナクルが反動減で4〜5億円の減収を見込んでいるためである。同社は、この反動減を除けば、コンサルティング事業の受注は順調に増加しており、成長トレンドが継続していると認識している。特に同社の主要ターゲット層である中堅企業については、政府方針による資金面や人材面など幅広い支援を行うことで、日本経済活性化の担い手となることが期待されている。このため、経営環境の変化とともに様々なコンサルティングニーズが生まれており、同社にとっては追い風になると予想される。また、海外子会社の収益についても日系企業の海外進出ニーズが高まるなかで、同社との協業案件が増加傾向にあるため、売上の拡大に伴い収支均衡ラインまで改善することが見込まれる。
(2) 投資事業
投資事業は、売上高で前期比115.7%増の5,200百万円、売上総利益で同5.2%減の1,170百万円、営業利益で同8.7%減の870百万円を見込んでいる。前期に計上した高利回りの投資売却案件が一巡するため減益を見込むが、投資株式や投資不動産の売却を進めることで、小幅な減益にとどめる計画である。なお、投資残高については財務の健全性にも配慮しつつ、優良な投資機会には積極的に投資を行うとしている。
人材戦略など持続的成長に向けた取り組みが進展
2. 持続的成長に向けた取り組み
同社は個と組織の持続的成長に向けた取り組みとして、「人材戦略基本方針」「社内連携」「新規・成長分野」の3つに注力している。
(1) 人材戦略基本方針
同社は、成長の源泉は人材と組織力にあるとの考えの下、人材の採用・育成及び定着率の向上に注力している。人材の採用については新卒・中途採用含めて、年間200名前後の採用を継続しており、このうち海外子会社についても年間数十名規模の採用を実施している。退職者数についても年間120名ペースが継続しているが、離職率については2023年3月期の12.2%から2025年3月期は10.2%とやや改善傾向にある。
同社は定着率の向上施策として、チャレンジし続けられる職場、安心して働ける職場の実現に向けて各種制度や環境の整備にここ数年取り組み、その効果が顕在化し始めている。これまでは入社3年未満の退職者数が多かったが、ここ1〜2年で大幅に減少した。これは、実務研修の実施によりスキル不足を理由とした離職が減少したことや、柔軟な働き方を希望する社員に対して、在宅勤務の推進やフレキシブル勤務、時短勤務制度の導入など環境整備に取り組んだことが寄与した。また、社長による全社員への面談に加え、2025年には海外子会社のローカルスタッフとも現地での面談を開始した(シンガポール、中国で実施済み)。
海外子会社の離職率はほかの外資系企業よりも低い水準にあるものの、同社グループのなかでは高水準であり、収益改善に向けた課題となっていた。今回の取り組みにより、経営層と現場スタッフとの距離感が縮まり、考え方を共有することによって離職率の改善が進むものと期待される。
(2) 社内連携
同社はコンサルティングサービスの品質向上と受注機会の最大化に向けた取り組みとして、拠点間連携及び事業間連携に注力してきたが、今後も成長戦略の1つとして継続する方針である。拠点間連携とは、東京と地方拠点や海外拠点のスタッフが案件を協働で進めることで、全国のコンサルティングサービスの品質を均質化し、全体のレベルアップを図るとともに顧客満足度の向上を目指すものであり、地方拠点から東京への出向も定期的に実施している。一方、事業間連携とは、顧客の経営課題に応じて事業間で紹介・協働することで、顧客ニーズに対応していく取り組みとなる。
(3) 新規・成長分野
新規・成長分野として、海外コンサルティング、投資事業、DXコンサルティングの3つに注力する。海外コンサルティングでは自社拠点の強みを生かし、海外進出あるいはクロスボーダーM&Aに取り組む日系企業に加え、ローカル企業のM&A案件なども手掛ける方針だ。同社は、アジアを中心に子会社を展開しているが、2025年に入ってスイスのClairfield International LLCへマイノリティ出資を行い、クロスボーダーM&A事業で連携強化を進めているほか、米国に事業所を2拠点新設するなど、事業拡大に向けた体制強化を積極的に進めている。
海外における顧客獲得チャネルは現地の金融機関(日系企業、ローカル企業含む)に加え、セミナー開催や子会社が発行するリサーチレポートを顧客獲得ツールとして活用している。中国子会社では、従来、日系企業の脱中国に向けたコンサルティング案件が主体であったが、最近ではローカル企業向けの営業活動にも注力し始めている。景気低迷が長引くなかで、中国企業もコンサルティングニーズが多く発生しており、同社にとっては事業拡大の好機となる。海外コンサルティングは2026年3月期に収支均衡水準となる見通しであり、2027年3月期からスタートする次期中期経営計画では具体的な目標数値も打ち出すものと見られ、今後の展開が注目される。
投資事業については、投資対象を厳選しながら一定水準以上の利益を獲得していく方針である。DXコンサルティングについては、需要が旺盛であるものの、DXコンサルタントの採用が想定どおりに進まず、当初想定よりも売上成長ペースは緩やかとなっている。しかし、中堅企業や中小企業のDX化の取り組みは大企業と比べて遅れているため、今後の売上拡大余地は大きい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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