リガク・ホールディングス:X線計測技術を軸に拡大続く高付加価値プラットフォーマ―
2024年度の製品別売上収益構成では、多目的分析機器46%、半導体プロセス・コントロール機器26%、製品サービス29%。エンドマーケット別売上収益構成では、産業分野向け約59%、半導体・電子部品36%、アカデミア・ガバメント26%、サービス15%、その他産業(金属、電池、石油化学、セラミックス、セキュリティ等)18%。特筆すべきは、業界トップ企業への納入実績において、グローバル半導体メーカー上位10社、国内製薬会社上位10社、国内化学会社上位10社、すべてに製品を納入している点である。
同社の強みは、第一に、X線計測に関する要素技術の内製化である。国内外でX線源や検出器を自社で開発・製造するだけでなく、光学系から解析ソフトまで独自開発できる企業は限られている。これら要素技術のすり合わせにより機能を最適化することで、物質構造の解析や含有元素の特定、条件変化に伴う物性変化の分析、表面からでは見えない内部構造の把握が高いレベルで可能となり、顧客の研究開発効率化や歩留まり改善に大きく貢献する。主要技術の自社での保有はカスタム要求への柔軟な対応にもつながり、大口顧客との継続的な取引基盤を強化している。第二に、半導体プロセス計測における高い存在感である。先端ロジック・メモリの開発・製造では内部欠陥の把握や多層構造の評価が難度を増しているが、同社のX線技術を用いた薄膜評価装置は非破壊で高精度に検証できる点から国内外で高評価を得ており、JEPと呼ばれる新製品の販売スキームを通じて採用が拡大、半導体メーカーや装置メーカーと長期的な関係を築いている。今後、微細化や3D化が進むほどX線検査の必要性が増すため、同社の商機はさらに広がるとみられる。第三に、産業横断的な市場構造を持つ点である。半導体のほか、二次電池、医薬品、化学、鋼材、学術研究など幅広い顧客層を持ち、単一市場への依存度が低い。分析装置は一度導入されると保守・メンテナンスサービスが継続するためストックビジネスとしても機能し、安定した収益基盤を形成している。装置ストックの積み上がりによりサービス収入の比率は年々上昇しており、景気変動耐性が強まっている。
2025年12月期の第3四半期決算(3Q)は、売上高59,496百万円(前年同期比4.9%減)、営業利益6,562百万円(同44.6%減)で着地した。売上は想定範囲内に着地し、半導体プロセス・コントロール機器における高採算案件の第4四半期(4Q)への集中、戦略投資の継続等により前年同期比で大幅減少。ただ、業績は3Q大底で4Q回復へ進んでいく想定となっている。多目的分析機器は、市場サイクル等の悪影響は上期で脱し3Q単体で反転、海外売上高も中国を除いた累計売上高は同11%増と順調に推移している。半導体プロセス向け装置は、微細化による検査難度の上昇を背景に、非破壊・高精度測定の重要性が増し、4QからはJEPを通じた新製品販売の貢献が始まる。通期計画は、売上収益94,117百万円(前期比3.8%増)、営業利益18,145百万円(同1.2%減)を見込んでいる。
市場環境としても、素材研究や電池領域でX線分析ニーズが増加しており、各業界で研究開発投資が再び活発化している。これまで停滞していた一部産業でも設備投資が戻りつつあり、今後の需要拡大も期待できる。X線技術を利用した分析・計測機器は、様々な材料の研究開発や生産プロセスにおける品質管理、半導体製造のためのプロセス・コントロール、ライフサイエンスの発展に寄与する医薬品の研究開発など、アカデミア、産業分野を問わず、幅広く利用され、科学技術の発展に伴うX線分析ソリューションへの需要の高まりにより、その市場が拡大している。半導体業界では、その技術進化に伴いX線でないと計測が難しい領域も増えており、AI半導体の顧客がその加速を求めている。同社では、2030年における次世代半導体の開発・量産に向けた新製品のロードマップを公表し、顧客と一緒に次世代半導体の開発に取り組む。
同社は中計で売上高1,150~1,200億円、調整後EBITDA315~325億円を掲げている。中期的に「高付加価値製品の拡大」「サービス収益の成長」「海外展開の強化」を重点施策として掲げている。とりわけ半導体分野では高精度計測の必要性が一段と高まり、ロードマップに沿って薄膜評価装置の新製品開発・上市が進んでいる。要素技術の高度化に加え、ソフトウェア解析の強化やAI応用など付加価値向上施策を推進している点も成長ドライバーとなる。また、装置のインストールベース増化により保守・メンテナンスサービスの収入拡大が見込まれ、ストック収益の伸長によって財務安定性は一段と高まる見込みである。海外については北米・アジア・日本を中心に半導体投資が継続しており、欧州市場でも研究用途を中心に販売機会が増えている。同社は製品ラインアップ拡充と拠点強化を進め、グローバルでの存在感をさらに確立する方針だ。素材・電池・医薬など複数産業での分析ニーズ増加も追い風となり、長期的な成長シナリオは明るい。大学・研究機関や産業分野の研究開発部門(Lab)との協働から発展して、社会が必要とする新たな分析技術・手法を確立し、それらを産業分野の生産プロセス(Fab)における標準技術として導入することで装置の拡販を展開していく「Lab to Fab 戦略」の推進を通じた事業成長に取り組んでいる。
株主還元については、各期の業績に応じて連結当期利益の30%を目途に株主への配当を実施していくことを基本方針としている。同社は安定配当を継続しつつ、事業成長に必要な研究開発投資や設備投資も重視する方針を掲げており、成長投資と株主還元の両立を目指している。新製品開発は順調で生産拡大に向けた投資も完了、収益貢献も開始する。今後の新製品展開や海外市場での拡大に期待しつつ、その成長ストーリーに引き続き注目していきたい。
<NH>
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