テノックス Research Memo(8):5つの重要戦略は順調に進捗
2. 重要戦略の進捗
Phase3初年度の2025年3月期において、重要戦略は以下のように順調に進捗している。
「事業別戦略」において、国内建築事業では、新工法としてCP-X工法とテノキューブ工法を開発した。前述したように、両工法とも熱海市の建設残土による土石流災害や環境問題を背景に注目が集まっている。また、CP-X工法は主力のTN-X工法と補完性があり、テノキューブ工法はこれも主力のテノコラム工法と補完性があるため、すぐにでも同社の事業領域拡大~収益貢献することが期待されている。このため、両工法とも既に実売に向けた動きが出ているようである。
海外事業では、ベトナムにおいて、2025年3月期に施工企業を買収したのに続き、2026年3月期中にはベトナム南部(ホーチミン周辺)でシェア5%を占める、高収益のコンクリートパイルメーカーを買収する予定である。これにより、もともとあった販売拠点に施工機能と製造機能が加わり、製工販一体のバリューチェーンを構築することができ、ベトナムでの事業拡大に弾みをつける方針だ。なお、経済が急回復しているベトナムでは、自動車産業が拡大しているほか、イオン<8267>が運営する大型スーパー・総合スーパーを12店から100店程度へ増やす計画があるなど、ビジネスチャンスは非常に大きいと思われる。
「開発戦略」などにおいては、液状化に対する強靭なインフラ構築など、社会・環境問題を解決する技術開発を強化している。液状化は一般に、地下水位が高く緩い砂地盤が地震により揺らされることで発生する。2024年の能登半島地震で2,000ヶ所、2011年の東日本大震災で8,680ヶ所の液状化現象が確認されるなど、日本のどこにでも起こり得る現象で、南海トラフ地震への備えから注目が集まってきた。これに対し、従来のテノコラム(深層混合処理)工法だけでなく、複合技術研究所の数値解析(地震応答解析)技術により合理的にコストダウンを実現した設計を加えた、ハイブリッド型の対策も提案することができるようになった。このため、防災拠点など様々な重要構造物もターゲットとする予定である。なお、地震など動的荷重による数値解析によって液状化工事を設計する技術は、国内でも数社しか持っていないため、優位性の高い技術ということができる。
「環境・デジタル戦略」などにおいては、環境経営の実践という点で環境配慮型RD燃料と電動小型杭打機「DHJ-15E」が注目される。環境配慮型RD燃料は、廃油を原料とした次世代型再生可能ディーゼル(Neste MY Renewable Diesel(RD))燃料で、既に欧米を中心に広く実績がある。既存設備の改修が不要で、ライフサイクルアセスメントベースでCO2等排出量を石油由来の軽油と比べ最大90%削減できる点に優位性がある。2024年10月に、大阪府指定のカーボンニュートラル技術開発・実証事業で使用に至った。電動小型杭打機「DHJ-15E」は、国内基礎工事業界初の電動杭打機で、2024年8月に名古屋営業所機材センターで施工試験を実施し、2024年9月に東京ビッグサイト「地盤技術フォーラム2024」に出展、2025年5月には実際の施工現場で使用した。
「人財戦略」では、人手不足・高齢化・離職者増の対策と次世代への技術伝承という課題に対して、今後同社の経営を担う層や女性従業員向けなど様々な研修を強化しているうえ、新卒と中途も想定を上回る高水準の採用を続けることができた。このような重要戦略を遂行するうえで必要となる投資も、既存事業と株主還元は想定どおりに進捗した。一方、成長分野への投資は進捗が遅れているが、ベトナムのコンクリートパイルメーカーの買収など様々な投資対象を視野に入れているようで問題はなさそうだ。
3. 中期成長イメージ
同社は、これまでどおりの安定した受注を確保するだけでなく、中長期的にさらに受注を積み上げていくことが可能と考えられる。土木事業では、主力のガンテツパイル工法が鉄道や道路に使われることが非常に多く、また鉄道に関する事業は遅延することはあっても事業がいきなり減ることはない。2027年3月期には、多大な利益貢献をした北海道新幹線延伸事業と同規模の、リニア中央新幹線の案件がスタートする予定である。その後も北陸新幹線や四国新幹線など様々な大規模鉄道プロジェクトが予定されており、同社としても取り込むための準備を着々と進めているところである。建築事業では、いかに建設残土を減らすかが大きなテーマとなるなか、残土を大幅に低減できることで注目を集めている新開発のCP-X工法が、既製コンクリート杭を用いた高支持力杭工法の市場となるデータセンターや物流施設などへとターゲットを広げられることから、受注増加に貢献することが期待されている。テノキューブ工法の開発によって、テノコラム工法に加えて施工深度に応じた様々な地盤改良に対応することができる。このように、重要戦略で利益を押し上げる見込みの事業を多く展開しているため、中期経営計画の目標は、特に東日本大震災の復興需要の際の利益水準に匹敵する経常利益の15億円を、特需がなくとも達成可能と考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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