プロディライト Research Memo(4):NNコミュニケーションズの子会社化によるシナジーを生かす
3. 移動通信設備事業及び取次販売事業
移動通信設備事業と取次販売事業は、子会社化したNNコミュニケーションズによる事業である。移動通信設備事業では、移動体通信基地局の設計・施工・コンサルティング、ネットワーク関連の設計・施工など、取次販売事業では、ブロードバンド代理店としてインターネット回線の契約取次業務や同社から移管した大手電力事業者のガス・電気販売の取次業務などを行っている。同社がNNコミュニケーションズを子会社化した理由は、キャリア基地局や光回線の設置、保守などを通じて培った通信設備工事のノウハウやWeb販売のノウハウにある。同社はこうしたノウハウを活用して、従来外注していたクラウドPBXを設置する作業を内製化して収益性を高めるとともに、Webを通じてSOHOなど10人以下の小規模企業に対し効率的にシステムサービスの提供を進めていく。特に後者に関しては、NNコミュニケーションズが(株)OmniGridから小規模企業向けの電話自動音声応答システムとクラウドPBXサービスを事業譲受し、2025年7月に新たに小規模事業者向けクラウドPBX事業「TELENEAR(テレニア)」を開始している(セグメントは音声ソリューション事業に区分)。「TELENEAR」は、「INNOVERA」と同様に、通話料削減への取り組みや利用開始までの早さを強みとし、主要都市での市外局番の利用も、専用アプリを入れたスマートフォンでの発着信も可能である。このように、NNコミュニケーションズの子会社化によって、事業に幅や深みが加わったため、同社は新たな成長ステージへ入ると期待される。
事業環境と同社の強みにより、「電話のDX」需要が同社に集中
4. 業界環境と同社の強み
2,400億円以上と言われる音声通信サービス市場において、企業の電話システムには、大きく分けてクラウドと大手有力企業が扱うハードウェアの2種類がある。クラウドはハードウェアに対して、固定端末に対応していない、品質やアフターサポートが不足しているといった課題がある。しかし、高度な専用システムの必要がなく、設置場所や専門知識、端末の柔軟性、機能性、メンテナンス、導入などコストや利便性の面で優位性があり、電話対応のための出社が不要で、回線がダウンしても通話が可能、音声通話のテキスト化など業務効率化にも対応しているという強みもある。一方、働き方の多様化、スマートデバイスの浸透、BCP対策の必要性、AIやテクノロジーの発展など事業環境が様々に変化するなかで、「電話のDX」が求められている。この結果、音声通信サービス市場では、法人向けなど固定電話の契約数減少が続く一方で、モバイルやクラウドPBX、特に同社の扱う0ABJ番号※や0ABJIP電話へのシフトが進んでいる。なお、2025年1月の制度改正によって固定電話サービス提供事業者間における双方向番号ポータビリティが開始され、クラウドPBXへのシフトが加速すると期待されている。
※ 03や06などから始まる10桁の固定電話番号のこと。なお、IP電話を通じた0ABJ型番号の取得も可能(0ABJIP電話)。その場合、電話加入権の購入は必要ない。050IP電話の取得も可能である。
依然として企業の約8割がハードウェアのPBXだけを使用しているため、クラウドPBXの需要は今後も伸びていくと予想されるなか、同社の「INNOVERA」には、ワンストップ・ソリューションの仕組み、ユーザー視点で開発されたユーザビリティ、他社サービスとの連携や拡張オプション機能といったフレキシビリティなどの強みがある。例えば、固定電話の番号や機能をそのまま利用できるだけでなく、新しい番号も追加可能であり、ハードウェアにおける品質や機能、サポートも遜色ない。また、オフィスなど一般企業向けクラウドPBX市場には新興の小規模企業が多いが、同社はシステム・回線・端末・アプリをワンストップで提供できるうえ、品質やアフターサポートに対する定評も含めて上場企業としての規模と信頼感がある。また、システムすべてがクラウド上にあるためノイズが少なく音質が鮮明で、万が一問題が発生しても発生場所の特定が容易で使い勝手が良いという強みもある。「ZOOM」や「Microsoft Teams」がクラウドPBXと同様のサービスを提供しているとはいえ日本仕様ではなく、大手通信会社のクラウドPBXに対する関心が薄いため、国内にライバルがいないに等しい状況となっている。これらのことから、ハードウェアからクラウドへの変化という需要が同社に集中しているようだ。
「パートナープログラム」定着と「TELENEAR」導入で成長に弾み
5. 収益構造
同社のメインターゲットは、「電話のDX」へのニーズが強い、首都圏にある従業員10~100人の中堅企業が中心である。しかし、2022年9月に販売代理店制度「パートナープログラム」を開始し、主要都市圏のみならず地方まで、中堅企業のみならず大企業までターゲットを広げた結果、パートナーは現在570社に達し、パートナー経由の売上構成比は8割程度にまで拡大している。そうしたなか、「INNOVERA PBX 2.0」へのアップデートにより利用ユーザー数の上限が増加したこともあり、特に大手パートナーによる大企業向け大型案件が増えている。一方、従業員10人以下のSOHOなど小規模企業へのアプローチは、2025年7月にスタートした「TELENEAR」で本格的に進める予定である。このように「パートナープログラム」や「TELENEAR」の導入により、拡大するクラウドPBX市場を網羅的に成長に取り込む体制が整ってきている。
主力である音声ソリューション事業の収益は、クラウドPBX「INNOVERA」、IP回線「IP-Line」、及び端末の販売でおおむね構成されている。「INNOVERA」の収益は初期設定収益及びオプションを含むシステムの月額固定の利用料金からなり、アカウント数(利用端末数)の増加とオプション利用率の上昇が成長のドライバーとなる。「IP-Line」は、初期設定収益と月額固定の利用料金及び通話料に応じた課金からなり、チャネル数(同じ電話番号での同時利用可能者数)や通話時間の増加によって成長が加速する。端末販売は、電話端末や電子黒板の販売代金からなり、販売台数が収益の伸びを支える。このうち売上高の約8割を占める「INNOVERA」と「IP-Line」は、市場環境が良好なうえリカーリング収益であるため、同社の成長と安定収益を支える柱となっている。なかでも「INNOVERA」は、同社が独自に開発したシステムであるため高収益だ。一方、「IP-Line」と「Yealink」は、それぞれアルテリア・ネットワークスやYealinkなどへの下払いが発生する。したがって、同社では「INNOVERA」アカウント、「IP-Line」チャネル、リカーリング率の3つをKPIとして重視している。なお、パートナーシップを強化していることからパートナー向けインセンティブが一時的に大きくなる可能性もあるが、リカーリング率が高いことからその後は利益率が着実に改善していくと想定される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
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