ティアンドエス Research Memo(8):2031年9月期にEBITDA20億円、時価総額300億円を目指す
1. 長期ビジョン「T&S Growth Journey 2031」の策定
ティアンドエスグループ<4055>は2024年12月17日に公表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」において、2035年9月期までに売上高100億円、時価総額300億円と長期目標を掲げていたが、その後、事業環境の変化、足元の業績進捗、成長施策の実現可能性を改めて精査した結果、目標達成時期を前倒しする形で2025年9月に長期ビジョン「T&S Growth Journey 2031」を策定した。2031年9月期を最終年度とする本ビジョンでは、売上高100億円、EBITDA20億円、時価総額300億円を定量目標として設定している。KPIは、システム開発事業本部の年間受注工数が2025年9月期比52.4%増の1,684人月、ITサービス事業本部のエンジニア数が同37.8%増の456人、イントフォーの年間受注工数が同1.4倍の861人月である。半導体投資の中長期的な拡大、製造業におけるDX・AI活用ニーズの高まりなど外部環境を追い風として、これまで培ってきた技術力と顧客基盤を成長加速に結びつける構えである。
グループ戦略の中核は、「半導体領域におけるナンバーワン・システムインテグレーター」「AI事業の独自ブランド化を起点とする高速成長」「そしてこれらを支えるエンジニア規模の拡大」という3つのミッションで構成されている。
半導体領域については、システム開発・保守・運用ニーズが中長期的に高水準で推移すると見込まれる一方で、高度な専門性と厳格な機密性が求められる分野であり、十分なノウハウを有するシステムインテグレーターは限られている。同社はこうした参入障壁の高い領域において、これまで蓄積してきた経験や実績を強みに、主要顧客との取引を一層深耕するとともに、半導体サプライチェーンに属する新規顧客の開拓を進め、「ナンバーワン・システムインテグレーター」としての地位確立を目指す。加えて、従来のシステム開発にとどまらず、システム導入コンサルティングやソフトウェア検証といった周辺領域へとSIサプライチェーンを延伸し、生成AIの活用、生産管理以外の製造工程や製品企画への対応など、提供価値の拡張を図る。装置メーカーや素材メーカーなど隣接分野への展開も視野に入れ、同業他社のM&Aや、半導体製品商社・材料商社・製造装置商社・コンサルティング会社など異業種との連携を通じて、競争優位性の強化を進める。
AI事業については、画像認識を中心とする先進技術を核に、これまで主として受託開発型で提供してきたAIソリューションをIPとして体系化し、再現性の高いビジネスモデルへと転換する。画像認識技術を活用した自動化ソリューションは、製造業をはじめ幅広い分野で応用余地が大きく、今後も高い成長が見込まれる分野である。同社は半導体×AI、製造業×AIなどの領域で独自ブランドの確立を目指すとともに、ライセンスビジネスへの展開を進める。加えて、生成AIをはじめとする自動化技術が、従来は労働集約的とされてきたITシステム開発・保守・運用の分野にも急速に浸透するなか、研究開発やM&Aを通じてAIソリューション事業の加速度的な拡大を図り、半導体関連及びDX関連のシステム開発事業との横断的なシナジー創出を追求していく。
これらの成長戦略を実行するための基盤として、エンジニア規模の拡大を最重要課題の1つに位置付けている。需要環境は堅調であり、エンジニアの稼働率は高水準が続くと見込まれることから、人的リソースの拡充はそのまま収益拡大につながる。同社は、AIが人に取って代わるのではなく、人がAIを使いこなすことで全体の生産性が向上するという考えの下、高度な専門性を持つエンジニアの採用と育成を通じて、質・量の両面で人材基盤を強化する方針である。採用活動の強化や待遇改善、採用チャネルの多様化、人材育成体制の充実に加え、規模拡大に対応した社内DXや企業認知度向上にも取り組み、同業他社のM&Aを通じた人材獲得も含めて、持続的成長を支えるエンジニア体制の構築を進める。2025年9月期末の従業員数368名に対し、2031年9月期には700人を目指す。
売上高については、2025年9月期の41億円から2031年9月期に100億円への拡大を計画している。その内訳として、既存半導体顧客の深耕による6億円、新規半導体顧客の開拓による23億円、AIビジネス拡大による6億円、プライシング改善による10億円、M&Aの実施による15億円を見込んでいる。また、時価総額300億円の達成に向けては、上記戦略の着実な実行によるファンダメンタルズの向上を前提に、株主還元方針の見直し検討やIR・SR活動の強化を進め、市場との対話を通じた評価向上を図る。中長期視点での成長ストーリーを明確に示すことで、持続的な企業価値向上を目指す姿勢が窺える。
2. 横浜キャピタルとの事業提携
同社は各種施策をスピーディーかつ確実に実行していくため、2025年9月に横浜キャピタルとの間で事業提携契約を締結した。横浜キャピタルは横浜銀行グループを母体とする地域系ベンチャーキャピタルとして、投資先企業に対する経営支援、成長戦略立案、企業価値向上に関する実績を積み重ねており、その知見やネットワークを活用することで、同社の成長戦略をより実効性の高いものへと引き上げる狙いがある。同社は横浜キャピタルから新規顧客開拓を含む売上拡大支援、採用・育成など人事施策の実行支援、M&A候補の探索及び実行支援、KPI設計やデータ活用高度化を通じた経営基盤強化など、多面的な支援を受ける予定である。
また、同社は採用・人材基盤強化やM&Aに伴う支出に備え、負債に偏らない資金調達手段として資本性資金の活用が有用であると判断し、横浜キャピタルが設立したYokohama Bridge投資事業有限責任組合を引受先とする、第三者割当による新株予約権の発行を決定した。新株予約権による調達予定額は13.5億円、割当日は2025年10月3日、行使可能期間は割当日から半年経過後以降5年間に設定されている。行使価額は1,196円、行使可能価額は1,374円であり、株価が行使価額の約115%を超えた場合にのみ行使可能とする条件や、普通株式への転換時期を段階的に設定する仕組みにより、短期的な希薄化を抑制する設計となっている。調達資金の使途としては、採用・人材基盤強化に525百万円、M&Aや事業・資本提携による事業拡大に595百万円、DX推進による営業基盤拡充と生産性向上に230百万円を充当する計画である。
横浜キャピタルとの事業提携は、資金調達と経営支援を一体化させることで中長期的な成長の実行力を高める取り組みであり、同社が掲げる長期ビジョンを成果へとつなげるうえで重要な戦略的意義を持つと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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